自主免許返納した時の取り組みとして各都道府県によって異なりますが、交通機関の割引制度が適用されたり、商業施設の割引があったりとサービスが充実しています。免許返納の手続きも簡単に行うことが可能で、本人が申請が難しい場合には代理人を立てて委任することも可能です。返納の手続きに不安を抱く高齢者の悩みを解消するためには、特典内容や返納のメリットを知ることで、免許返納への取り組みもスムーズにできるのです。
目次
免許返納後の取り組みは各都道府県によって異なる
平成10年から開始された高齢者の運転免許証自主返納において、受けられる支援や特典は、住んでいる都道府県によって内容に違いがあります。
特に年齢の規定はありませんが、運転に自信がなくなったらいつでも返納することができます。
免許返納後に受けられるサービスの取り組み
各自治体は、運転免許証を自主返納した人に特典を用意しています。協賛する企業や団体が協力している自治体の場合、公共交通機関の乗車運賃の割引やスーパーで買い物をした際の配送料の割引といった特典があります。
交通機関の割引制度
自主免許返納制度が開始されてから、最も多いのは公共交通機関の乗車運賃の割引特典です。路線バスやタクシー、鉄道などが高齢者割引制度を導入しています。
自家用車がない場合、公共交通機関の利用が必要になりますので、自治体では力を入れています。
自治体 | サービス内容 |
二本松市(福島県) | 福島交通バス乗車無料 |
長崎市(長崎県) | 長崎バス昼間全線フリー定期券 |
大野市(福井県) | まちなか巡回バス、市営バス、乗り合いタクシー(無期限無料) |
※記載している内容は一部です。各自治体で様々な割引制度があります。
商業施設の割引サービス
生活のなかで協賛企業のサービス特典を受けられる地域があります。協賛企業の利用やサービスの割引特典に取り組んでいるので、利用する際には運転経歴証明書を提示して利用することができます。
自治体 | サービス内容 |
鎌倉市 | 灯油割引、おむつ割引、補聴器割引など |
大阪市 | 動物園入園料割引、写真店での撮影無料、電動車いす購入割引など |
北九州市 | スポーツ施設、文化施設などの利用6回無料 |
※記載している内容は一部です。各自治体で様々な割引制度があります。
豊富なサービスが充実している都市ならではのサービス
都市部の自治体は、公共交通機関の割引サービスだけではなく、民間企業と提携して割引サービスや配送サービスといった特典を用意しています。
企業名 | サービス内容 |
イオンリテール(300店舗) | 「イオンの即日便」の配送料が割引 |
ノジマ電気(愛知県) | 税別5,000円以上買い物すれば配送料無料 |
大阪府協賛店(大阪府) | 大阪府内協賛ステッカーのある店舗は、協賛特典の金額にて提供 |
※記載している内容は一部です。各自治体で様々な割引制度があります。
高齢者運転免許自主返納ロゴマークを確認する
高齢者運転免許自主返納ロゴマークを掲げている協賛店では、運転免許返納者本人が運転経歴証明書を提示すると、特典価格にてサービスを受けることができます。

※記載している内容は一部です。各自治体で様々な割引制度があります。
自主免許返納の手続き方法と手続きに必要なもの
運転免許証の自主返納ができる場所は、住んでいる地域の都道府県運転免許センター、もしくは管轄の警察署となります。
1.住んでいる自治体の運転免許センターや警察署で申請する
運転免許証の自主返納は、都道府県の運転免許センター、地域によっては運転免許試験場、管轄の警察署で申請することができます。高齢になって運転に自信がないという理由で、本人が自主返納を申請する場合、運転免許証の取り消しを行った日から5年以内であれば申請可能です。
2.運転経歴証明書の交付

自主返納を申請する人は、運転免許証の全部を有効期間内に返納することで、「運転経歴証明書」の交付を受けられます。
平成24年4月1日以降に交付された運転経歴証明書は、提示することで自主返納の特典を受けたり、運転免許証に変わる公的な身分証として使用できたりします。
運転経歴書が交付されない場合について
運転経歴書は、運転免許証を有効期間内に返納したことを証明するものです。
ですから、次の5つに当てはまる人は、期間内返納に該当しませんので運転経歴書は交付されません。

免許返納で必要なもの
免許返納に必要な書類は次の5つとなります。
・運転免許証
・手数料(1,100円程度)
・印鑑
・申請用の顔写真(警察署で申請をする場合)
・別途必要であれば住民票や戸籍謄本など
必要となるものについては、各都道府県や自治体によって異なる場合があります。
免許返納を代理人へ委任をする場合
免許返納を本人から委任を受けて代理でおこなう事ができます。その場合は、代理人が本人から委任を受けたことが分かる書類(委任状)を持参して、申請することになります。
なお、代理人が本人からの委任を受けて運転経歴証明書の申請をおこなう際には、次の6つが必要です。
- 代理人本人の確認書類
- 誓約書
- 委任状兼確認書
- 代理人の印鑑
- 委任状
- 誓約書
家族の免許返納を後押しするポイント
本人の運転状況を心配して、家族が自主返納を本人に勧める場合があります。
しかし、認知症による判断能力が低下したり、日常生活において買物や通院に欠かせなかったりする場合、本人が運転をやめることを拒否することが考えられます。
免許返納後の運転の代替手段をわかりやすく説明する
本人が「運転できる」と思っているにもかかわらず、家族が運転をやめることを勧めた場合、本人は一方的に免許証を取り上げられると思い、返納を拒否してしまいます。
本人が、車は買物や通院など日常生活の移動手段として欠かせないと思っている場合、自主返納をした人への特典をまとめ、代替手段として提示することが運転をやめるきっかけになります。
自治体によって、公共交通機関の乗車運賃割引や買物代行、灯油の配達など様々な取り組みがありますので、事前に情報収集しておきましょう。
第三者の客観的な意見をもとに説得をする
本人が、まだ自分が車を運転できると思っており、家族の勧めに応じない時には、第三者からの意見によって、自主返納を促す方法があります。
高齢者向けに実施されている講習を活用し、本人の運転技術が低下していることを客観的に示すことで、自覚を促し、運転をやめることを検討することも可能です。
講習の名称 | 講習の内容 |
高齢者講習 | 70歳から74歳の高齢者が更新時に受ける一般的な講習になります。75歳からは認知機能検査と高齢者講習を受講する必要があります。2時間程度で、講習手数料は5,100円(税込)です。 |
シニア運転者講習 | 内容は高齢者講習と同じですが、会場のある住所地以外の人でも受講することができます。2時間程度で、講習手数料は5,100円(税込)です。 |
チャレンジ講習 | 最も低価格で高齢者講習を受ける方法です。普通車で教習所内を実際に走って試験を受けます。簡易講習を合わせて受講すると、高齢者講習を受けたことになります。約30分で講習手数料は2,650円(税込)です。 |
簡易講習 | チャレンジ講習が70点以上の人のみ受講することができます。1時間程度で講習手数料は1,800円(税込)です。 |
運転免許取得者教育 | 運転技術の向上を目指す講習です。講習を受講すると、高齢者講習は免除されます。2時間程度で講習手数料は教習所ごとに異なります。 |
(参考:警視庁ホームページ)
75歳以上の人が、政令で定める18種類の違反をすると、臨時認知機能検査を受けることになります。検査結果で認知機能の低下が見られた場合は、臨時適性検査又は医師の診断書の結果によって,運転免許が取り消されます。
<政令で定められた18種類の違反項目>
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 通行区分違反
- 横断等禁止違反
- 進路変更禁止違反
- しゃ断踏切立入り等
- 交差点右左折方法違反
- 指定通行区分違反
- 環状交差点左折等方法違反
- 優先道路通行車妨害等
- 交差点優先車妨害
- 環状交差点通行車妨害等
- 横断歩道等における横断歩行者等妨害
- 横断歩道のない交差点における横断歩行者妨害
- 徐行場所違反
- 指定場所一時不停止等
- 合図不履行
- 安全運転義務違反
家族が講習結果や違反通知などの認知機能や運転技能の低下を客観的に示し、本人に自主返納を納得してもらう資料として活用することも重要です。
本人自身が客観的な資料を見て、安全運転に不安を感じた場合、自主返納を促すきっかけになります。
家族全員で訴える
家族全員が自主返納を本人に訴えるときは、全員が同じ方針で関わらないといけません。
家族の中に、本人はまだ大丈夫、という人が一人でもいれば、本人は自分が望む方へ話を進めてしまいます。
本人にとって運転免許証を返納することは、今までのように出かけられない、という不便さを感じることになりますので、家族が送迎をする、必要な交通費は家族が援助する、などの代替え方法を同時に提案することが大切です、
そのためには、あらかじめ家族でどんな協力ができるか、という事を具体的に話し合っておく必要があります。
本人に自主返納を勧めるからには、家族もできる限りの協力をおこなう姿勢が大切です。なぜなら永年の運転を労い、自主返納する本人に感謝することは、家族にしかできないことだからです。
自主的に免許返納をして安全でお得な生活を送る
運転免許証を返納しても、住んでいる自治体や地域にどのような制度やサービスがあるか、情報収集をおこないながら、特典を活用した生活を楽しむことはできます。
車を所持している以上は、保険料や燃料といった維持費も発生しています。自主返納すれば、車にかかる経費の必要がなくなり、自治体や協賛企業による自主返納者対象の特典を活用すれば、日常生活上の経済的な負担を軽減することにつながります。
最近では、公共交通機関の乗車運賃だけではなく、博物館の入場無料やホテル、ラウンジバーの利用割引などを自主返納者への特典にしているところがあります。
運転免許証を自主返納することは、全てを失ってしまうわけではありません。新しい運転経歴証明書を手にいれて、様々な特典を楽しむことができるようになるのです。