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利用者からの暴言を受けた時には、下手に反論せず、時間を置いたり担当を変更して対応します。一時的なものではなく、利用者の暴言が続く場合、いつにどのような暴言を言ったのかなどを記録にとり、上司に相談してください。高齢者は介護への不安や体調不良を、認知症などによって表現できず、苛立ちを暴言として他人へぶつけてしまう場合があります。なぜ利用者が暴言を吐くのかの理由が分かれば改善されることがあります。

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利用者からの暴言を受けたときの対応

暴言を言う利用者は興奮状態であることが多いため、ひとまず落ち着かせるようにしましょう。また痛みや体調不良が暴言を誘発している場合があります。利用者に異常がないかの確認を心がけることが大切です。

時間をおいてもう一度声をかける

時間をおいて利用者が落ち着いてから再度声かけを行いましょう。特別なきっかけがないままの暴言は、「時間の経過とともに気分が変わる」「怒鳴ったこと」を忘れてしまうことがあります。

暴言が続いているときの声かけはさらなる暴言を引き起こすきっかけになる恐れを秘めています。時間によって解決に向かうことがありますので利用者の状況を見極めましょう。

介護を行うヘルパーを変える

ヘルパー個人へ暴言が続くときは、担当ヘルパーを変えることで落ち着く場合があります。入所施設やデイサービスでは他の利用者も同じ空間で時間を過ごしています。暴言が続くことで不安や不快な気持ちが波及しないように早急な対処が求められます。

ヘルパー個人への暴言の原因の場合、性格的に合うか否かのこともあります。またヘルパーの態度に行き過ぎた行動がみられる、愚痴が多いなどヘルパー自身に問題がみられることがあります。暴言は利用者の行動が必ずしも引き金になるばかりではありません。周囲のことを考えると、暴言に対して早めの判断が大切であり、担当を変更して様子をみることも手段の1つと言えます。

応援を呼び人数を増やす

手がつけられない状況の場合、他の職員を呼び、複数人で対応にあたることは大切です。暴言がエスカレートすることにより、言葉だけにとどまらず、暴力につながる恐れがあります。

「大声で怒鳴る」「机をたたく」「物を投げる」など興奮状態の利用者を職員1人で落ち着かせるのは難しく、また危険なことが多いです。ヘルパーは専門職であり、介護の仕事に誇りをもって働いていますが利用者から毎日何度も暴言を吐かれれば、怒りたくもなります。

興奮状態の利用者を職員1人で落ち着かせるのは難しく、危険である
興奮状態の利用者を職員1人で落ち着かせるのは難しく、危険である

また、利用者が人間であるように介護者も同じ人間です。言われて嫌な気分になる暴言は、精神的なダメージが大きいです。1人で抱え込まず、複数人で対応しましょう。一方で、別の職員が利用者の味方になることで話を聞いてもらえたと安心し、気持ちが落ち着くことがあります。1人での対処が難しいと感じたらすぐに人を呼びましょう。

利用者が暴言を発してしまう理由

暴言を発する理由を知ることで、適切な対応や気持ちの切り替えがしやすくなります。暴言を発するからといってもともと暴力的な人ばかりではありません。大切なことは暴言につながる理由を理解することで、職員側はパニック状態にならず、精神的な余裕を持って対応することです。

加齢によってできないことが増える苛立ち

加齢や老化によって今までできていたことができなくなり、人の手を借りなければ生活できないことが増えると、できない自分に対する苛立ちが増大します。

暴言の背景には羞恥心や、自分でできない苛立ちがある
暴言の背景には羞恥心や、自分でできない苛立ちがある

特に着替えや入浴、排せつの介護は羞恥心も相まって、ひどく傷づく利用者がいます。介護を受けることは、自分で自分のことができないと突きつけられていると感じる人は多いです。できない自分に苛立ち、言葉で表現できない苛立ちを暴言として相手に伝えていることがあります。このようなときは否定や固定は苛立ちを増大させます。「いっしょにやりましょう」「お手伝いします」など、利用者の自尊心を傷つけない声かけが求められます。

認知症の一症状

認知症の問題行動の中で暴言を引き起こすことがあります。脳機能の衰えによって感情が抑制できない、自分の状態をうまく伝えられないなどが主な原因としてあげられます。

認知症の種類によって強く現れる、もしくは特有のものがあります。どのような場合であっても慌てず、落ち着いて対応することが大切です。

理解力、記憶力の低下による不安や混乱

自分がどこにいるのか、自分は何をされるのかわからず、不安や混乱をきたし、そのせいで攻撃になる場合があります。理解力や記憶力が低下することによって起こることがあるため、何度でも説明をして安心してもらえるように努めましょう。

説明の際、何度も同じことを説明しているということは言う必要はありません。職員1人1人が利用者に不快な思いをさせないように気をつけていくことが大切です。

体調不良や痛みの表現

認知症や疾病などによって体調不良や痛みをうまく表現できず、暴言という形で外に表れる場合があります。体調不良で食欲がなくてもうまく伝えられない、体調不良そのものをうまく理解できないことにより、不快な思いだけが利用者に残ってしまいます。

また暴言が始まった利用者に対して投げやりな態度は相手に不快を与えます。自分のことを他人に伝えることが困難な利用者も多いため、暴言の先にある思いを汲み取りましょう。

感情失禁

感情の制御ができず、些細なことで大きく感情が揺れ表出してしまうことを感情失禁と言います。
声をかけただけでも泣き出す、激怒するなど本人では制御できず、興奮状態に陥りやすいときがあります。悲しくて泣いているばかりではありません。

例えば、面会時に家族が来てくれたことはうれしいが感情が先行し、泣いてしまって言葉が続かない、来るなと怒ってしまうなどがあてはまります。途中で話を遮ると感情失禁が加速してしまう恐れがあるため、慌てず、見守ることが大切になります。

利用者の暴言を改善、予防する方法

暴言をつながる理由からもわかるように、暴言をゼロにすることは難しい現状はありますが、日々の対策によって暴言の回数を抑制することは可能です。

記録して暴言の要因は何か探る

利用者が暴言を言ったシチュエーションや暴言の内容を記録することにより、何が引き金となって暴言に至るのかが判明することがあります。暴言の要因を探り、要因を取り除くことで暴言を予防できます。

記録をすることが、暴言の要因を取り除く手助けとなる
記録をすることが、暴言の要因を取り除く手助けとなる

例えば、毎日夕方になると暴言が表れる利用者の要因を考えます。夕方になると職員が交代になり、昼間の職員が帰ることによって自分も帰りたい気持ちが生まれることがあります。また、夕暮れ症候群のように暗くなるにつれて寂しいという思いが募ることを言葉で言えない分、暴言という形で表す人もいます。

食事時間の前になると暴言が表れる場合は、お腹が空くことを暴言で表現しているかもしれません。暴言の時間や内容を記録することで要因を分析し、暴言につながる前に対応ができると利用者自身、安心した生活が送れるようになります。

日頃からコミュニケーションを取る

日々のコミュニケーションを大切にすることで利用者の性格や身体状況の理解を深め、暴言の原因がわかり対処がしやすくなる場合があります。利用者の元気な姿や日常を知っていることにより、体調不良や不調に気がつける確率が高くなります。

排便がない日が続くと食事が食べられなくなる、自宅に帰りたくなると物を投げるようになるなどその利用者だけのサインを見逃さないことが大切です。特に言葉で自分のことが伝えられない利用者は不快な思いや自分の中で表現できない思いに敏感と言えます。

いつもの問題行動だと考えもせず決めつけることはやめましょう。日頃の関わりからわかる利用者の思いを見つけてください。その他、介護の前後や介護中の声かけを欠かさずに行うことで利用者が安心して介護を受けられる環境が整えられるとよいでしょう。

他の人に相談する

相談や情報を共有することで仲間を増やし、利用者に合った対応を考える
相談や情報を共有することで仲間を増やし、利用者に合った対応を考える

自分1人で何とかしようと考えるのは、身体や精神ともに負担が大きいため、誰かに相談しましょう。また環境や人が暴言の要因となっている場合、1人で解決するのは現実的ではありません。入所施設では同僚や上司、在宅生活の場合は担当ケアマネなどに相談し、協力して対応を心がけましょう。

暴言の状況を記録しておくことで情報が共有できます。さらに情報を共有していることで、暴言以外の問題が起こったときに迅速な対応が可能になります。一緒に考えることができる仲間を増やして利用者に合った対応を見つけていきましょう。

利用者から暴言を受けたときにはまずは落ち着かせる

暴言に対して慌てるのではなく、その利用者に合った方法で落ち着かせる必要があります。介護の専門職として利用者から暴言を受けたからと言って暴言を返すことや叱ることは絶対に行ってはいけません。時間を置く、担当者を変えるなどその利用者に合った方法によって介護が受けられるように対応することが大切です。

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