介護者も利用者も相手を「嫌い」と思うには、何かしらの要因があります。その要因が何だったか振り返ることで現在の状況に対処する方法が見えてきます。
目次
利用者が介護者を「嫌い」と思う要因と対処法
人は他者に対していろいろな感情を持ちます。「好き」と言われて嫌な気持ちはしませんが、利用者から「嫌い」と言われると介護者だって落ち込むことがあります。ではなぜ「嫌い」と思われてしまうのかは、以下のことがあげられます。
利用者の嫉妬
加齢や病気によってできないことや人から介護を受けることが増えると、やりたいことが何でもできる介護者に対して嫉妬心が生まれ、介護者のことを「嫌い」と思う要因になります。特に途中から身体障害者となった人にとって、介護がないと生活できないことはわかっていても、自分で何でもやりたい、介護を受けたくないと感じることが多いです。
しかし介護者を嫌っているから介護をする必要がないわけではありません。この場合、自尊心を傷つけないような配慮を行い、さりげなく介助することが対処法と言えるでしょう。
軽蔑されたと感じる言動
利用者は介護者の言動をよく観察しており、声かけの仕方一つで「軽蔑された」と感じ、介護者を「嫌い」と思う要因になります。特にため口や赤ちゃん言葉は嫌がられます。
利用者は人生の大先輩です。私たち介護者は介護を通じていろいろなことを学ばせてもらっています。目上の人に対しての接し方は介護がいるか否かは関係ありません。目上の人を敬う声かけの仕方を学びましょう。
拒絶を感じたため
私たちは言葉でのコミュニケーション以外に非言語コミュニケーションを使いながら人間関係を築いています。そのため、態度によって言葉とは反対の意味でとらえられ、介護者を「嫌い」と思う要因になることがあります。
例えば、介助を頼まれたときに「はい」と返事します。言葉ではOKの返事を相手に伝えていますが、返事をする態度によって、「嫌々返事をしている」ととらえられる可能性があります。これは私たちが言葉以外にしぐさや目線など非言語の部分で相手の印象を感じるからです。
返事の仕方によっては軽蔑されたと相手が感じることもあります。言葉だけでなく、非言語であらわされる表情やしぐやなどに配慮することが対処法と言えるでしょう。
介護者への期待外れ
利用者が、介護者に期待していた反応や態度、援助などが得られなかったことで介護者を「嫌い」と思う要因になることがあります。介護者も人ですから、利用者の期待通りにすべて動けるわけではありません。また利用者がたくさんいるため、その人1人の希望ばかり聞いて動くこともできず、結果、私が頼んだことはやってもらえなかったと思われることもあるでしょう。
対処法としては、利用者からの言動に対して反応を示すことです。依頼を受けたことがすぐにできない場合は、なぜ対応が難しいのかを説明します。また待ってもらうのであれば何で待ってもらうのかなど遅れる、すぐに取りかかることができない理由を述べて対応しましょう。
介護者が利用者を「嫌い」と思う要因とは
利用者が「嫌い」と思うのと同様に、介護者であっても利用者に対して「嫌い」と思うことがあります。「嫌い」と思う要因は以下のことがあげられます。
利用者の暴力やセクハラ
利用者自身、認知症によって感情のコントロールが難しく、結果、暴力やセクハラ行為につながることが多々あります。また暴力やセクハラ行為をやってはいけないと否定すると、更なる混乱を招きます。
対処法としては、否定をせず、気分が落ち着ける、次の介助がわかるような声かけを行うことです。誰でもいきなり身体に触られたら驚きます。手を払い除けることだったあるでしょう。
例えば「今から車イスに乗って外へ出かけます」と言われれば、車イスへの移乗で身体を触っても不安にならずにすみます。介護を行う前に、今から何を行うのかの声かけをすることで次の介助が理解でき、安心につながります。
認知症の言動
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症が主な認知症と言われていますが、前頭側頭型認知症という種類があります。前頭葉が委縮することによって認知症状を引き起こすものになりますが、症状が物忘れではなく、性格変化や行動異常が起こるため、介護負担が大きいと言われています。
例えば、「欲しいと思ったものを持ってきてしまう」「歩きたいと思ったら出かけていく」など周囲の状況を理解できない行動が多く、目が離せないことも特徴です。そのため、本人はとても穏やかな性格だったが病状によって全く異なる性格や態度を取るようことで、「嫌い」の要因になることもあります。
生理的な苦手意識
介護者である前に人として接する中で苦手な人は誰にでもあることです。どんな人にでも優しくと言われても、例えば、「背の大きい人を怖いと感じる」「髭は不衛生に思う」「手を撫でてくる人は苦手」など生理的に苦手意識が強いこともあるでしょう。
生理的に苦手な人は仕方がないため、好きになる必要はありません。しかし生理的に苦手なことと日々の介護は関係ない点は気をつけて行動しましょう。
「嫌い」の要因に気づけば改善に繋がる
利用者、介護者ともに「嫌い」と感じる要因は以下のことがあげられます。
- 介護が必要になった自分を受け入れられず、介護者に嫉妬する
- 言葉だけでなく、非言語である態度や反応、しぐさ
- 認知症による問題行動
- 誰にでも苦手な人は存在する
「嫌い」に隠された意図を見つけることで、利用者と介護者の人間関係が改善の一歩を踏み出したと言えるでしょう。
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