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介護の仕事をしていると、車いすで移動される高齢者よりも、杖歩行の人やふらつきがみられるような人の介護をする時の方が気を使う事がありますよね。
理由は「転倒」の危険です。車いすでの介助の場合には座っているのでまだ安心なのですが、歩いている高齢者はバランスを崩して倒れてしまうと、骨折に繋がる危険性があるので非常に気を使うのです。
だからといって歩行ができる高齢者を無理に車いすに座らせて移動する事は虐待に繋がってしまいますし、歩行の機会が減少する事で筋力が低下してしまい、本当に歩行できなくなってしまう可能性もあります。
施設等で取り入れているヒヤリ・ハットの事例には、歩行者のふらつきや杖を持たずに歩いている内容等も多く見られ、事故を起こす前の予防策を検討しています。
また、介護者の介助方法が「間違った対応方法であった」なんて事例等も少なくありません。
しっかりとした歩行の介助方法がわからないまま対応されては、高齢者側も不安になってしまうでしょう。
しっかりとした対応で介助出来る様、今回はヒヤリ・ハットで事故を予防する為の歩行介助についてお伝えしていきます。
杖を利用している場合
杖歩行している高齢者は、杖を持っていない手が不自由であったり、麻痺で動かす事が出来なかったりする人が多いので、必ず杖を持っていない側に立って見守りを行いましょう。

理由としては不自由側に倒れこんだり、膝折れしたりする場合が多いからです。
【自宅で介護#2】杖歩行の介助〜自力で歩行できない場合〜
またフラツキや歩行動作が不安定の方の場合には、片手で高齢者の手を握り、もう片方の手で高齢者の脇に手を差し込むように対応しましょう。
手を握っているだけでは、転倒しそうな場合に助ける事が出来ませんし、強く引っ張ってしまえば痛い思いをさせてしまったり、腕の筋を痛めてしまったりする事があるので注意して下さい。
脇を抱えるように対応をしておけば、とっさに対応できますし、痛みを感じる事もないでしょう。

さらに大事な事として杖のチェックも定期的に行ってください。杖のゴムがすり減っていると、杖に重心をかける際にうまく力が伝わらず、転倒の原因になる事もあります。
手引きによる介助
次にお伝えするのは「手引き歩行」と言われる介助です。手引き歩行を行うタイミングとしては、短い距離なら歩ける高齢者に対して行う事が多い介助となります。
例えば入浴をする際に脱衣室から浴室の椅子に移動する時や、食堂で車いすから椅子に乗り換える時に行う介助だと思って下さい。
介助方法としては、高齢者が介護者の腕をつかみ、介護者が高齢者の肘を支えるようにして行います。

上記のように介助を行うと、転倒しそうになった場合にも、肘からしっかり支えているので転倒を回避する事が出来ます。
肘であれば介護者が倒れないように力を入れても痛みを感じる事はないでしょう。
つい行いがちで転倒を防ぐ事が出来ない悪い例としては、高齢者の手のひらを介護者が下から握手のように掴む行為です。

上記の場合は高齢者が膝折れ等で倒れそうになった時に、力を入れて抱える事が出来ません。
先程お伝えした杖歩行の場合と同様、手を引っ張れば痛い思いをしてしまうので絶対に止めましょう。
人を支える時は、手のひらや足先だけで引っ張ったり、持ち上げたりする行為は痛みやけがに繋がる事が多いのです。
なるべく体の近くである脇・肘・膝・太もも等の体の近い部分を利用すると、痛みを感じさせることはありませんし、倒れる前に支える事が出ますので覚えておきましょう。
盲目の場合
最後は目が見えない高齢者の介助方法です。
歩く事が自立していても、目が見えない状態で歩く事は非常に危険な行為となります。
介護者が行う基本行動として、
- 必ず半歩前に立つ
- 常に声を掛けながら行動を行う
- 高齢者に介護者の手首や腕、脇等に手をそえてもらう
上記3つは必ず守るようにしましょう。

アカデミー介護技術#17 視覚障害移動介助(基本姿勢・曲がり方編)【介助方法】【日本福祉アカデミー】
さらにもう一つ大事な事として、介護者も高齢者も必ず同じ足を出すようにしましょう。右足なら右足から二人とも前へ。左足なら左足から二人とも前に出します。
もし2人の出す足が左右逆の場合には、体ゆれてしまったりぶつかってしまったりする危険性があるのです。
そのはずみで高齢者が転倒してしまう危険性がありますので十分注意して下さい。
まとめ
歩行事故を未然に防ぐ為に
今回は歩行介助についていくつかご紹介して参りましたがいかがでしたでしょうか?
歩行介助は介助方法を間違って対応すると、近くに介護職員がいるのに転倒させてしまう事があるので十分注意して対応しなければなりません。
「介護職員がいたのになんで転倒したんだ!」なんてクレームが入れば会社の評判が悪くなってしまうでしょう。
もちろん転倒した高齢者にもつらい思いをさせてしまうわけですから、しっかりとした対応を学ぶ事が大切です。
歩行介助に共通している事として、
- 常に声かけを行う事
- 高齢者のタイミングで歩き出しを行う事
- 体調を確認しておく事(体調不良時に無理に歩かずに車いすなどを使用する)
上記3つが共通して介護者側が行わなければならない対応となっています。
ヒヤリ・ハット事例などで歩行による事故を予防する為にも、是非参考にしてみてください。
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