認知症による徘徊を見守る余裕がないときってありますよね。他の仕事もあるけど、徘徊している利用者さんをほっとけません。どう対処したらよいか、介護士も利用者さんもお互い不安な思いにならないようにしたいですよね。
また、徘徊に気づかずにいると、事故につながる恐れがあるので、とても危険です。徘徊の原因を探して、周りが注意することで事故を未然に防ぐことができます。その対処方法を体験をもとにお伝えします。
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表情に注意し、徘徊時は一緒に行動する

Kさん89歳はアルツハイマー型認知症でデイケアに週2回通っています。デイケアに通い始めたころに到着して1時間ほど経つと、表情も険しくなり「では、帰りますのでありがとうございました」と席を立ちます。デイケアで一日すごすことをお話ししても「大丈夫ですから」と言われ落ち着かない様子でした。
そこで、スタッフは一緒に歩いて散歩をするようにしました。歩きながら家での話や今までの生活の話をします。話をしながら歩いていると家に帰りたいという願望はなくなっており、疲労もうかがえたので一旦デイケアに戻るように勧めました。
すると、特に抵抗することもありませんでした。散歩をしているうちに表情も穏やかになり、自宅に帰りたいという目的を忘れてしまったようです。
徘徊には目的がある。その目的を忘れるから徘徊になる
認知症での徘徊は、夢中で歩き出しますが、途中で目的自体をを忘れることもあります。そんなときに道に迷ったりして行方不明になりかねません。特にデイケアなど、介護サービス中であれば対象者が事故、行方不明にならないように注意しないといけません。
一緒に行動することで、対象者の生活背景やその行動理由がわかります。情報が増えると徘徊を防ぐ対処も見つかることもあるのです。まずは表情を良く観察することが大切です。
利用者さんの情報を集めて、好きな事をしてもらう

その次の週も「帰ります」と同じようなことがありました。そこでスタッフはもう一度Kさんの夫やケアマネージャーに情報収集しました。
すると、Kさんは若いころから仕事熱心で、子育ても忙しくゆっくりすることがほとんどなかったようです。デイケアでゆっくりしていて手持ち無沙汰にしているときに、帰宅願望がでて徘徊につながって、慣れないデイケアで不安もあったのではないかと考えました。
徘徊していたのが、嘘のよう!好きな事をして、すっかり笑顔に
そこで、気の合いそうな他の利用者さんの席の隣に移動し、手持ち無沙汰にならないように、その人と一緒に手作業をお願いすることにしました。手作業の内容はタオルを畳んでいただいたり、チラシで箱を作って頂いたりしました。
時にはスタッフも間に入って一緒に手作業をしたり、会話も弾むようになりました。会話が弾むと笑い声も聞こえるようになり当初にあった険しい表情もなくなりました。
利用開始から3か月もするころには「私の席は◯◯さんの隣でいいかしら。タオル持ってきていいわよ」とKさんから言ってくださるようになりました。
観察して不安から安心へ、情報収集も大事

- 気持ちに寄り添い、一緒に行動する
- 表情を観察する
- 情報収集をする
- 徘徊の原因を見極める
- 徘徊につながらない安心を提供する
不安な気持ちに寄り添い話をし、一緒に行動することで原因が分かるかもしれません。ときには家族に話を聞くのも、思わぬヒントにつながることもあるのです。
利用者さんが、笑顔になれるような好きなことを見つけましょう。不安な気持ちが少しでも安心に変わり穏やかな表情になりますように。