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平成 29 年 11 月1日より外国人技能実習制度に「介護」の文字が加えられた。サービス業として初めての業種が「介護」となる。その重要性は、以前の「360。定点観測」でも述べさせて頂いているが、 実際にスタートするとなると、身の引き締まる思いが更に強くなる。

 

30 万人程の人手不足が予想されるこれからの「介護」。単なる人員不足を補う制度ではないと理解しているが、この問題も同時に考えていかないといけない現状もある。そこで、 介護技能実習制度における問題点や可能性を改めて書き記していきたいと思う。

 

 

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 外国人技能実習制度とは?

ケアギバーの方々
▲日本の施設関係者と医療施設に通う高齢者たちにバーベキューを振る舞うケアギバーの方々。彼女たちの「おもてなし」の精神を感じたひとときでした。

 

まず、この 11 月1日から外国人技能実習制度に「介護」の文字が綴られていることを現場サイドがどれだけ知っているだろうか?「この記事を読んで初めて知った」とか、「知っていたけど、どの様な制度なのか詳しく知らない」などが大半ではないだろうか?そこでもう一度、解りやすくその制度を説明することから始めよう。

 

「技能実習制度」とは、1993年 4 月から実施され、開発途上国の「人づくり」に協力する目的で、最長 3 年まで外国人を受け入れていることと、この制度で受け入れた外国人技能実習生に対しては、 日本人と同様に「労働基準法」が適用されることを理解しておこう。

 

次に知っておきたいことは、最長 3 年の内訳。 1 年目は、自国へ技術を持ち帰るための研修計画のもとに技術修得をする研修生としての雇用。更に、所定の条件をクリアした者に対し、より実践的な技術習熟を目的として、同一機関(会社)の雇用関係の下で 2 年・ 3 年目を実習生として日本で生活を行なう。そして、一番理解して頂きたい内容としての部分は、 「労働基準法」が適用されるということ。つまり、最低賃金以上の雇用条件が求められ、社会保険や住民税等の義務が存在する外国人を雇用することなのだ。

日本にケアギバーとして来日している彼女達
▲何度も日本に来ている彼女たち。大好きな日本にケアギバーとして参加できることを誇りに思っている。

 

更に付け加えるとするならば、研修・実習生は単なる「労働力」ではなく、先進国である日本として、開発途上国に対して、惜しみなく技術修得や習熟を行なえる環境を提供する立場であるということも忘れずに理解して頂きたい。現場サイドとしてみれば、外国人と言う認識の違い以外は全て同様の雇用制度の中で働くということとなり、来年度の新卒者にしてみれば、同級生としての立場に変わりない。もう少し細かな制度はあるにしろ、取り急ぎ覚えて頂きたいことは、この程度で構わないと思う。

N4合格者の皆さん
▲N4(日本語検定4級)合格者の皆さん。12月にN3合格を目指す勉強熱心さに脱帽。

 

 

施設側の受け入れ姿勢は?  一番必要なこととは?

前述の文章でも理解できるように、外国人技能実習生を受け入れることは容易ではないし、コスト面も施設側の大きな負担となる。しかし、この制度を有効的に活用することは、これからの介護業界にとって大きな分岐点になると私は思う。なぜなら、今後の介護業界の現状と技能実習制度の双方を充分理解しているからこそ言えることなのだが、文頭にも書き記したが、これから介護現場の人手を安定的にどれだけ確保できるのか?を、どうしても考えざるを得ない(単なる労働力でないことを理解した上での意見)。

 

これからの日本は、少子高齢化を急激なV字回復で打開できるとは思えない。むしろ人口が減少していく予想が大半。であるならば、他の業界と雇用を巡り、今以上の過酷な争奪戦が繰り広げなければならない。つまり、3Kのイメージが先行している介護業界として、効果的な人員確保は?と考えると、この制度を如何にして業界内で目的を明確化し、双方にとって有益となる活用が必須になると、私は思う。

 

ただし、教育や指導する体制を十分に確保できている施設が先行してこの制度を引っ張っていくべきであり、現在、人が居ないから直ぐにでも欲しいと考えている施設にとっては、マイナスな面が多く存在するため、現行制度を少し見守っていきながら、現状の施設運営を立て直す必要があると思う。

アンちゃん
▲ユーチューブで「名探偵コナン」を見ながらヒアリングの練習をしていた「アンちゃん」彼女の日本語力は本当に素晴らしい!

 

どんな業種業態にでも言えることだが、計画性を持って、スタッフに十分な理解を得た上での実施が必要である。今回のこの制度は、介護業界にとって初めての取り組みであるが、他の100近くの業種では実績がある。そこで起きてきた問題点は何か?成功例は?などをしっかりと周知把握して、この制度を広い視野で見つめていかなくてはならない。

 

入国前研修・入国後研修、日本語検定 4 級(N4)のコミュニケーション能力、 民族性や文化などを実際に見聞きしたり、現地で雰囲気を感じたり、普段の介護現場で身に付けたアセスメント能力を発揮し、五感で感じる「介護技能実習制度(生)」 を創造していく必要がある。

教室に貼られた勉強の文章
▲教室に掲示されている何気ない文章。読解力を身に付けるための勉強が日本語検定の最難関らしい。

 

 

外国人技能実習制度をポジティブに見つめて欲しい

先ず何をやれば良いのか?とよく質問される。それは、施設側だけでなく、組合や送り出し機関や技能実習生本人からも、私へ相談の連絡が入る(SNSのメッセージ等)。これを意味するものは何か?それは、今まで制度が正式にスタートされていなかった点とそれぞれの現場や内容を理解できていない点が挙げられる。

 

中には、制度が確定する前に決定したけど大丈夫か?と言う質問もあった。私は口を濁して、その時点での明確な回答しかしてこなかったし、無責任な回答は出来なかった。しかし、この号が発行されるときには、制度がスタートしている。つまり、何から始めて、どの様な注意点があり、これからの展望やそれぞれの国の特徴、今までの制度における問題点と対策は、大きく回答が出来る。

 

この制度は、積極的にかつ計画的に取り組んでいくスタンスを持てば、必ず介護業界に光明を見出せると考える。悲観的な意見を持つだけでなく、慎重かつポジティブとこの制度と付き合う必要があると思う。

日本語学校の生徒たち
▲真剣な表情で日本の介護施設担当者の話を聞く日本語学校の生徒たち。内容もしっかりと理解されている!

 

何かあれば、お気軽にお問い合わせ下さい。私は、介護の業界が少しでも前に進み、安心で安全な明るい未来の持てる業界にしていきたいと思い、何度も海外に足を運んできました。これからも継続的に実習生の声や現場での課題等を【介護職】のひとりとして見守っていきます。

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