一人で衣服を着替えることができない要介護者の着替えを手伝う着脱介助。介護の仕事を行うなら避けてはとおれない介助の一つです。麻痺や拘縮がある方の着脱介助は、コツを覚えて実践することがとても重要になります。
なぜなら、介助者が楽に着脱介助ができるということは、介助される利用者の負担も減るからです。
この記事では、
- 衣服の着替えがなぜ重要なのか
- 利用者さんの負担を少なくするための着脱介助のコツとは何か
- 半身麻痺がある利用者さんの着脱介助のポイントとは
- 女性でも、体格がいい利用者さんの着脱介助をスムーズに行うことができるのか
このようなことをお伝えします。
目次
服って、なんで着替えなければならないの?
特に入所系の老人ホームの場合、どこかに外出しないのであれば施設の中にずっと居るのですから「なぜ着替えをしなければならないのか」と疑問に感じるかもしれません。
入浴した後に新しい服へ着替えることは当たり前、と思うのですが、朝・晩のパジャマ、普段着の着替えについては、このように疑問が投げかけられることもあるのです。
介護保険が始まった平成12年(2000年)からしばらくの間は、都道府県などが行う「指導監査」において、パジャマと普段着の着替えを行っていなければ指導対象となったものです。しかし今では、このような指導を受けるということはあまり聞きません。指導を受ける云々ではなく、朝起きたらパジャマから普段着に着替え、寝る前には普段着からパジャマに着替えるということは一般的な生活スタイルだといえます。
さらに私たちの身体は不思議なもので、パジャマのままでいるよりも普段着に着替えた方が、活動的に動こうという意識へとつながる、と言われています。
着脱介助のコツをつかむと、利用者さんへの負担が少なくなる
濡れたまま服を着替えるのは大変ですよね。それは、服と肌が密着して抵抗が生じるからです。
同じように、誰かに服を着替えさせてもらう場合、上手に肩や腕を動かすことができなければ抵抗が生じてしまい、非常に着替えにくいものです。着脱介助のコツをつかんでいない状態というのはまさにこれと同じで、利用者さんへの負担は増大してしまいます。
半身麻痺がある利用者さんの着脱介助を上手に行うには
脳梗塞の後遺症などで、身体半分が麻痺してしまっている方の着脱介助は、基本的に「脱健着患」です。麻痺していない側から脱ぎ始め、着る時には麻痺している側から着せる、というものです。
脱衣介助

- 上衣を背中からまくり、健側の肩まで上げる。
- 健側の肘を曲げ、身体に近づけてから腕を抜く。
- 脱いだ服を手でたぐり寄せ、コンパクトにまとめる。
- 頭を抜く
- 麻痺側の肩関節や肘をあまり動かさないように、麻痺側の指先へと服を抜いていく。
着衣介助

- 腕を通す方の袖をたぐり寄せ、コンパクトにまとめる。
- 麻痺側の指先から肩へ向かって袖を通す。
- 襟元に向かって服をたぐり寄せ、コンパクトにまとめる。
- 頭を入れる。
- 健側へ通す袖をたぐり寄せ、コンパクトにまとめる。
- 健側の腕の肘を曲げてもらい、指先から袖を通す。
麻痺と一緒に拘縮(関節が固くなってしまい動かない状態)しているなら、より注意が必要です。無理に動かそうとすると、骨折の危険を伴います。廃用症候群が進行して重度の寝たきりになってしまった場合、麻痺側の反対側が拘縮してしまっていることも。この場合、麻痺側であったとしても大きく動く方の側から脱ぎ、動かない方から着せるようにしましょう。ただし、脱臼には十分注意して。
袖を通す前に頭を通しておいた方が良いか、その逆かは、一人ひとり違います。身体の大きさ、本人の習慣、関節の可動域などを考慮して、どちらが先の方がスムーズなのか試してみましょう。
服を脱いだり着たりする時、肩や頭をとおすことがあります。この場合、できるだけ袖などを手繰り寄せて服をコンパクトにまとめてから通すようにしましょう。
女性でもできる!体格がいい人の着脱介助のコツは
例えば、体格が良い人の上半身の更衣介助をスムーズに行うためには、端座位をとってもらうことができます。ベッド上で横になったまま介助しようとすると、寝具と身体の接地面が広いためスムーズにいきません。
端座位がとれないとしたら、頭を通したりする時に首を少し持ち上げて、ベッドとの接地面をできるだけ減らしましょう。
下衣を介助するのには、脚を通した後に立ち上がってもらってから、腰まで上げるのが一番スムーズです。立ち上がることが難しいなら、下衣を脚に通して腰まで上げる時に、自分でもお尻を浮かしてもらうようにします。上半身と同様、寝具との接地面を少なくすることが、摩擦抵抗を無くすポイントです。もしもお尻を浮かせないなら、左右交互に上げます。
体格が良いと、なかなか上手に頭を通すことができないかもしれません。この場合も、できるだけ服を手繰り寄せてコンパクトにしてから行うことができます。
着脱介助をスムーズに行うと業務改善につながる
着脱介助は、介護を行う上で避けては通れない道ですが、脱健着患などコツを覚えて行えばスムーズにできます。服はできるだけコンパクトにするために手繰り寄せ、腕でも頭でも短い時間で服を通すようにすると、利用者さんも楽です。
ベッドに寝たままよりも、端座位をとった方が着脱介助はスムーズに行えます。もしも寝たまま介助する時は、腕、肩、頭など寝具との接地面をできるだけ少なくして摩擦抵抗を少なくします。
半身麻痺や拘縮がある場合には、無理に動かして骨折しないように十分注意を払いましょう。
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