Pocket
LINEで送る

新人職員の教育に頭を抱える人も多いですよね。資格が重視されるようになり、入職時から介護福祉士や社会福祉士、介護福祉士実務者研修を修了しているなど資格を持っている新人ばかりが採用されてきます。

資格を持っているにもかかわらず、できませんと言われる毎日で「今までなに勉強してきたの!」と思う日も少なくありません。私が教育した「できる新人」と言われていた新人さんが招いてしまった出来事をお伝えします!

スポンサーリンク






「できる新人」だけど、なんでも自己判断するのが心配

学校を卒業して新人さんが特養に配属になりました。介護福祉士の実習でも来ていた新人さんでした。施設側からも実習担当の先生へ“ぜひ就職して欲しい”と声をかけていた学生です。新人さんも卒業後は介護福祉士として特養で働きたいと思っており、就職に至りました。

実習生のときから積極的で明るく、前向きで仕事も熱心に取り組みます。教育担当として積極的なことは良いのですが、やや先走ることが多い新人Aさんに心配をしていました。半年前に4週間の介護実習を行っているため、利用者の名前と顔も覚えており、利用者からも「待っとったよ」と、言われてとてもうれしそうでした。

4週間も介護実習を行っているため、勤務の様子もそれなりに理解できていたのは事実です。説明をする前に「知っています」と始めてしまうこともしばしばありました。若くて動けるので年配の介護職員は大喜びで、一部の職員からも「できる新人」として引っ張りだこです。

介護は資格ではなく経験が必要になる

オムツ交換だって新人職員は時間がかかります。介護福祉士を取得していても仕事に慣れているわけではありません。学校では生徒同士でオムツの当て方を勉強した程度では拘縮の強い利用者のオムツ交換が大変なのは当たり前です。

認知症の人への対応も同じで、問題行動を起こす人の気持ちに共感することが大切と言われても何をやって良いかなんてわかるはずがありません。そんなとき半年前の介護実習時の援助方法を確認もせずに実践して、一歩間違えれば命を奪ってしまうような事故を引き起こしてしまいました。

介助は利用者に合わせて日々変化する

早番は2人の職員が出勤します。1人は朝食出し、1人は別のフロアの誘導を手伝いに行きます。「困ったことがあったら声をかけてね」と言ってもう1人の早番職員は別のフロアへ行き、新人さんは認知症フロアの朝食出しを行いました。

朝食を終え、片づけているところで落ち着かない利用者さん。利用者さんは机をたたいたり、大声をあげたりして落ち着きません。介護実習のときに、落ち着かなかったらおはじきで遊んでいたことを覚えており、利用者さんに渡して目を離してしまったのです。

出勤してきた他の職員が「大丈夫???」「口から出して!!」と大きな声で声をかけています。新人さんは「どうかしましたか…」なんてのんきに出てきます。

出勤してきた職員に新人さんは「何をやっているの。死んだらどうするの」と怒鳴られます。新人さんは「落ち着かなかったので、好きなおはじきを出しただけです」と答えます。「おはじきが危険なこと知らないの?」と強い口調で言われる新人さん。

同じ早番の職員が呼び出され、看護師が来て状況を確認します。念のために病院でみてもらったほうが良いとなり、すぐに受診の手配がされました。

思い込みと目に見えないプレッシャーの中で

私は、新人さんを別のフロアへ連れていき、利用者さんの状況を説明しました。確かに介護実習に来ていたとき利用者さんは落ち着かないときにおはじきで遊ぶと落ち着いていましたが、それは半年前の出来事です。認知症が進行し、何でも口にしてしまう異食行為が始まったため、おはじき遊びは中止されていました。

新人さんになぜ他の職員に声をかけなかったのかを聞くと「早く1人前になりたかった」とポツリと話したのです。教育をしている私たちは知らず知らずのうちに新人さんにプレッシャーを与えていたことを痛感しました。

慣れることが一番こわい。新人教育で逆に教わる

Bさんは受診の結果、おはじきを飲み込んでおらず、無事でした。無事を聞いてAさんは泣き崩れていました。自分の思い込みで行ったことで、人の命も奪ってしまう可能性があったことに自分で気づくことができました。それからは人の話は最後まで聞き、わからないことは勝手に判断する前に確認するようになりました。

新人さんを教育して改めて私たちも日々の介護について考えます。新人のときは毎日が緊張ですが、いつの間にかいろいろなことに対して慣れてきます。毎日同じことを繰り返しては困るので慣れることは大切です。

ただ慣れることによって大事なことを見失ってはいけないといつも新人教育を通じて感じています。新人を教育しているときは「いつになったらできるようになるの??」と頭を抱えるときもありますが、教えることによって私たち自身も教えられることがあると信じて日々奮闘しています。

Pocket
LINEで送る