あなたは日本の総人口をご存知ですか?平成28年10月1日現在、1億2693万人となっています。加えて、65歳以上の高齢者人口は3459万人です。介護が必要か否かは別として3.7人に1人が65歳以上であることを意味しています。高齢化率が27.3%の現在、老老介護は仕方のないことです。
世間のイメージとして、老老介護イコールかわいそう、大変と感じるかもしれませんが、居宅のケアマネとして関わっている中で、悲観的な夫婦ばかりではありません。二人で足りない部分を補いながら自分たちらしく、暮らしている夫婦もたくさんいます。それでは、老老介護の現状をお伝えしていきます。
目次
ケアマネとしての仕事は、アセスメント重視
介護保険を利用して在宅サービスを利用する場合、居宅介護支援事業所と契約し、事業所に所属するケアマネにサービス調整の依頼をすることが一般的です。依頼を受けた事業所のケアマネは、状況把握のために利用者に対してアセスメントを行います。
最近はアセスメントが重視され、生活歴から現在の状況まで幅広く情報収集するようになりました。その人が住み慣れた地域の中で、どのような生活が送れるのか、介護保険サービス以外に地域の資源が利用できないかなど取り巻く環境にも目を向けて支援を考える方向へシフトされています。
つまり、困まりごとの解決をヘルパー、デイサービス、ショートスティなどフォーマルサービスだけでなく、地域に認知症サポーターがいないか、自治会内で手伝いに入れないかなどインフォーマルサービスも生活を支える担い手として重要視されるようになりました。
ケアマネが老老介護に直面するのはどれくらい?
厚生労働省による「平成28年国民生活基礎調査」の要介護者等のいる世帯の状況(熊本県を除く)によると、要介護者と同居している58.7%のうち、配偶者が介護している割合は、25.2%となっています。続いて、子どもが21.8%、子どもの配偶者が9.7%と続いています。以上の統計から考えても、老老介護に直面しているといえるでしょう。
老老介護の世間とのギャップ
世間からすると、「かわいそうだ」「早くやめさせて面倒をみてくれるところを探したほうが良い」と思われがちですが、実際はどうでしょうか?
指標の「ものさし」は人によって異なりますよね。私は、居宅のケアマネとして働いているため、他の人からみたら、不幸と思うことでも当事者たちは幸せに暮らしている場面に出会います。
幸せは人が決めるものでなく、自分で決めるもの
1年前から担当しているKさん夫婦は、ご主人は両下肢のしびれが強く、車イス生活を送っています。奥様は、身体は元気ですが、小脳梗塞の後遺症により認知症状があります。車イス生活のため、すぐに動けない夫と身体は動くが何を行えば良いのか指示をもらわないとわからない妻。
別居している息子はたまに来てケアマネである私に連絡してきます。両親の「○○が困った」「△△に疲れた」と訴えます。最後は「2人で1人のことができるぐらいではどうしようもない」と捨てセリフを言って都会へ帰って行きます。
できることに目を向けて
確かに洗濯はできるが片付けることができないのでたたみ部屋1室に着替えが広がっています。整理されていないので奥様は夫の靴下を履いていることもあります。食事が作れず、惣菜を買って食べています。掃除機が使えず、ほうきで掃除をするだけなので部屋は汚いです。
しかし、できることもあります。ご主人は何をやらなければいけないか妻に指示をすることができます。奥様は指示がないと何もできないですが、手があくと頼まれなくても動かない夫の足をさすっています。夫婦で声をかけあいながら生活しており、いつも笑顔が絶えません。二人は今の生活に満足しており、他の人からできていないと言われても困ってはいません。
老老介護であっても、二人が求めるサポートを
洗濯物はヘルパーが訪問すれば、タンスに片付けることはできます。惣菜の食事が困るようであれば、ヘルパーが訪問して食事を作ったり、配食サービスを利用することもできます。掃除機も必要であれば、ヘルパーが行うことだってできます。
でも、そのような生活を夫婦は求めていないので私はサービスを導入していません。息子さんのためにヘルパーがあるわけではないので夫婦の意見を尊重しています。
老老介護はサービス充実が幸せじゃない
私自身、ケアマネとして関わる中で、夫婦二人とも介護保険を利用しながらKさん夫婦のように助け合って生活している家庭も多いです。夫婦の支援を行う場合、気をつけていることは夫婦であっても何にもかもセットで決めないということです。
その手伝いは夫にとって必要なことなのか、妻にとって必要なことなのかを明確にしないと、何となく手伝っているという方向に流れてしまいます。夫の困りごと、妻の困りごと。わけて考えることにより、どちらがどのようなことに困ってサービスを必要としているかがわかるからです。
ケアマネになってすぐの頃は、できていない部分を何で補うのかばかりに目を向けすぎて失敗したことも多々あります。サービスが充実することが幸せではなく、老老介護であっても夫婦ともに自分たちらしく生活することが幸せなことを学びました。夫婦は最期まで夫婦であることを実感しています。