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施設内において、就業している介護職員が利用者である高齢者に虐待をするという事件が多いことから、施設利用に疑念を抱く保護者・家族が多いのが現状です。このような事件はなぜ起こるのかというと、介護職員の働く職場環境が問題となっているからです。福祉業界の人員不足や過労に悩む就労環境を探ることで、高齢者虐待の原因がわかります。

介護の専門家が起こしてしまう高齢者虐待を防ぐためには、高齢者虐待の内容や発生原因を知っておく必要があります。

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介護職員の高齢者虐待は実際に起きている

新聞や報道からもわかるように、介護施設での職員による高齢者虐待は実際に起きているのが現状です。介護職員による高齢者虐待をなくすためにはどのようなことが「高齢者虐待」にあてはまるのかを知る必要があります。本来なら介護や介助に努めなければならない介護職員が実際に起こしてしまう虐待は、働く環境や疾病による問題行動の理解が乏しいことによって起こることが多いです。

増加傾向にある高齢者虐待の実情

平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果によると、介護施設や居宅サービス事業などの業務に従事する職員からの相談や通報は、2,187件、職員による虐待判断件数は621件となっています。前年度の相談や通報は1,898件、虐待判断件数は510件に対してどちらも増加しています。

増加傾向にある高齢者虐待

増加傾向にある高齢者虐待

介護に従事する職員として虐待そのものや疑わしい場合、通報の義務があり、専門機関への報告が増えたのは事実です。一方で、虐待はやってはいけないことと理解しつつも虐待に至っているケースが1年で111件増加しています。

また家族や親族、同居人などから虐待に対する相談や通報は32,231件、実際に虐待判断件数は17,249件となっています。前年度の相談や通報は30,040件、虐待判断件数は17,078件のため、介護従事者と同様に増加しています。

高齢者虐待が増えていることに伴い、福祉的サービスの低下、介護者の負担が社会問題となって現れた結果であり、高齢者虐待は深刻さを増しています。

介護職員から受ける高齢者虐待の現状

認知症の症状や疾患による行動が複雑化し、仕事として介護をしている介護職員であっても戸惑い、解決できずに虐待に至っているケースも多いです。厚生労働省が発表した2018年度の高齢者に対する虐待件数では、17,870件となり、過去最多を更新しています。虐待件数で伸びが大きかったのは介護職員による虐待です。前年度に比べて21.8%増加しています。

虐待の内容は、暴力や拘束など「身体的虐待」、侮辱するなど「心理的虐待」、介護を怠るなど「介護等放棄」が上位を占めています。要介護度が重度になるほど身体的な虐待の割合が増しています。

【参照】平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査

【参照】平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査(添付資料)

虐待は5つの種類に分類される

虐待の種類は、以下の5種類があります。

虐待は5つの種類

虐待は5つの種類

高齢者にとって、本来介護を受けなければ自分で十分な生活ができないはずの高齢者が虐待によって不自由な生活となるため、被害は深刻です。虐待の種類によっては生命に危険を及ぼすものがあるので気をつける必要があります。

1.身体に危害を加える虐待

暴力行為が主流の虐待になります。暴力行為によって身体的な被害を被る場合、身体的虐待に該当します。明らかな暴力行為以外に必要以上の力で介助を行う、乱暴に介助を行うことは、身体的虐待に当たるため、注意が必要です。

その他、緊急やむをえない場合以外の身体拘束も身体的虐待になります。身体拘束は2001年に厚生労働省から発表された「身体拘束ゼロへの手引き」に11項目があげられています。身体拘束は利用者に身体的弊害、精神的弊害、社会的弊害をもたらします。介護者として利用者の人権を侵害している自覚を持つ必要があります。

2.ネグレクト

介護・介助をせず、できない利用者に任せることは虐待の一種になります。介護職員、保護者のどちらであっても介護・介助を必要としている人に対して必要な支援を行わない場合、虐待とみなされます。例えば、食事を与えない、排泄介助を行わない、入浴をしないなど自分でできない高齢者をそのままにしておくことは放棄・放任であり、虐待行為にあたります。

3.心理的虐待

暴言、罵声などによって精神的苦痛を感じるような言葉は心理的虐待に該当します。声かけは慎重に行う必要があります。暴言や罵声のように明かな言葉以外にも利用者の質問に対して「何度も同じことを聞いている」、理由を説明しないまま「座っていて」などはキツイ言葉には聞こえませんが、利用者にいう言葉ではありません。「ちょっと待ってね」も優しい言葉のように聞こえますが、待つ相手からすると、いつまで待てばよいのかわからず、不安や不信感が残ります。

何度も繰り返すことは、利用者を心理的に追い込んでしまう恐れがあり、いった介護職員に意識がない場合であっても、心理的虐待に分類されます。介護士として自分の声かけは相手にとって安心できるものであるかを常に考えて行動する必要があります。

4.性的虐待

陰部に接触する強引な行為、公然の場で強制行為をさせた場合は性的虐待に該当します。その他、ズボンを下したまま写真を撮る、プライベートカーテンもしないまま排泄介助を行い、周囲の目に介助をさらすことも性的虐待に当たります。

5.経済的虐待

利用者本人の財産や金銭を横領する、盗難する行為は経済的虐待に該当します。家族が年金を使い込み施設の利用料金を滞納する、十分な金銭を与えず食べる物を購入するお金がないなども同様です。在宅生活の場合、ライフラインが途絶えると、生命の危機の恐れがあるため、経済的虐待は急を要することも多いといえます。

虐待が起きる原因

平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果の添付資料によると、虐待の発生要因は以下のようになります。

発生原因

割合
第1位 教育・知識・介護技術等に関する問題58%
第2位 職員のストレスや感情コントロールの問題24.6%
第3位 倫理観や理念の欠如10.7%
第4位 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ10.7%

介護職員による高齢者虐待は原因や起因する事柄は虐待が発生してから判明します。介護の仕事は未経験や無資格でも始められますが、認知症や疾患に対する知識がないと虐待に繋がる恐れが大きいです。認知症は教科書を読んだだけでは理解できないことも多く、行動を目のあたりにして介助する難しさを知ります。認知症は奥が深く、認知症の種類によって行動パターンが異なるため、介護者も状況に合った対応が求められます。

同じことを繰り返す、同じことを何度も聞いてくる、場所がわからない、突然怒り出す、不潔な行為を繰り返すなど問題となる行動もさまざまで利用者によって異なります。介護者自身が対応に悩み、虐待に走らないようにするためには教育・知識・介護技術等の修得が大切です。

気づいた人に通報されることで虐待をしていることに気づく

虐待は無意識に行っていることも多く、気づいた人に通報されることで自分の行動が虐待行為であることに気づきます。無意識に虐待を行っている場合、第三者による通報により虐待と判明することが多いです。

例えば、転倒を繰り返す利用者に対して安全に暮らしてほしいがために角度のついた車イスを使用することはベルトで固定していないのでよいことのように思われがちです。しかし自分で立ち上がろうと思っても立ち上がれない状況であれば行動制限にあたります。目に見える固定をしていなければ虐待と感じない職員がいますが、行動制限は立派な虐待です。安全のためとはいえ、虐待をしている職員に自覚がないことも多く、本来、虐待は禁止行為であることを1人ひとりが忘れないことが重要となります。

十分な介護ケアが務まらず事故を起こして虐待となってしまう

虐待の発生要因として最も多いのが「教育・知識・介護技術等に関する問題」であり、要因の半数以上を占めています。これは介護職員の日々の介護業務が影響しているといえます。例えば、常に人員不足の職場環境、介護ケアの知識や認識不足などによって十分な介護ケアができず、虐待に至ることがあります。

例えば、夜の睡眠が確保できない人への対応を考える場合、寝ないイコールすぐに眠剤ではありません。なぜ夜になっても眠ることができないのかをまず考えましょう。昼間に寝ていて昼夜逆転している可能性があるかもしれません。食事摂取の時間が早すぎてお腹が空いて眠れない可能性もあります。物音や話し声が気になって眠れないなど、薬に頼る前になぜ眠ることができないのか見極めることが大切です。眠剤は服用時間や服用量が適切でないと活動量の低下や転倒事故など弊害が大きく表れます。利用者の行動パターンから解決できれば薬に頼る必要もなく、安全に暮らすことができます。

介護職員といえども同じ人間です。自分に余裕がないと、本来は虐待行為にあたることであっても自分を守るために起こしてしまう危険があります。自分の行動が正しいか否かを自分に問うことは虐待の目を積むことにつながります。

業務中に利用者の行動制限をかけるために拘束をしてしまう

介護を提供する中で、行動制限のために拘束をしてしまったことが虐待の引き金になるケースがあります。拘束をしてしまう介護職員の心理は、認知症を患っている利用者に対して精神的苦痛や手をあげられる、罵倒されたりすることで身の危険を感じてやってしまいがちです。

介護現場で身体拘束は原則禁止事項です。一方で身体拘束は、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つのやむを得ない状況が発生した場合のみ認められています。身体拘束は身体的虐待に該当しますが、状況によっては介護職員が「身を守る」ための手段として役割を持っています。

利用者の状況を理解せず、その場の行動で拘束を行うことは身体拘束になり、人権侵害にあたります。状況を理解した上で生命を守るために必要な行為となる場合があるため、見極めが大切です。

高齢者虐待を防ぐための3つの柱

高齢者への虐待を防ぐには下記3つのポイントがあります。

虐待を防ぐための3つの柱

虐待を防ぐための3つの柱

利用している施設のサービス内容や目的・取り組みを知る

利用しているサービス先で異変に気づいたら、すぐに利用しているサービスに原因究明の意思を伝えましょう。どんなに小さなことであっても異変に気づいたら、すぐ行動に移すことが大切です。

サービス提供をしている事業所の内容を知ることでお互いに困ったときは相談することが可能になります。困っていることをそのままにせず、お互いに解決策を見つけていくことは高齢者虐待を防ぐことにつながります。家族と事業所の信頼関係が厚くなり、よりよい介護の提供ができます。

周辺地域へのリサーチ

利用している福祉サービスの周辺地域から見た評判を聞いて調べることはおすすめです。地域住民、別の利用者家族などいろいろな人と交流し、利用しているサービスの介護職員について知ることは見られているという意識が働き、虐待防止につながります。

公的機関へ相談

家族だけで何ともならない場合には、住んでいる市町村や地域の包括支援センターへ相談することも虐待を防ぐための重要な要素です。虐待が疑われる場合、公的機関に訴えることで今後の段取りや対応策を検討することができます。公的機関は個人情報を守りつつ、調査などの権限もあります。高齢者虐待はなかなか当事者だけで解決できないことも多いため、早目に相談し、虐待の不安なく安心して暮らせるように努めていくことが大切です。

高齢者虐待の意味や原因を知ることで介護職員の高齢者虐待を防ぐことができる

介護職員の高齢者虐待が問題視されているからといってすべての介護士を疑うことはよいとはいえません。多くの介護職員は、誠心誠意、利用者にとってよりよいケアを考え、努めています。一部の知識のない介護職員によって生じる高齢者虐待を周囲で食い止めることが必要となります。

一方で高齢者虐待は介護職員ばかりを責められない現状があります。身体拘束も同様です。高齢者虐待をやりたいと思って行動している介護職員は1人もいません。慢性的な人員不足や専門的な知識の不足、安全な環境が整えられていないなどによって引き起こされている恐れがあります。

福祉サービスを必要する家族がいる場合に備え、「高齢者虐待」の理解を深めておきましょう。何気ない一言で虐待を疑われることもあります。言葉や行動の重みを理解し、行動を振り返り、高齢者虐待を未然に防ぐ努力を続けましょう。

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