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いざ介護計画書の書き方を聞かれると頭を抱える人も多いですよね。国の社会保障制度である介護保険を利用するためには利用計画が必要になります。

介護計画書ではいつ、どこで、誰が、何を必要としているのか、どのようなサービスを提供するのかを書くことによって介護保険が利用できる仕組みになっています。介護保険と介護計画書は切っても切り離せない存在です。

介護計画書を書く時に、「何を書くのか」「書き出しをどうするか」と、悩みの声を多く聞聞きます。現役ケアマネジャーが、実際に計画書を作るポイントを説明していきます!

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介護計画書は3種類ある!

介護保険を利用するために必要な介護計画書。それは介護計画書に沿って介護が行われたことを確認して介護保険から負担される9割分の支給が決定されるからです。計画書は利用する介護保険のサービスによって大きく3つに分かれます。

居宅サービス計画書

介護保険で要介護が必要と認定された人が自宅など在宅でサービスを使って生活するために必要になるのが居宅サービス計画書です。居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成を担当します。要介護1~5の人が対象です。

居宅サービス計画によってディサービスの利用やヘルパーの訪問が必要、福祉用具を借りたいなど使いたいサービスが計画書に明記されます。それをもとに各事業所でディサービスでは通所介護計画書、ヘルパー訪問であれば訪問介護計画書、福祉用具を借りるのではあれば福祉用具サービス計画書を作成します。

施設介護計画書

介護保険対象の施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)で入所サービスを受けられるように立てられた介護計画書になります。それぞれの施設のケアマネジャーが作成を担当します。

介護老人保健施設と介護療養型医療施設は要介護1~5の人が対象です。特別養護老人ホームは特別な場合を除いて原則要介護3以上の人が入所できます。

介護予防サービス計画書

介護保険で介護予防や支援が必要と認定された人が介護を予防するためにサービスを使う場合、必要になるのが介護予防サービス計画書です。居宅介護支援事業所に委託される場合もありますが、基本的には地域包括支援センターの保健師やケアマネジャーが作成を担当します。

アセスメントで課題を知る

介護計画書を書くにあたって本人や家族の状況を聞き取ります。聞き取り調査のことをアセスメントと言います。アセスメントをもとに介護の計画を立てます。

本人の身体状況を始め、家族、現在の生活状況や介護について調査を行います。本人と家族の言うことが違うこともあります。ですが、本人ばかりを優先すると介護をする家族が困ってしまう場合があるため、すべて利用者本位にできないこともあるでしょう。

それぞれの希望をもとに生活に関する課題(ニーズ)を考え、ニーズを解決できるように必要なサービスを組み立てていきます。

プランニング(計画を立てる)

ニーズをもとに実際の生活を考えていきます。介護保険では、自立支援を目指して計画を立てるように制度上考えられているため、ニーズは○○したい、○○できるようになりたいと利用者が主体となる書き方が求められます。

計画を立てる際に気をつけて欲しいことは、ニーズを解決することによって生活の中でどれだけ本人の想いが実現できる生活が得られるかを考えることです。介護保険で考えることが難しければ、自分の生活に置き換えてみます。

実際に「子どもの頃からの好きだったオープンカーに乗りたい」で考えてみましょう。

自分の生活に置き換えたニーズ

子どもの頃から好きだったオープンカーに乗りたい。

ニーズを実現するための目標

  • 車の免許を取得する
  • 車を買うお金を稼ぐ
  • 車を保管する場所を確保する

目標から具体的方法を考えよう

  • 自動車学校に通い、試験を受ける
  • 買いたいオープンカーを決める
  • 仕事に励む
  • お金を貯める
  • 駐車場を確保する

介護保険を利用する人も健康な人も特別なことは何もありません。困っていること(ニーズ)に対して順を追って解決できるように考えていくことが計画であり、介護に関する計画書を作成するため、介護計画書と言われるだけに過ぎません。

麻痺で動けない人のニーズはどう書くの?

ニーズの書き方は「利用者が主体となる書き方が求められる」といいましたが、麻痺で動けない人など身体が思ったように動かせない人だと実現が難しいことも出てきますよね。そのような場合でも、現実的に可能かどうかで書いてください。

もし、「足の麻痺で歩けない」とそのまま書いてしまうと、困っていることではありますが、ネガティブな思考になってしまいます。歩けないことを解決することは現実的に難しいからです。では今度は、「足に麻痺があるけど、歩けるようになりたい」だとどうでしょうか。現実的に可能なのかわからないので、直接的な解決策がわかりません。ポジティブ思考だからいいというわけではないのです。

それらを踏まえて、「足が麻痺しているが、近所の公園に気分転換に出掛けたい」と、したらどうでしょうか?一気に現実的になりました。近所の公園なら行けるかもしれないと、利用者が主体的に動いてくれそうですよね。

それでは、実際に「近所の公園に気分転換に出掛けたい」で考えてみましょう。

足の麻痺で動けない人のニーズ

近所の公園に気分転換に出掛けたい。

足の麻痺で動けない人のニーズを実現するための目標

  • 車イスに座る時間を増やす
  • 外出できる体力をつける
  • 身なりを整える

足に麻痺がある人の目標から見る、具体的な方法

  • 食事はベッドから離れて座って食べる
  • 1日3食の食事を食べる
  • 朝、夕に着替えを行い、身綺麗にする
  • 何かにつかまり立つ練習を行う

介護計画書は1+1=2というように誰が考えても同じ答えになるものではありません。その人らしさが出るものです。ニーズは大きく持ちたいですが、目標や方法についてはなるべく具体的に明記した方が計画通り円滑にできているかの評価が行いやすいです。

介護計画の評価が行いやすい目標を考える

評価が判断しにくいものは避けましょう。例えば、「穏やかな生活を送る」と目標にあげてしまうと、 誰が何をもって穏やかと判断するのか曖昧で判断に困ります。計画を評価するときに計画通りにできているか否かが分かりにくく、次にどうしたら良いか困ったり、人によって対応が異なる場合があります。

評価がしやすい例でいうと、「車イスに座る時間を増やす」と目標にあげる良いでしょう。計画を評価するときにできているか否かが人によって異なることなく、判断することができるからです。評価によって次の目標に対してアセスメントを行い、ニーズの実現に向けて取り組んでいけます。

介護計画書を書くためのポイント

  • 介護計画書が特別なもの、難しいととらえず、生活の一部と考える。
  • 介護が必要な人や家族が何を求めているのかをとらえる。
  • ニーズを実現するための目標を具体的に表す。
  • 本人の想いが実現できる生活が得られるかを考える。
  • 具体的なものを書くことによって計画通りにできているかが判断できる。

介護になると途端に難しく考えてしまいますが、普段の生活の中で知らないうちに計画を立てて実行しています。介護が必要な人や家族がいつ、どこで、何を必要としているのか、解決するために何ができるのかを考え、思いを受け止めて介護計画書を作成してくださいね。

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