移乗に大切なことは利用者の安全確保です。利用者の状況によって二人介助のほうが安全に行えるのであれば必要なことですが、職員の安心のために二人介助を行うのは観点が異なります。また職員によって対応が異なる場合、事故が起こる恐れもあります。介助方法は、利用者の状態を把握して安全にできる方法を施設内で統一することが大切です。
ここでは、
- 二人介助はどのくらい行われているか?
- 二人介助はどのような時に行うのか?
- 二人介助を行うメリット
- 二人介助を行うデメリット
- 安全な介助方法を考える
以上について、経験を交えながら説明していきます。移乗に悩む職員さん、ぜひ参考にしてください。
二人介助の考え方や頻度
二人介助の頻度は施設によって異なりますが、利用者の要介護が重度になると、二人介助にしている施設が多いように感じます。私が以前働いていた特養では、利用者のアセスメントを行い、一人介助では利用者に負担がかかると判断された場合は、必ず二人介助で対応していました。その他は、体調不良の場合など特別な状況があるときは、随時二人介助になったりすることもありました。基本は一人介助を行いますが、利用者の状況に合わせて場合によって二人介助を行う施設が多いと考えます。
職員が小柄だから二人介助を行うなど人によって異なる対応は良いとはいえません。施設内でボディメカニクスの研修を行ったり、スライディングボードなど福祉用具を活用して介護技術のスキルアップを図りましょう。
実際に二人介助を行う場合の条件
利用者の状況に合わせて介助方法を考えますが、見た目や職員の主観では行いません。施設では利用者一人ひとりに対してどのような介護を必要としているのかを知るためにアセスメントを行います。
アセスメントの中で、①拘縮が強い、②座位保持が難しい、③身体が大きい、④骨が弱く骨折を繰り返しているなどの理由によって二人介助のほうが利用者にとって安全が保持できると判断されると、統一した介護方法として二人介助が行われます。
基本的には利用者の状況に合わせて行われますが、体調不良以外に入浴のときなどは普段の介助方法とは異なります。私が働いていた特養では、利用者の身体状況によって入浴方法が、介助浴、車イス浴、寝浴の三種類を行っていました。介助浴や車イス浴は歩行ができたり、手すりにつかまって立てる人が利用するため、二人介助で行うことは少ないですが、寝浴は、寝台の上に横になったまま入浴できる設備になります。寝台への介助の際は、必ず二人以上の職員によって介助を行っていました。
以上のように日々の移乗で二人介助が必要な人、体調不良で一時的に二人介助になる人、入浴など特別な介護の場合に二人介助が必要な人がいます。どこの施設でも職員の力量で判断するのではなく、利用者の状況で介護方法が統一されています。
二人介助を行うメリット
二人介助が必要な人の特徴に配慮ができることが一番のメリットです。
利用者の身体状況に合わせた場合、
- 拘縮が強い人は拘縮しているところを無理やり伸ばせば骨折の危険がある
- 自分で座位保持が難しい人は、身体を起こして支えている間に倒れてしまう危険がある
- 身体が大きい人は、職員が支えるにも限界がある。場合によっては、リフトを使用することも検討できる
- 骨が弱く骨折を繰り返している人は、脇へ手を入れたり、抱えることで骨折の危険がある
- 利用者の身体を介護者と接する点で支えるのではなく、面で支えることができ、身体への負担が減らせます。
以上のことから、二人介助を行ったほうが安全に移乗できるのです。
二人介助を行うデメリット
二人介助は利用者の身体的特徴によってメリットばかりでなく、アセスメント方法を間違えるとデメリットとなることもあるため、注意が必要です。
例えば、利用者の身体状況にとって介助が統一されていないと、介護を受ける利用者側も不安になります。また介護職員側も二人介助を行う際のルールが施設で統一されていないと曖昧になり、本当に二人介助が必要な人を一人介助した結果、大きな事故につながる恐れもあります。その他、二人介助を行うことにより利用者の残存機能を活かせず、機能低下してしまう場合があります。
現在は福祉用具を活用している施設も増えてきました。立ち上がりが困難な人、方向転換の際にふらつきやすい人、倒れ込むように座ってしまうなどの場合、スライディングボードを利用することにより安全に介助できることもあるでしょう。
安全な介助方法を考える
介助を行う場面は一日の中で数回あります。一人介助、二人介助の前に安全な介助方法が求められます。利用者の身体状況を把握し、その人に合った方法を見つけることが一番です。また介護者側も利用者と同様に安全に介助が行える環境が必要です。介護を提供する側が不安になる介護を受けたい利用者はいませんよね。介護を提供する者として介助の勉強することも大切です。
二人介助はメリットもデメリットもあります。両方を知った上で利用者の身体状況に合わせた介助方法をみつけていきたいですね。