医療現場や高齢者介護の現場では「バイタルサイン」という言葉を使います。これは「人が生きていくうえで最低限必要な生体情報」のことです。
バイタルサインには体温、脈拍、呼吸、血圧などがありますが、一般的な成人の正常値は次のとおりです。
- 体温は36.0~37.0℃
- 脈拍は1分間に60~80回程度
- 呼吸は1分間に12~18回程度
- 血圧は、上(収縮期)が120mmHg未満、下(拡張期)が80mmHg未満
バイタルサインは体調を崩すと変化が現れます。バイタルサインの異常を早期に発見することは、医療や福祉現場で働いている者の使命ともいえます。
目次
バイタルサインとは何か?
バイタルサインとはvital(生命) sign(兆候)のことです。人は、呼吸によって取り入れた酸素が血液によって全身をめぐることで生命活動を維持しています。
ある程度健康な人は、この活動によって体外からの異物に対し抵抗できる能力を備えています。健康状態が悪くなるということは、抵抗する能力が低下していることであり、その兆候がバイタルサインに現れるのです。
高齢者にありがちなバイタルサインの異常
2017年に厚生労働省から発表された、日本における主な死因別死亡数の割合で、ガン、心疾患に続いて3位に食い込んでいるのが「肺炎」です。特に高齢者の肺炎は、早期に発見しないと手遅れになります。

引用:死因分析|厚生労働省
しかし高齢者の場合、身体を守る免疫機能が低下していることもあり、肺炎になりかけていてもバイタルサインに表れないこともあります。例えば体温です。通常なら肺炎のように細菌やウイルスに感染している場合、体温は上昇しますが、高齢者の場合36℃台のままで上昇しないこともあるのです。
とはいえ、バイタルサインは体調の変化を察知するのに役立つことに変わりありません。高齢者によくみられるバイタルサインの異常とは、次のようなものです。
高齢者バイタルサインの異常
- 体温は37℃以上の高値、あるいは35℃台の低体温など
- 脈拍は1分間に100回以上の頻脈。またリズムが崩れ不整脈が出現するなど
- 呼吸は浅く速くなり、25回以上など
- 血圧は、上が150mmHgを超えたり、逆に80mmHgと低くなるなど
肺炎を発症した時のバイタルサインの変調
一般的に、肺炎を発症した際のバイタルサインは次のようになります。
1.体温
37℃~38℃台の高熱がでる
2.脈拍
リズムが乱れ、100回を超えることが頻回になる
3.呼吸
発熱などにより体内の酸素消費が増えるため、不足する酸素を補うために呼吸数が増える
4.血圧
高熱が出ると、上(収縮期)が高くなる傾向を示す場合がある
肺炎の疑いは呼吸に注目!
高齢者の肺炎を早期発見するためにバイタルサインを観察しようとしても、体温と同様に、兆候として表れにくいサインがあります。脈拍は、高齢者は不整脈になりやすいため、健康な状態との差が出にくいものです。血圧に至っては、日ごろと何も変わらない人もいるほどです。
その点、呼吸は比較的肺炎の症状が出やすいバイタルサインです。注目したいのは
- 呼吸数(速さ)
- 深さ
- リズム
- 音
になります。
呼吸の観察方法とは
呼吸をどのように観察すれば良いのか、それぞれの兆候は次のとおりです。
呼吸数(速さ)
一般的な呼吸数は20回未満ですが、25回(以上)ぐらいに速くなります。高齢者は症状が表れにくくても、身体の中では細菌やウイルスと闘っています。この闘いには酸素が多く必要です。ですから自然と酸素不足になるため、補おうとして自然と呼吸が速くなるのです。
ただし、呼吸は自分の意識次第で回数を変えることができるため、回数を数えていることを判られないように注意します。
呼吸の深さ
回数が速くなるため、一回の呼吸は浅くなります。走ったあとの呼吸を想像してみてください。浅く、できるだけ回数を多く呼吸して酸素を取り入れようとします。それと同じです。
呼吸のリズム
リズムが速くなったり、不規則に呼吸の間隔が長くなったり短くなったりします。通常の呼吸は、胸やお腹が一定のリズムで呼吸に合わせて膨らんだり縮んだりしますが、このリズムが崩れます。
呼吸の深さとリズムが異常であって、肩を上下させて呼吸をするとか口をすぼめて呼吸をする場合、呼吸困難に陥っている可能性もあります。
呼吸の音
特に「ぜんそく」の既往がある方が肺炎になりかけている場合、呼吸に合わせて「ヒューヒュー」「ゼーゼー」というような音がする場合があります。これは空気の通り道である口・鼻・咽頭・喉頭・気管・気管支・肺のいずれかで、空気の通りが悪くなった場合に生じる変化です。
そのままの状態にしてしまうと、やがて呼吸困難をきたす可能性が強くなります。
高齢者のバイタルサインの観察はポイントをしぼる
体温、脈拍、呼吸、血圧などのバイタルサインは、体調不良を早期に察知するためとても役に立ちます。ただし高齢者の場合、一般的な場合よりもバイタルサインに変調がないことが多々あります。そのため、ポイントをしぼってバイタルサインを観察することが重要です。
高齢者にも現れやすい肺炎のサインは「呼吸」です。呼吸の数・深さ・リズム・音などをよく観察し、異常がない時と比べてどうなのかを把握しましょう。
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