高齢者が楽しめるレクを考える時、体を動かしたり頭を動かすゲーム・そして指を動かすなどのジャンルに特化した新しい企画に挑戦します。
どの施設でもやったことがあるような企画ではなく、全く新しいレクでかつ、特別な準備も必要ない企画をすることで、介護従事者もすぐに実施できるでしょう。
レクを実施する際、利用者に対してどのような目的で行うかも、レク企画の際に重要なポイントとなります。
目次
おすすめしたい高齢者が楽しめるレク
レクリエーションを高齢者が楽しむには、簡単でわかりやすく楽しめることが必要です。簡単な内容である反面、マンネリ化しないような企画や進行を工夫することが大きなポイントとなります。
さまざまな利用者が楽しめるレクリエーションを企画するのは、実は大変で職員の業務の負担になっている場合があります。ここで紹介するレクリエーションは用意するものも簡単に準備ができるものなので、大きな手間がなくすぐに企画が可能なのでぜひ、試してはどうでしょうか?
体を動かすレクリエーション
体を動かすレクリエーションは全身を使うことによって、運動不足を解消できます。
高齢になると自然に外出の機会が減少してしまう事が多く身体機能が低下したり、引きこもりやうつ病になってしまったりすることがあります。
体を動かすレクリエーションは、大人数で行うものが多いので自然と利用者同士でコミュニケーションをとる機会につながります。
円になってできる集団レク
ボールを使い体だけではなく考えながら楽しめるレクです。集団で楽しめるレクで誰にボールを渡すかを、とっさに考える判断力と瞬発力がポイントとなるゲームで、判断に焦ってしまう姿が面白く、全員で笑いながらできるレクとしておすすめします。
人数や対象者 | 〇必要な人数・5人以上 〇対象者・軽度者 |
必要な道具 | 〇ゴムボール 6個(緑2個、黄1個、ピンク2個、青1個) 〇テニスボール 2個 〇棒 1本 〇椅子 人数分 |
内容 |
|
- 一人飛ばしルールの応用として、テニスボールを椅子の後ろを通して回すことで難易度があがります
- 棒が当たらないように注意しましょう
ハエたたきゲーム
ハエをたたこうとテーブル上に体や手を伸ばす自然な動きができ、上半身のリハビリにもなるレクです。座りながら楽しめるため、中重度の利用者も一緒に行えるレクとしてお勧めです。レク準備として、折り紙でのハエの制作や捕まえたハエの点数計算、スタッフの顔のついたハエにより、自然なコミュニケーションも生まれます。
人数や対象者 | 〇必要な人数・4人 〇チーム戦・2対2のチーム対抗 〇対象者・軽度~中重度の利用者も可能 |
必要な道具 | 〇テーブル 1台 〇椅子 4脚 〇折り紙で作ったハエ(普通のハエ 10点、スタッフ顔のハエ -10点、女王バエ 20点、ゴキブリ -10点) 〇障害物(缶やお菓子の袋など) |
内容 |
|
- 上手くたたくことでハエたたきにハエがつくようにします
- チーム分けによってはハンデとして立位や利き手でない手を使ってもらうことでゲーム性を上げることでゲームが盛り上がります
- ハエの種類により点数に変化を持たせ、点数変化による逆転要素をつくります
タオルを使ってボールを投げるレク
2人でタオルを使い、ボールを飛ばして段ボールの中に入れるレクです。力がない人や、中重度の人でも協力して行うことができるレクとしてお勧めです。タイミングが合わないとボールが飛ばないため、力のタイミングや2人の声掛けを図ることが必要なため、自然に利用者同士のコミュニケーションがうまれます。
人数や対象者 | 〇必要な人数・2人以上 〇チーム戦 〇対象者・軽度~中重度の利用者も可能 |
必要な道具 | 〇椅子 人数分 〇大判バスタオル 〇直径20cm程度のボール※ぬいぐるみでもOK 〇的となるボールが入るような箱 |
内容 |
|
- ぬいぐるみを代わりに使用すると難易度が下げることができます
- 場所や箱の大きさなどによって点数を変化させるとゲーム性が高くなります
頭を動かすレクリエーション
脳を鍛えるために行うレクリエーションは体の自由があまり効かない方でも楽しむことができます。
簡単な計算や言葉を使うクイズの他、パズルや脳トレなどのレクは思考力や判断力を高めることに効果的で、認知症予防を図れます。
英語を使ったレク
簡単な英語を使って英語と日本語を使い分けをするレクです。道具や場所を必要とせず、大人数で同時に行え、判断力と頭の切り替えがポイントとなるレクリエーションです。簡単な日常英語を変化させることで、継続的に企画できるレクなのでおすすめです。
人数や対象者 | 〇必要な人数・制限なし 〇対象者・軽度~中重度の利用者も可能 |
必要な道具 | 〇特になし |
内容 |
|
- 選択する言葉は2~3種類程度にして覚えやすくします
- 言葉を出すタイミングや速さを変えたり、違う言葉を出したりすることでわざと間違えるような問題を作ることでゲームが楽しくなります
想像力を使ったレク
ホワイトボードを使って行うお題に対し答えを出していくレクです。お題の枠内の質問を変えるだけで、いくらでもバリエーションが増えるので想像力を刺激し回答内容によっては笑いを誘えるおすすめのレクです。
人数や対象者 | 〇必要な人数・制限なし 〇個人戦・チーム戦も可能 〇対象者・軽度~中重度の利用者も可能 |
必要な道具 | 〇ホワイトボード 〇ホワイトボードマーカー |
内容 |
|
ピカゴロ・レクリエーション
ピカゴロレクリエーションという方法のレクです。両手を使って、合図で指を抜くという簡単な方法ですが、とても盛り上がり利用者の意識を集中できるレクとしておすすめです。
人数や対象者 | 〇必要な人数・2人以上 〇対戦式 〇対象者・軽度 |
必要な道具 | 〇特になし |
内容 |
|
- 合図の言葉を変え、フェイントをかけることでゲームが盛り上がります
指先を使うレクリエーション
指先を使ったレクリエーションは、脳を活性化し認知症の予防や指先の器用さを向上させ、自然と細かい作業ができます。
指先の巧緻性を高めることで、折り紙や塗り絵、手芸などの他、調理や書道、生け花など以前に楽しまれていた趣味を再開する事もできるでしょう。
指入れ替え体操
指を入れ替え体操はジャンケンの要領で行える指の体操で、細かい指先の動作をテンポよく行う楽しいレクリエーションです。空いた時間に一人で行えるため、各レクリエーションの合間に活用できます。人数や対象者 | 〇必要な人数・制限なし 〇個人 〇対象者・軽度~中度の利用者も可能 |
必要な道具 | 〇特になし |
内容 |
|
- 簡単、普通、難しい、と3段階にレベルを分けてチャレンジしてもらうことで参加しやすくなります
ガムテープとピンポン玉を使ったレク
ガムテープを巻いたピンポン玉からガムテープを剥がすレクです。早くガムテープを剥がすため、指先や手首を上手に使うため、手先の巧緻性や上肢の機能を自然に使うレクリエーションです。人数や対象者 | 〇必要な人数・制限なし 〇個人・対戦 〇対象者・軽度 |
必要な道具 | 〇ピンポン玉 5~10個程度 〇ガムテープ |
内容 |
|
- 相手のレベルにあわせてガムテープの巻き方をかえる事でゲーム性が変化します
- 最後の一球にガムテープを多く巻く事でなかなかガムテープがはがれなくなるので盛り上がります
輪ゴムを使ったレク
輪ゴムと大きさがバラバラで縦における細長いものを利用したレクです。対象物を倒さないよう輪ゴムをかけて行うレクになり、指先の器用さだけではなく集中力も試されるレクです。
人数や対象者 | 〇必要な人数・制限なし 〇個人・対戦 〇対象者・軽度~中重度の利用者も可能 |
必要な道具 | 〇輪ゴム 10個程度 〇輪ゴムが通るくらいの日用品 |
内容 |
|
- あえてバランスの悪い日用品や輪ゴムの大きさを多様にすることでゲーム性が高くなります
レクリエーションを実施する目的
高齢者にレクリエーションを実施する目的には、脳機能や身体機能を活性化やコミュニケーションの促進、高齢者のADLやQOLを高めるほか、時間を有効に過ごしてもらうことも目的にしています。
レクリエーションの内容によって違いはありますが、レクリエーションは楽しく適度な運動を取り入れる最適な手段で、体の健康を維持するうえでも大きな効果があります。
体の機能を活性化させるため
レクリエーションで無理をせず、体を動かすことで身体的な機能を促進させることができます。
高齢者は1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度筋力が低下してしまい、身体機能が低下することでさらに運動量や減ってしまうような悪循環になりやすいため、レクリエーションにより身体的の機能も向上することで、健康を維持する効果が期待されます。

コミュニケーションをとってもらうため
高齢になると体の機能や体力が低下し、外出を億劫に感じてしまう事が多くなるため、他者とのコミュニケーションをとる機会がなくなり、引きこもりや、うつになってしまうことがあります。
閉じこもらないような社会生活や他者交流を取り戻すには、レクリエーションで人とのつながりの楽しさを感じ、コミュニケーション量が多くなるような生活を送り、脳の活性化を図ることが大切です。
QOL・ADLを向上させるため
QOL・ADLを向上させて、暮らしを充実させるという目的もあります。
適度に体を動かすことで食欲がでたり、入眠がスムーズになり生活リズムが整うことで、さまざま人たちと交流が図れるようになり、質な人間関係をつくれることで孤独感の解消や他者との関わりを楽しめます。
QOLとは
QOLとは、「人生の質」「生活の質」を指します。
レクリエーション活動は、身体機能の活動・維持のほか、楽しさによる満足感や充実感を味わえ、心も体も健康で充実した日々を送ることを目的とするQOLの向上に多いに役立ちます。QOLはADLと相互的な関係であり、ADLが低下してしまうと結果的にQOLが低下してしまう場合があります。
参考「QOL (クオリティ オブ ライフ)を向上させよう!その意味と評価基準」
ADLとは
ADLとは、日常生活動作を指し、通常の生活動作を指します。
ADLは高齢者や障害者の方の身体能力や日常生活レベルの指標として用いられており、基本的日常生活動作と手段的日常生活動作があります。基本的日常生活動作とは、起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容などの動作をいいます。
手段的日常生活動作は、基本的日常生活動作の次の段階を指し、掃除・料理・洗濯・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などの他、服薬管理、金銭管理、趣味などを指します。日常生活動作が低下すると活動性も低下し、社会参加の機会も少なくなってしまうため、身体機能、精神機能の回復を促すだけではなく、生活している地域で、生きがいや役割を見出せるような居場所や参加の機会をつくることなどが必要です。
参考「自立生活の指標:日常生活動作(ADL)とは | 健康長寿ネット」
レクリエーションを選ぶコツ
レクリエーションを企画する際、十分なシュミレーションや進行、安全面などに加え、対象となる利用者の特徴など、押さえておきたいコツがあります。
麻痺などの身体状態や認知症の状態によっては頭の体操や身体を動かしながら頭を使うなど対象者に合わせたレクリエーションを選択する事が大切です。また、高齢者の中には、レクリエーションを子供の遊びのように思われ、取り組みを嫌う方もいますので無理には勧めず、編み物や手芸などの手を動かすものや、茶道や華道など個々の状態に併せグループ分けをする事も良いでしょう。
レクに参加する対象者の人数や、個々の状況によって変わってくるので、レクを企画する際には必ずコツを押さえてから選びましょう。
全員の利用者を対象とするときのコツ
全利用者を対象とする場合には、全員に適したレクの企画を行う必要があります。
利用者には、認知症や脳梗塞などにより麻痺などの後遺症を持っている人もいますので、全員を対象にするレクリエーションでは見るだけで楽しめたり、動作を簡単にしたりする事が重要です。
視力や聴力が低下している人や認知症があり、集団行動が出来ずその場を離れてしまわないよう、職員が横についたり、ホワイトボードを活用したり音楽などを流したりし、個々の状態にも配慮する事が大切です。
見るだけで楽しめるものを選ぶ
身体状況や認知症症状によっては動作的な制限やルールが複雑になってしまうと参加に消極的になってしまう事があります。体を動かすレクリエーション以外にも昔の写真や映像をみたり、参加は出来なくても全員の利用者が視覚で楽しめる内容を選ぶと、集団で楽しめることができます。
体を動かすレクで全員が参加しやすいものを選ぶ
全員で参加できるレクリエーションは場が賑やかになりやすく、普段、接点がない人ともコミュニケーションが取れ達成感も大きくなります。音楽やリズムに併せながら体操をしたり、じゃんけんなども全員で楽しむことができます。
レク開始時の利用者の配置を考慮する
介護度や疾患など、利用者の個々の状況に応じて配置を変える工夫が必要になります。
利用者の介護度や認知症など状態によっては参加が難しい場合や、途中で席を離れてしまい進行がとまってしまう事があります。配置を考慮するだけで、進行が止まらず、ちょっとしたタイミングで参加を促すことができます。
状況に合わせて対象者をグループ分けする時のコツ
利用者の状態に併せ、レクの実施企画内容をグループ分けをする事で進行がスムーズになる場合があります。グループ分けをするポイントは利用者の状況や既往歴、趣味趣向などジャンルに分けして企画することがおすすめです。
利用者の状況に合わせたレクを複数企画する
利用者の状況に合わせて、参加ができるレクを複数企画し準備をしておくことが必要です。
利用者によっては参加の途中で自室に戻られてしまう人や参加を拒否する人もいるなど、ゲームが盛りあげることが大変な場合があります。また、思っていたよりも早くゲームが終了してしまう場合があるため、レクを複数用意しておくことで順応に対応できます。
趣味・趣向をあらかじめ探っておく
一人ひとりの趣味・趣向の違いに対応できるよう参加を促せる要素を含んだレクの企画をしましょう。
レクリエーションに参加してもらい、生活の中に楽しみを作ることは必要ですが、無理に参加を促すのではなく、意思を尊重することが重要です。参加者が興味が持てるよう趣味や趣向をあらかじめ情報収集し、時に違うレクの方法を用いることで、レクの参加が楽しい時間となれるよう提供する工夫が必要です。
個々で違ったレクを提供する場合のコツ
小規模型の施設でレクをする場合、グループ分けすることが難しい場合があるため、個々で作業ができるものや、少人数で楽しめるゲームを企画をしましょう。
パズルや計算問題などの個別で行うレクやオセロや将棋、マージャンなどの少人数で楽しめるゲームのほか、利用者によっては農家で畑作業が得意だったり、飲食店を営み調理が得意な利用者もいるため生活歴などを活用したレクリエーションも良いでしょう。
一人で参加しやすい企画を提案できるよう準備しておく
コミュニケーションをとることを苦手とする人も多いので、一人で楽しめるレクの企画も準備しておくことで、レク企画を有意義に楽しんでもらえます。
レクを選択できる自由を提供する
個々で行えるレクを幅広く準備することで、利用者が自由にレクを選択できるよう工夫しましょう。
プログラムを自分で選択できるよう、利用者が取りやすい位置に用具を準備することで一人でも活動を行え、活動に興味を持つ機会にもつながり自立支援を促す事ができます。
高齢者の興味を沸かせるレクを提供することがミソ
レクの企画がマンネリ化にならないよう、利用者が興味を持って企画に参加できているかどうかが重要です。
レクを上手に行うには事前の準備のほか、身体状況や認知症などへのフォローや見極めた提供が必要です。個々の状況や興味をそそる題材を提供する工夫をするだけではなく、種類の違うレクリエーションを組み合わせたり、時間配分などにも配慮することで多くの利用者が集中して楽しむ事ができます。
利用者の生活歴やどの施設でも実施したことがあまりないレクに新しく挑戦することで、より楽しんでもらえるレクが実施できますので、利用者の生活歴や地域などの社会資源を上手に活用して楽しいレクリエーションを行っていきましょう。