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海外からの介護技能実習生の受け入れが開始される今年。皆さんは、どの辺りまで情報を持たれていますか?また、その情報は正確な情報ですか?加えて、「まだ、何も知らない!」「エッ、いつから?何をしたら良いの?」と、詳しい情報を得られていない方々、安心して下さい。私が実際に目にしてきたことや学んだことを比較的解りやすい言葉でお伝えします。

 

今回からスタートする新企画【360 °定点観測〜フィリピン単独取材〜】は、連載企画です。フィリピン取材編は、5 回の連載を考えています。解りやすい言葉でお伝えしますが、内容は非常に深掘りします。介護事業所を運営し、実際に介護の現場で高齢者の方々と触れ合う介護職員としての『ノッポさん』から見た【介護技能実習制度】。

 

フィリピンの介護施設・ケアギバー(介護資格)の学校・日本語学校・現地行政機関・送り出し機関だけに留まらず、15 名程がひしめき合って乗り込むバスで、片道 3 時間強の悪路を進み、現地の方々の生活に密着した単独取材。期待して下さい。

 

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しびれを切らし猪突猛進

今回、この新企画のために私はフィリピンへ飛んだ。2017年11月1日から開始すると言われている【介護技能実習制度】。この制度に関して、国内に於いて様々な情報が飛び交い、「それって、本当に正しい情報なの?」「いつから来るの?」「今は、どこまで進んでいるの?」といった基本的なことも不明瞭な状態が続いていた。

 

亥(いのしし)年の私にはストレス以外の何物でもない日々が続き、しびれを切らし猪突猛進。今回の企画を立ち上げてから、僅か一ヶ月という短いスパンで向かったフィリピン。タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、香港、マカオ、台湾、韓国等々のアジア圏を行き来していたが、意外にもフィリピンは初めて。【介護技能実習制度】の報道遍歴を整理すると同時に、フィリピンの文化や歴史、民俗性等をリサーチして出国。

郷土料理
▲現地の方々に振舞っていただいた絶品郷土料理。

意外にも愛知県の方が暑かった

マニラの空港に到着したのは深夜 1 時過ぎ。空港からタクシーに乗り込み 1 時間程で到着したマカティーという商業都市。道中、平日の深夜にもかかわらず、所々渋滞。それもその筈、交通のマナーが存在するのか?と言わんばかりの蛇行運転。右が早いと思えば、車一台分も開いていないスペースでもお構いなしに右車線へハンドルを切る。

 

この様な運転を殆どの車がするフィリピンという国に、思わず何度も唾を飲み込んだ。しかし、思ったよりも暑さを体感せず、意外にも愛知県よりも蒸し暑さを感じないファーストインパクトだった。

フィリピンで過ごす日本人
▲ 偶然出逢ったフィリピンの施設で過ごされている日本人。交通事故により、フィリピ ンで2年間、世話になっている。

 

【介護技能実習制度】が担う役割とは

【介護技能実習制度】の話の前に、皆さんは「技能実習制度」という制度がいつから始まったかご存知ですか?また、この制度の本来の目的が何なのかを理解していますか?

 

【技能実習制度】とは、1993 年 4 月から実施され、開発途上国の「人づくり」に協力する目的で、最長 3 年まで外国人を受け入れている制度であることと、この制度で受け入れた外国人実習生に対しては、「労働基準法」が適用されることを、まず理解しておこう。

 

次に知っておきたいことは、最長 3 年の内訳。 1 年目は、自国へ技術を持ち帰るための研修計画のもとに技術修得をする研修生として雇用。更に、所定の条件をクリアした者に対し、より実践的な技術習熟を目的として、同一機関(会社)の雇用関係の下で 2 年・ 3 年目を実習生として日本で生活を行なう。

 

そして、一番理解して頂きたい内容としての部分は、「労働基準法」が適用されるということ。つまり、最低賃金以上の雇用条件が求められ、社会保険や住民税等の義務が存在する外国人を雇用するということなのだ。更に付け加えるとするならば、研修・実習生は単純な「労働力」ではなく、先進国である日本として、開発途上国に対して、惜しみなく技術修得や習熟を行なえる環境を提供しているということを忘れずに理解して頂きたい。

日本語学校の卒業生達
▲ 誇らしげな表情を浮かべる日本語学校の卒業生たち。彼女の視線の先には「日本」 での技能実習しか見えていない。

 

前述の内容を少し理解頂けましたか?今の段階で理解が難しくても大丈夫です。

この内容に関しては、何度も折り込んでいきますので、ご安心ください。

 

「技能実習制度」が開始され 20 年以上が過ぎた今年、初めてサービス業界として組み込まれたのが「介護」。従来、第一次産業としての農業や漁業、第二次産業としての製造を中心とした業態で選定され、これらの産業の 100 弱の事業形態に対して、「技能実習制度」が施行され、多くの外国人技能実習生が、習得した多くの技術を母国へ持ち帰り、それぞれの国々で活かされてきた。その中に於いて、第三次産業のサービス業として、「介護」が一番手として選出された。

 

皆さん、良く考えてみて下さい。数あるサービス業態の中で、これ程まで「人に触れる」という行動を有するサービス業態がありますか?例を挙げるとするな らば、レストランに行くお客様に対して、自宅に出向き、ベッドから車までの移乗をしたり、食事の介助を行なったりしませんよね?

 

しかし「介護」という世界は、この行動を日々繰り返し提供するサービス業態です。「介護」がサービス業として一番初めに選定され、何を求められているのか?多くの背景があることは憶測でもわかる事実ですが、我々の受け入れ方ひとつで、今後のサービス業界に於ける「技能実習制度」が左右されるかも知れないという責任を持って取り組む必要があると、私は考えている。

 

今回の企画を立ち上げた際、介護業界にある福祉の精神は、「技能実習制度」の根幹の理念に一番共鳴できる業界であると自負している前提で進めた。故に、【介護技能実習制度】で訪日する開発途上国の外国人に対して、どのように接していくべきか?この点を皆さんに提言し、一緒になって成功に向けた道を切り開いていきたいと考えている。

ジプニー
▲ 市民の足として利用されている「ジプニー」 後ろの方にお金を支払うシステム

 

連載企画としてスタートした【360°定点観測〜フィリピン単独取材〜】の第一回目は、【介護技能実習制度】を私なりの読み取り方で皆さんに少しだけお伝えさせて頂きました。また、今回の企画を立ち上げた根幹を少しでも理解頂ければというスタンスで締めくくらせて頂きました。

 

第二回目以降は、もう少しだけ制度に関しての文章が続き、いよいよフィ リピンで目の当たりした内容を書き進めていきたいと思っています。恐らく日本中探しても、【介護技能実習制度】のためだけに介護職として、この時期にフィリピンを訪問した者はいないと自負しています。

 

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