施設で働いていると1年通して介護実習生を受け入れる機会は多いですよね。特に学校が夏休みや冬休みなど長期休暇時期は、介護実習生の受け入れも多く、複数人の指導に悩むこともあるでしょう。施設では、介護実習生が何のために勉強に来ているのかを周知しないと、職員の代わりのように使われてしまうこともあります。
ここでは、
- 介護実習生は実習で何を学びたいのか
- 現場に合わせた実習内容とは
- 介護実習生に教えながら自分たちも教えられている
- 人を育てるということ
以上について、実習担当者として介護実習生を育てていきましょう。
実習の意味を理解しよう
実習生と一言でいっても資格によって実習内容が異なります。介護初任者研修のように介護の基礎、施設とはどんなところかを学ぶ実習生。社会福祉士のように相談援助を学ぶ実習生。介護福祉士の実習では、現場での介護実践の他、24時間の生活の把握や利用者を支えるための介護計画作成まで求められます。
介護福祉士の現場実習時間は、合計で450時間です。450時間を3~4回程度、1回2~4週間に実習期間を区切って、施設などの介護現場で勉強することになっています。ただコミュニケーションを図るだけでなく、利用者の24時間の生活を把握するために早番や遅番、夜勤実習などもあります。介護計画では、対象利用者を決め、アセスメントから実際に生活上の困りごとを見つけ、介護計画の立案、介護の実践につなげていきます。
介護職員によっては日々の介護に追われ、介護計画はケアマネが立案するものなんて思っていては介護実習生に教えることができません。施設の介護計画立案には、介護担当者としてアセスメントから関わり、利用者にとって自分たち介護職員が担っている役割を理解する必要があります。
現場に合わせた実習内容
介護実習生は、学校で勉強してきた介護技術から介護の考え方までを現場で実践します。オムツ交換やトイレ介助、食事介助に入浴介助。学校では学生同士で介助を行いますが、現場では思うようにいかないことのほうが多いでしょう。介護実践では、学校に帰ってから実習生自身、振り返りができるように教えることが指導担当として大切です。指導担当として覚えておきたいことが3つあります。
教え方は具体的に
例えば、自分たちは片マヒの想定で要介護者役の学生は動かさないようにしていても実際にマヒがあるわけではありません。無意識のうちに協力動作をしてしまいます。現場での実践は協力動作を行いたくても行えないマヒを持った人の介護を行います。
そんなときこそ、指導担当としてどちら側からどこを支えてどのような介助を行うと利用者に負担がないのかを具体的に説明しましょう。『左半身マヒの人に対しての歩行介助は、マヒのある左側から身体を支え、利用者の歩幅に合わせて介助を行う』など、「見て覚える」ではなく、「何を行うとどうなるのか」を具体的に伝えると実習生も迷わずに自信が持てます。
経験と慣れることは違う
初めてのことは誰でも緊張します。介護の仕事も同じです。いくら勉強していても人相手の仕事のため、何でもうまくいくわけではありません。失敗もする中で人は成長し、経験を重ねていけます。経験として自分の糧にできれば向上していけますが、慣れで介護を行うと自分の糧にはなりません。指導担当として、介護の仕事に慣れることに重点を置くのではなく、経験として実習生が成長できるように指導しましょう。
説明のできない介護は行わない
現在の介護保険では、寝たきりの人であってもその人にとって自立支援を目指す介護を行っています。介護にはそれぞれ意味があります。施設では、職員によってバラバラな介護が行われないように利用者1人ひとりのアセスメントを行い、どのような介護が必要かを統一しています。
利用者はモノではないため、毎日同じ状況が続くわけではなく、臨機応変さも求められますが、基本の介護はあります。なぜその介護を行っているのかを説明できないと指導はできません。利用者にとって大切なことは何か、そのために私たち介護職員が行っていることを説明できるようにしましょう。
介護実習生に教えながら自分たちも教えられている
介護実習生の受け入れに特別なことは何もありません。普段通りの介護で大丈夫です。当たり前の介護を説明していくことが大切です。言葉で説明をすることによって指導者自身も振り返ることができ、自分の介護を見直すきっかけになることだってあります。利用者それぞれ顔が異なるように身体状況も異なります。利用者の状態に合わせて介護をしていくと、排泄介助ひとつでも同じ介護の人はいないことを伝えましょう。
言葉で説明することは、何のために行っているかの理由が明確でないと、簡単なようで難しくできません。介護実習生を教えることで、私たちは自分たちが行っている介護の意味を考え、教えられていることを忘れないでくださいね。
人を育てるということ
介護実習生自身、良いことも悪いことも含めて思いを持って実習に来ます。実習生個人も性格によって誰もが積極的に質問をして何でも進んでできる人ばかりではありません。指導担当として積極的になれないことを指摘するのではなく、自分から進んで取り組めるような方法を一緒に考えていくことが大切です。できないことや苦手としていることに目を向けるのではなく、できることや得意としていることを指導担当としてみつけて伸ばしてあげましょう。