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車椅子から車への移乗は、要介助者の体をしっかりと支え、フレームに頭をぶつけたり転倒しないように気を付けて行ってください。できる限り体を密着させることで支えやすくなります。また、移乗させる前に車椅子の位置を調整し、ブレーキを掛けているか確認を怠らないようにします。要介助者が安心して介助を受けられるように、移乗の際は声かけを忘れずに行ってください。

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車椅子から車への移乗の手順

移乗介助の手順を把握することで、動作時の介護負担や転倒の危険性を減らすことが可能です。車椅子から車への移乗介助を正しく理解できるよう、これからデイサービスで送迎介助に携わる人や要介助者と一緒に外出を考えている人は、参考にしてみて下さい。

1.車椅子を車に近付ける

車椅子を移動させる
車椅子を移動させる

車椅子は立ち上がり後、できるだけ無駄な動きがなく90°回転で車の座席に座れるよう、介助者は要介助者の足の位置や介助の空間を確保し、車椅子の位置を車椅子を車に近づけます。

【力が入る方の足を車側にもってくる】
車側の足は回転する際の軸足になるため、力が入る方の足を車側にします。軸足の位置を意識することで自然な体の動きがしやすくなり、移乗時の回転がスムーズになります。

車椅子と車の距離は介助できるスペース分開ける

車椅子から車の距離は介助をしやすいようスペースに注意します。車と車椅子の距離が遠すぎると立ち上がらせた後に要介助者の移動が必要です。また、近すぎると介助スペースが確保できなくなってしまうため、介助者が介助しやすいよう前後に足を開き要介助者を回転できる程度の適切な距離を確保します。

2.車椅子のブレーキを掛ける

動かないように車椅子のブレーキをかける
動かないように車椅子のブレーキをかける

安全のために車椅子のブレーキを掛けます。ブレーキをかけ忘れて立ちあがると、車いすが動いてしまい、後方などにバランスを崩して転倒することも。大きな事故となる危険性があるので忘れないよう毎回意識して確認します。

「参照:出口弦舞 – 福祉介護機器 Techno プラス|2011」

3.フットレストを上げ、足を地面につける

事故防止のためフットレストをあげる
事故防止のためフットレストをあげる

足元の動作準備や事故防止のためフットレストを上げ、地面に足をつけます。移乗介助の際は介助者の足元は視界に入りにくく、介助者の足がフットレストに接触し皮膚剥離のけがをしてしまうことがあります。フットレストを上げ忘れ立ち上がると、フットレストを踏んでしまい車椅子ごと転倒してしまう事もあるため、フットレストから要介助者の足を下ろし、フットレストは完全に上げきるように気を付けます。

「参照:松本由佳, 榎本美鈴, 東真由美… | 東京医科大学病院看護 …, 2003 」

両足がしっかりと地面についているのを確認

立ち上がる前に両足がしっかりと地面についているかを確認します。足底がしっかりと地面についていない状態で立ち上がると足を挫いたり、転倒の危険があるため、両足裏が地面についていることを確認します。

車側の足を少し前に出しておくと回りやすい

立位の安定や無理がなく体の向きを変えやすいよう車側の足を少し前に出しておきます。車側の足を前に出しておくことで、支持基底面が広くなり安定し立ち上がれ、座席へ座られせる際にも回転しやすくなります。

4.要介助者の足の間に介助者の片足を入れる

要介護者を立ち上がらせやすくするために足の間に片足を入れる
要介護者を立ち上がらせやすくするために足の間に片足を入れる

片足を入れることで前後方向へ重心を移動しやすくなり要介助者を立ち上がらせやすくなります。

また、要介助者の体の位置が車に半身が向くように足を入れておくと、回転の時に力が入りやすくバランスもとりやすくなります。回転の幅が小さくなることで介助者の体を捻る動作が少なくなるため、腰痛予防にもなります。

5.要介助者に介助者の首に両手を回してもらう

引き上げ準備のために両腕を首に回してもらう
引き上げ準備のために両腕を首に回してもらう

引き上げるために、要介助者の両腕を介助者の首に回してもらいます。要介助者の両手を回し、3点支持(両腕と肩を密着させる)を行うことで、要介助者の前傾姿勢を確保でき重心移動もしやすくなります。

手を回しやすいように腰を落とす

要介助者が介助者の首に手を回しやすいように腰を落とします。要介助者の足の間に片足を入れておくと介助者は支持基底面を広げることができ、腰を落としやすくなります。

6.要介助者の腰部分を掴んで引き上げる

腰を掴み引き寄せて立ち上がらせる
腰を掴み引き寄せて立ち上がらせる

要介助者の介助時の負担を軽減するため、腰部分を掴み引き寄せるようにして立ち上がらせます。脇の下を持ってしまうと介助者の力が一点に集中してしまい腕だけで上方へ引き上げてしまいます。ズボンを掴んで引き上げる介助も衣類の食い込みによる要介助者への不快感や皮膚トラブルにもなるため腰部をしっかりと支え、バランスを崩さないように注意します。

その際、介助者は要介助者にできるだけ体を近付けます。要介助者に体を近付ける事で重心が分散せず、移動の方向性もずれないため、安定して立ち上がらせることができます。

7.90°回転して車の方向へ

車の方向に身体の向きを回転させる
車の方向に身体の向きを回転させる

立位後、姿勢を安定させた後は90°回転し車の方向に体の向きを変えます。方向転換時は双方に不安定になりやすいため、回転時も体を密着させることで転倒を予防します。

車側の足を軸足にして回転する

最小限の動きで方向転換し移乗するために、車側の足を軸足にして回転します。足の踏み替えや重心の移動介助がしやすいよう、介助の際には立ち上がらせてすぐではなく姿勢が安定してから介助します。

8.頭上に注意して座席に座らせる

頭を下げながら座席に座らせる
頭を下げながら座席に座らせる

介助者は要介助者の座席と頭部の位置を確認しながら車のフレームに頭をぶつけないように頭を下げて座らせます。車の座席へ座らせる際には要介助者の臀部を先に入れ、介助者は腰をおろしながら支えている片方の手で頭を守るように座席に座らせるよう介助します。

【腰を落として頭を下げやすくする】
車内に体を入れる際、介助者の腰を落として頭を下げやすくします。首の動きだけで頭を下げるのではなく、腰を落とすことで頭も下がるような動きをすることで体の重心も臀部から足へと移りやすくなります。

9.足を車内に入れて、体の向きを整える

足を片方ずつ入れ体の向きを整える
足を片方ずつ入れ体の向きを整える

座席に座った後は片足ずつ車内へ入れ体の向きを整えます。車内へ足を入れる際は下から持ち上げるようにすると足が上がりやすく、乗せやすくなります。足を乗せるのと同時に要介助者の体を前方に向け姿勢を安定させます。

【背中に手を当てて支える】
足を持ち上げる際、座位姿勢が崩れやすく座席横に倒れこむ事もあるため、要介助者の背中を支えながら足を持ち上げるようにします。

10.姿勢を安定させる

最後に上記のポイントを確認しつつ、姿勢を整える
最後に上記のポイントを確認しつつ、姿勢を整える

車内に移乗し体の向きを整えたら座席に深く座れているか、違和感を感じていないか、苦しい体勢でないかを確認し、姿勢を安定させます。座りが浅い場合には両手で下からすくうように持ち、臀部を内側にずらしながら姿勢を安定させます。

車椅子から車へ移乗させる際の注意点

移乗を安全に行うため、車椅子から車へ移乗させる際は次の点に注意します。

声かけを忘れない

移乗の介助時は声掛けを忘れないのが基本です。動作に入る前に今から何をするかを要介助者に声掛けをしながら行うことで、安心感を与えられ協力動作を得ることができます。

要介助者の状態を確認する

要介助者がどの程度の介助が必要なのかを把握することや、その日の要介助者の状態を確認することが大切です。要介助者によっては立ち上がり介助の際に体を支えられるだけで移乗できる場合もあるため、どの程度の介助が必要かを事前に把握しておくことが重要です。

椅車子から車への移乗方法を確認して安全に移乗させる

車椅子から車への移乗は軸足の位置などを意識することで、動作時の負担を軽減しながら安全に移乗できます。また、要介助者への声掛けや残存機能の活用が図れ、同じ介助方法でも介助の度合いは大きく変化するため、要介助者の状態を確認することも必要です。移乗介助は介助の頻度も高いため、車椅子のブレーキやフットレストの確認など手順のひとつひとつをしっかり確認し安全に移乗することがで大切です。

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