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老人ホーム等の入居型施設で利用者から暴力行為を受けた場合、何よりも重要なのは物理的な距離を取ることです。被害にあわないよう距離を取ると同時に、声を上げるなどして他のスタッフを呼び、複数人で対応します。利用者が暴力をふるう原因は様々なものが考えられますが、最も多いのは認知症によるものです。引き金となる要因を利用者から遠ざけることで暴力を予防できる場合があります。

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老人ホーム等で利用者に暴力を振るわれたときの対処法

利用者から意味不明な怒りや興奮から暴力を受けたとき、利用者が暴力を振るおうとしたとき、言葉などで無理に制止しようとせずにまず身の危険を感じたらすぐに自分を守るようにしてください。

暴力をふるうとき利用者は既に興奮状態にあるためスタッフの関わり方によっては更に状況が悪化したりする事があります。では実際に暴力を振るわれた時にどのように対処すればいいのか4つの対処方法について説明します。

1.距離を取り安全を確保する

利用者が暴れた際の対処方法
利用者が暴れた際の対処方法

利用者が暴れだしたり、暴力振ってこようとしたときには、物理的な距離を取り、自身の身を守ります。

他の利用者にも暴力が及びそうな場合は、被害の及ぶ可能性がある利用者もその場から退避させます。暴力を振るってくる利用者を取り押さえようと手を掴んだり、組み付いたりするとお互いに大けがをする恐れがあります。

高齢者は身体能力も低下しているので転倒しやすく、また興奮状態にあると力の加減も出来ていないため、思いもよらない反撃を行なう場合があります。お互いにけが無く対処するには利用者の手の届かない範囲や後方に回るなどして直接視界に入らない距離を取り自身と利用者の安全を確保できるよう冷静な判断に繋げることが大切です。

2.他のスタッフを呼び複数人で対処する

距離を取り安全を確保すると同時に、他のスタッフに助けを求めます。当該スタッフの言葉は聞かなくても、他のスタッフの言葉になら耳を傾ける場合があります。また、スタッフの性別が変わると落ち着いたり、他のスタッフに当該スタッフへの不満を言うことで気持ちが落ち着く利用者もいます。状況が悪化した場合、取り押さえるしか手段がなくなった場合にも複数人のスタッフの力が必要になります。一人で対処しようとせず、他のスタッフを呼ぶことで状況に併せた対処がしやすくなります。

3.興奮状態の利用者を落ち着かせる

興奮は周りの利用者やスタッフの対応方法で出現すること多く落ち着くまで待つか時間をおいて再度関わるようにします。

このとき、大声で怒鳴ったり、高圧的な態度で命令したりするのは逆効果のため、スタッフは冷静に落ち着いたトーンで根気よく声を掛け続けてください。

態度が柔らかくなるスタッフがいるのなら、そのスタッフを中心に対処する事で安心感や信頼関係増すことや少人数で関わる事で利用者への刺激も少ない事もあります。

4.施設の規定に沿ってアフターケアを行う

利用者が落ち着き、通常の業務の戻れる状態になったら、施設によって利用者による暴力が起こったときの対応や記録方法、報告先などが決められているはずなので、規定やマニュアルに従ってアフターケアを行います。暴力に直面した当該スタッフは「自分の対応が問題だったのでは」と自分を責めてしまう事もあるので一人で抱え込まないよう身近な同僚や上司などが精神的なダメージにも気を配るなども大切です。

利用者の暴力の主原因と言われる認知症

認知症の利用者が暴力をふるう要因の説明
認知症の利用者が暴力をふるう要因の説明

暴力的になる利用者は認知症患者のことが多いと言われています。以前は穏やかで優しい人でも、認知症の症状や進行具合によって暴力をふるうことがあります。

これは認知症により、判断能力が低下し社会のルールを守る事が出来なくなることで注意を受けたり認知機能の低下から不安や混乱を招いたり相手が話している言葉や言葉を用いて意思を的確に伝えることが出来ないなど、葛藤が要因になっている事があります。

脳機能の低下による正常な判断能力の低下

認知症の症状により交通違反を繰り返したり、金銭を払わずお店の物を持って来てしまうなどの社会的判断能力の低下があります。脳機能の低下によって正常な判断能力が低下した高齢者は、人を叩いてはいけない、暴力をふるってはいけないという判断ができなくなっている可能性があります。

「引用:社会的判断能力の低下|認知症を知り、認知症と生きるe-65.net」

認知機能の低下による不安や混乱

短期記憶の抜け落ちや物忘れによって、今自分のいる場所や状況、介護スタッフのことがわからず、不安になったり混乱して身を守ろうと暴力的になることがあります。施設に入居したことが理解できず帰宅しようとし、スタッフに止められるとそのスタッフに攻撃的になったり、介護を受けている最中にそのことを忘れてしまい知らない人に体を触られていると思い暴力的になったりするため無理に理解させようとしたりせずに対処することが大切です。

「引用:認知症による暴言・暴力へ対応するには?|LIFULL介護」

脳機能の低下による感情制御機能の低下

感情制御機能が低下することで、怒りっぽくなることがあります。できない、分からないことに苛立ち怒りが抑えられない人や、感情を制御する脳の部分が委縮して怒りっぽくなる人などがいます。認知症になる前は穏やかな性格の人でも、認知症の種類や進行の程度によって怒りやすくなるため、まずは本人の言っている事を傾聴したり会話の反復により何を伝えたいのかのを理解することが大切です。

「引用:【はじめての方へ】脳血管性認知症とは?|LIFULL介護」

言語機能の低下による伝達能力障害

言語中核が障害されると言語能力が低下し、嫌なことやしてほしくないこと、体調不良などの自分の気持ちや状態をうまく伝えられなくなるため、感情的なふるまいをしてしまう認知症の高齢者がいます。また、言語的な理解力も低下している場合、他人が言っていることが分からず、不安になったり怒りを感じることがあるので声の大きさなどの表現や目線の位置や表情、情報量の操作などを行い気持ちを伝え易くすることが必要です。

「引用:認知症で見られる言葉の症状|course_20101118.pdf」

利用者の暴力を予防する方法

老人ホームにはたくさんの利用者やスタッフと共に生活する場所でもあり認知症の利用者による混乱や不安からの暴言や暴力といった言動がその人自体を「問題のある人」と捉えてしまう危険性があります。

暴言や暴力を予防する事で他利用者やスタッフとの関係性を維持し安心した生活が送れるようケアの統一や病状に対する適切な治療は必要となりますので予防についても一人で考えるのではなく、施設内のスタッフや担当ケアマネジャー、担当医など複数人で話し合いましょう。

主治医やケアマネに相談する

認知症の原因となる疾病はアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の他、前頭側頭型認知症のように疾病によって認知症状に特徴があります。暴力的になっている利用者であれば、投薬で症状が軽減される場合がありますので主治医に認知症などの症状を伝え対応したり、利用者が出来ない事や生活上で困っている事に対しケアマネは利用者のケアプランを作成し、適切なケアを利用できるように調整できるよう状態変化の報告をする等して対策を検討することが大切です。

また、生活歴や家族との関わり方などを聞くことで、利用者の落ち着ける環境が分かる場合があるので利用者自身に興味を持ち知ることも大切なこととなります。

ケアの内容や質を施設内で一定にする

ケアの内容や質を統一することで、認知症の利用者のの混乱や不安を和らげます。また「Aさんはやってくれたのに、Bさんはやってくれない」などの不満を減らすことにもつながります。ケアプランの共有と理解、解釈の統一を行い、提供するケアの内容と質を統一することが大切です。

普段のコミュニケーションから利用者について知る

日々介護を行うとき、利用者とコミュニケーションを取ることを意識します。利用者の嫌なことややってもらうと嬉しいことなどを知って、他スタッフと共有しておくと、利用者が落ち着いて介護を受けることができます。また、好きなことや趣味などが分かれば、利用者の精神安定をはかる時に役立つ場合があります。

老人ホームでの利用者の暴力には一人で対処しない

スタッフ同士が協力する図
スタッフ同士が協力する図

利用者からの暴力は本人や周囲の利用者、スタッフに様々な不利益を生じます。利用者の暴力にあった時には、1人では対処せずまずは距離を取り他のスタッフに助けを求めてください。

興奮や暴力などの周辺症状は

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 失語や失行、失認
  • 遂行機能障害

などの中核症状による日常生活や社会生活への適応ができなくなり引き起こされる言動や行動です。

「引用:最近の認知症事情と認知症ケア(公開講座より)|小池妙子 – 2016」

認知症の周辺症状は薬物治療だけではなく環境や介護者の対応が重要なポイントとなります。物理的に押さえつけるのではなくできる限り声かけや環境を変化させて利用者を落ち着かせるため利用者の置かれている環境や病状の他、気持ちを理解して対処してみてください。

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