体位変換とは
そもそも、体位変換とは何なのでしょうか?
体位変換とは、
「自力で体位を変えられない人の褥瘡(身体と床の接触部分が体重で圧迫され、
血流が滞り、ただれたり傷ができてしまう)などを防ぐため、定期的に体位を介護者の介助によって変えること」
をいいます。
同じ体勢で長時間いると、褥瘡を引き起こしてしまう原因となります。
体位変換は、褥瘡の予防だけでなく、気分転換や関節拘縮・変形の予防、排淡の促進なども目的とされています。
コツをつかめば楽にできる!
体位変換は、毎日何度も行う重要な援助方法です。
しかし、体位変換で腰を痛める介護者の方が少なくありません。
今回は、コツをつかむことで、無理なく効率よく行うことができる体位変換の方法についてご紹介します!
まず最初に、身体の向きを変えること伝え、意識してもらいましょう。
声をかけることで、対象者の不安を軽減し、身体が無駄に緊張することを防ぎます。
寝返り介助のポイントは、
①身体をできるだけコンパクトに丸める
②介助者と対象者ができるだけ近づく(ベッドに柵がある場合は、はずしましょう)
③体位変換後は体調確認を行う
身体をコンパクトに丸め、ベッドとの接する面積が小さくなることで、少しの力で寝返りができます。
また、双方の重心を近くすることで、力が分散せず介助しやすくなります。
【介助者側に向ける(対面方式)~膝が曲がる場合~】
①胸の前で手を組み、身体を向ける方向に顔を向ける
②両ひざを片脚ずつ、高く立てる
③腰に手を当て、肘で膝を押し、膝、腰、肩を同時に自分の方へ回転させる
両脚を一緒に立てると、「痛い」と訴えたときに、どこが痛いのか分かりづらくなってしまいます。
また、回転させる際に、腕の力だけで回転させるのではなく、身体全体を使って手前に引きま
しょう。
【介助者に背を向ける(背面方式)~膝が曲がる場合~】
①枕から頭が落ちないように、頭を上げ、枕を回転させる方へ移動させる
②腕を組み、膝を高く立てる。頭は回転する方へ向ける
③肩と膝に手を当て同時に倒す
④ベッドに膝を置く了解を得て、片膝をベッドにつく。
⑤左手を腰に当て、少し押す。押したことで下側の腰とベッドの間に空間が
できるので、骨盤に右手を入れる
⑥右手をお腹の方に持っていき、介助者側に腰を引く
⑦左手で上の肩を押し、下の肩とベッドの間に右手を入れ、肩を引く
⑧枕を肩の位置まで下げ、頭を安定させる
体位を変えるだけでは、つらい姿勢になってしまいます。
腰と肩を引く、そして枕を肩の位置までつけることで、楽な姿勢を取ることができます。
【介助者側に向く(対面方式)~膝が曲がらない場合~】
介助者側に身体を向ける場合
①胸の前で手を組み、身体を向く方向に顔を向ける
②身体の向く方向とは反対の脚を上に交差する
③介助者から遠い側の、膝から足の付け根にかけ、肘から先全体を当て、
脚、腰、肩を同時に傾ける
【介助者に背を向ける(背面方式)~膝が曲がらない場合~】
①胸の前で手を組んでもらい、身体が向く方向の反対側に顔を向ける
②身体が向く方向とは反対の脚を上に交差する
②上にした脚の膝下から、反対側の太ももに手のひらを当てる
③太ももに置いた手のひらを視点にし、脚、腰、肩を同時に回転させる
【片麻痺がある場合】
①麻痺のない側(健側)に立つ
②健側の脚(麻痺がある患側)を、患側の足首から下に入れ交差させる
③顔を寝返る方へ向け、健側の手で患側の腕を掴む(自分をぎゅっ!っと抱きしめる様に)
④肩と腰に手を当て回転させる
体位変換器用クッションを上手に利用しよう
体位変換器用クッションの種類
体位変換用クッションとは、体位変換後に、体位を安定させるためのクッションです。
種類としては、「自由成形型」と「形状固定型」があります。
「自由成形型」:
綿やポリステロールのビーズが入った枕状のものが主で、当てる身体部位に合わせて形状を整えて使用する。また、使用する身体部位によってドーナツ型、ブーメラン型などの形状や、大きさにバリエーションがあり、また表面素材もコットンや羊毛などさまざまである。
「形状固定型」:
三角や四角の錐形をしたウレタンの固まりのものや、エアで膨らました浮き袋状のものがある。本体の形状は変化しないため体位は崩れにくい。
(引用:体位変換用クッション (変換後の体位を安定させるための保持) )
選び方
体位変換器用クッションは、様々な種類があり、どれが良いのか迷ってしまうと思います。
そこで、選び方のポイントをご紹介します。
①使用目的を明確にする
まず、使用する目的が、
・体位変換のため
・負担を軽減するため
・体位変換後の体位の安定のため
どの目的なのか明確にしましょう!
②使用者の身体状況を把握する
次に、身体状況からどのような体位が望ましいのか把握しましょう。
そして、その体位に適した補助用具を選びましょう。
体位変換が目的の場合、使用者の身体能力を十分に把握することで的確にクッションを使用する
ことができます。また、介助者の補助道具に対する理解力も重要になってきます。
③自由形成型は、厳密な体位を維持させたい場合は向かない
自由形成型は、身体部位に合わせて形状が変わります。
そのため、厳密な体位を維持させたい場合は、形状固定型を使用しましょう。
まとめ
体位変換を無理に行うと、介助者の身体だけでなく、介助される側にも負担をかけてしまいます。
お互いが気持ちよく、安全に行うためにも、ぜひポイントを押さえ実践してみてください。
また、被介助者に残っている能力(残存能力)を使うことも重要になってきます(自立支援)。
例えば、腕を動かせる方は、「腕を組んでください」と声掛けをし、介助者が全て
やってしまうのではなく、自ら腕を組んでもらうよう働きかけをすると良いです。
よく被介助者を観察することで、その人に適した援助を行うことができるため、
普段から観察することを意識しましょう。