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老人ホームでは集団生活のため、一斉に何かをしようとしてしまいます。私が介護職員として働いていた老人ホームでも入居者100人に対して一斉に行うことばかりでした。食事の時間も同じです。皆さん一斉に食事を食べます。一斉に食事を食べるということは介助を行う職員もそれだけ多く必要になります。朝食や夕食の食事介助は介護職員の人数が足りません。暗黙の了解で朝食は夜勤職員、夕食は早番職員がそれぞれ残業して対応していましたが、残業を続けていても解決にはならいため、どうやったらゆっくり食事が食べられて、介助ができるのかを考えた出来事です。

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全員そろって「いただきます」で食事が始まる

食事会

平成12年に開所した従来型の老人ホーム。入居者80人とショートスティ定員が20人の合計100人の介護を日々行っています。開所した当初から全員そろって「いただきます」を日課にしてきました。大きな食堂があり、そこで皆さんが集まり食事を食べる。建物は3階建てのため、全員が顔を合わせる機会がないからと一斉に食事を食べはじめてから15年が経過していました。

開所当初は話も弾み、楽しく食事ができていました。月1~2回はお楽しみ給食としてバイキング形式で食事をしたり、出来立てをすぐに食べてもらおうと手巻き寿司なども行いました。しかし3年、5年、10年と月日とともに入居者もだんだん年を取っていきます。歩いていた人が車イスになり、自分で食べていた人が介助を受けるようになりと日に日に介助が必要な人が増えてきたのは事実です。

残業で対応、1人の介護職員で介助ができる人数

介助が必要な人が増えてくると介護職員の手も複数必要になります。食事に関していえば1対1でゆっくり座って食事介助なんてできません。介護職員が間に入って両側の入居者に食事介助を行います。ゆっくり食べてと声は掛けますが、介護職員は戦争です。次々に介助が必要な人の手伝いをしますが終わりません。

認知症の入居者もいるため、のんびりしていると他の人の食事を食べられてしまいます。食事介助は暗黙の了解で残業です。それでも介助の手は足りません。一斉に食事を食べることが限界でした。

食事時間の見直しでカフェテリア方式に!

カフェテリア

一斉に食事を食べることが難しくなった今、老人ホームの日課で食事提供をするのではなく、自宅での様子に近づこうと話し合いを重ねました。またもし自分たちが老人ホームに入ったら食事に対して何を望むのかなど考えました。いきついた答えは喫茶店のモーニングのように行きたい人から順番に食べてもらうカフェテリア方式でした。

早く食べたい人もいればゆっくり食べたい人もいるでしょう。例えば朝食で言うと、朝早く起きる人もいれば朝が起きられない人もいます。

今までは全員を同じ時間に起こしていましたが、食事時間帯に幅があれば無理に早く起こす必要もありません。自分が介助を受ける立場だったらゆっくり寝たいなあと思っている中で起こされたら腹が立ちますよね。自分たちは介助がやりきれない中から考えた苦肉の策でしたが、結果として入居者の生活に合わせた食事提供ができるようになりました。

ゆっくりゆったりできる食事時間へ

各フロアで食事を提供するようになり、介護職員にも余裕が生まれました。介助が必要な人は数人ずつ連れてきて食事介助を行い、自分で食べられる人も本人のペースで席につく。朝から急ぐ必要もなく、自分のペースで食事が食べられるので誰も我先にと言われる人もいなくなりました。朝からゆっくり時間が流れるため、入居者も落ち着いて生活ができます。介護職員が朝から忙しくしていると入居者も落ち着きません。言葉に表せなくても感じていたのでしょう。介護職員がゆっくり介助することにより、いつもがやがやしていた施設が全体的に落ち着いた雰囲気になりました。

自宅での生活へ近づけるために

入居者それぞれに人生があり、今までの生活習慣があります。老人ホームですべてを叶えることはできませんが、食事時間をきっかけにまだまだ生活を改善していこうと取り組んでいます。老人ホームで働いていると社会では驚くことも日常として考えてしまっていることがまだまだあります。集団で生活しているため、何もかも個別の対応をすることはできませんが、入居者にとって大事にしてきた日常は続けていきたいと考えています。

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