食事介助を安全に行うためには、食事介助が必要となった3つの要因を知り、食事形態や姿勢・口腔ケアを行うことで安全に介助することができます。この記事では、安全に食事介助を行うための注意点をご紹介します。
目次
食事介助の注意点
「誤嚥性肺炎発症にかかわる要因の検討」では、以下のように述べられています。
誤嚥性肺炎初発患者を対象に,発症にかかわる身体機能面,栄養状態,認知面の要因について後方視的に調査し検討した結果,歩行能力やADLが低下している患者,また認知能力の低下がある患者は嚥下能力が低く,誤嚥性肺炎発症のリスクがより高いことが示唆された.背景因子としての年齢,BMI,血清アルブミン値とは有意な相関が認められなかった.また基礎疾患として,脳血管疾患,呼吸器疾患との間で嚥下能力に差異は認められなかった.以上のことより,誤嚥性肺炎の発症リスクを低下させるためには,実用的な歩行獲得やADL向上を図るリハビリテーション,認知症進行の予防が重要である
以上のことから機能が低下すると、むせることや食事がのどに詰まるなど誤嚥の症状を起こしやすい特徴があります。むせや誤嚥が続くと、誤嚥性肺炎につながる恐れがあり、注意が必要です。
したがって食事介助の際、介助が必要になった要因を知り、要因に合わせた対応が求められます。食事は、食べ物をかみ砕いて飲み込むことであり、この行為を嚥下と言います。介助が必要になる人は嚥下に何らかの障害があり、脳に「食べる」という指令がうまくいきません。
嚥下障害になる要因は、脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)による麻痺、身体の衰弱、加齢の伴う機能低下などがあげられます。要因は人によって異なるため、病状を理解して嚥下状況に合わせた食事介助を行うことが大切です。
食事介助を注意する際の要因は3つ
利用者の嚥下状態に合わせて食事介助を行いますが、嚥下障害を引き起こす要因として以下の3つがあげられます。
機能的要因
脳血管性障害やパーキンソン病などによって筋肉や認知機能にマヒや障害が起こり、咀嚼、嚥下の能力が低下して引き起こされることを言います。この障害は器官には異常はありません。食べる機能に問題があり、飲み込みがうまく行かない状況を指しています。その他、加齢による機能の衰えも機能的要因に当てはまります。
器質的要因
口腔内、喉、胃など食べることや食べ物が通ることに異常があり、飲み込み困難な場合のことを言います。口内炎、扁桃炎や先天性奇形、腫瘍などが原因となり、食べ物が正しく身体の中を通っていかない状況があげられます。
心理的要因
検査をしても異常がみられず、機能的要因や器質的要因が考えられない場合は、心理的な原因によって嚥下障害が引き起こされることがあります。ストレス性の胃潰瘍、心身症、うつ病などがあげられます。精神的な要因が大きいため、高齢者だけでなく、若者であっても同様の症状が出ることが多いです。
食事介助の注意点は食事形態
食事介助の際、利用者の嚥下状態に適した食事形態を選ばなければ、誤嚥のリスクが高まります。そのため、介護施設や病院では利用者の状態に合わせた「介護食」を提供しています。
1.きざみ食

食べやすい大きさにきざんである食事になります。飲み込むことはできるが、咀嚼の力が弱い人に対して提供されています。きざみ食は、さらに1口台程度の荒きざみ食とみじん切りのような極きざみ食にわけられることが多いです。
食は、嚥下状態に合わせてさまざまな食事形態があります。
2.軟菜食、ソフト食

野菜などを柔らかく煮込む、専用の凝固剤を使ってミキサーにかけたものを固めるなど調理した食事になります。歯茎でつぶせる程度になり、咀嚼しやすい、口の中でまとまりやすい、飲み込みがスムーズなのが特徴です。
3.ミキサー食

ミキサーにかけてポタージュ状にした食事になります。咀嚼力、嚥下する力が低下した人に提供されますが、水分量が多いとむせが見られます。そのため、トロミ剤を使用して利用者の嚥下しやすい粘度にする工夫が必要です。一方、普通食と同じ提供量をミキサーにかけると、量が増します。量を減らすと栄養量まで低下してしまうため、足りない分は栄養補助食品などを利用しましょう。
利用者1人ひとりの嚥下状態が異なるため、本人の状態を把握し、安全に食べられる食事形態を選ぶことが大切です。一方で、食事の形態を工夫しても食材によって食べることが難しいものや食べにくいものがあります。
例えば、繊維質の多い食べ物はミキサーなどをかけても繊維が残りやすいです。また魚などは細かくするとパサパサしてしまいまとまりにくいことがあります。食材の特徴を理解し、食事介助にあたることが求められます。
食事介助の注意点は姿勢
正しい姿勢で食事介助を行わないと、誤嚥する可能性が高くなります。座位とベッド上でギャッジアップする場合では注意点が異なる部分があります。具体的に気をつける点は以下の通りです。
1.座位の姿勢
- イス又は車イスに深く腰をかける(座って膝が90度に曲がる程度)
- 背筋は90度が理想
- リクライニング車イスの場合は45~80度程度
- 円背で背もたれとの間が空いてしまう場合はクッションを挟むなど工夫が必要
- 両足ともに床又は足置きにつく
- 身体とテーブルの間は握りこぶし1個分ぐらいのすき間を空ける
- テーブルの高さは、腕をテーブルに乗せ、肘が90度に曲がる程度がよい
2.ベッド上でギャッジアップの姿勢
- ギャッジアップは60度程度が理想
- 状況に応じてリクライニング車イスと同様に45~80度内で調整
- 首や体幹がのけ反り、一方に傾くことがないようにクッションなどを利用する
- ずり落ち防止のため、足裏にクッションを置く
- ベッドより身体がずり落ちないように腰はベッドの折れ目に合わせる
あくまで基本姿勢になります。基本を念頭に置き、利用者に合わせた対応を心がけましょう。
食事介助の注意点は食事前
食事に集中してもらうことは介助を行う上で大切です。そのため、食事を食べる前に落ち着いた気持ちで食べられる環境を整えることも求められます。
例えば、排泄を我慢している、周囲の騒音があると食事に集中できません。その他、感染症予防の観点から手を洗うなど清潔にすることも食事を行う上で大切です。食事を楽しんでもらうために献立を説明することも意欲向上につながります。食事に集中できるよう利用者にあった方法で環境整備に努めましょう。
食事介助の注意点は口腔ケア
口の中に食事の残渣物などが残っていると、誤嚥につながる恐れがあります。また唾液が少なく、口内が渇いていると噛む力や飲み込む力が低下します。口腔内の清潔保持の他、嚥下体操などを行い、唾液の分泌を促すことは、安全に食事介助を行うために有効です。
食事介助もアセスメントが大切
食事は利用者にとって最大の楽しみです。毎日の食事をおいしく食べてもらえるように個々の状況を把握し、対応する必要があります。最後まで食事が楽しめるように工夫して食事介助にあたりましょう。
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