医学の進歩によって、認知症にはいくつかの種類があることが分かってきました。アルツハイマー型、脳血管性、前頭側頭葉型、そしてレビー小体型などです。
それぞれの種類によって、身体に現れる症状には特徴があります。例えばレビー小体型認知症は、パーキンソン病に似た運動障害が伴うためよだれが出てしまいます。
認知症になったとしても、感情は失わずに残っています。当然「自尊心」もあるのです。自尊心を傷つけずに介護できることが、「介護のプロ」として介護職員に求められていることだといえます。
この記事では
- レビー小体型認知症の原因と特徴
- 自尊心を大切にしながら行う認知症ケアの例
を介護職の現役職員がお伝えします。
目次
レビー小体型認知症とは
「レビー小体」という特殊なたんぱく質が脳の神経細胞に蓄積していくことで発症する認知症です。そもそも認知症というのは精神的な病気ではなく、脳の器質的病変です。「こころの病」ではありません。
脳に異常が起こりますから、様々な身体的症状が現れます。レビー小体型の特別な特徴として、具体的で生々しい幻視がみられたりパーキンソン症状が出現したりします。
パーキンソン症状とはパーキンソン病の身体的特徴のことで、小刻み歩行や関節のこわばり、震え、動作の遅さ・鈍さなどが体に現れることです。ここに「よだれ」が関係してきます。
レビー小体型認知症でよだれが出やすい理由
パーキンソン症状は「運動障害」の一つです。手が震えたりするので、食器が上手に持てないなどの症状が現れます。この運動障害がアゴや舌にも現れると口を閉じていることができず、口の中に出てくる唾液を飲み込むことも難しくなるため、よだれが出やすくなるのです。
自尊心を傷つけないよだれの対処方法
認知症の方は、ただでさえ記憶を忘れてしまったり運動障害が出たりと生活しづらいのに、自尊心を無視したケアを受けてしまいがちです。感情は失われていないため、軽くあしらわれるような対応をされると「バカにされている」と感じ、介護への抵抗や暴言・暴力といった行動が出てしまうこともあるのです。
そのため、自尊心を傷つけないケアを行うことが重要です。よだれが出ている場合も同様で、どのような対応ができるでしょうか。
- 「よだれ」とは言わずに「ちょっと失礼しますね。」と言って拭かせてもらう
- できるだけ、他の人の視線がない時に拭く
- そもそも、他の人から何か言われてしまうような席を用意しない
- よだれが出ても拭けばいい、よだれが出ることは恥ずかしくない、ということを話の折に触れて伝える
自尊心を傷つけないことが大事。特徴を理解して対応しよう
何度も言いますが、認知症の方でも豊かな感情があります。逆に、認知症という脳の病気で生活がしづらいからこそ、感情が刺激されることには敏感です。そのため「大切にされている」ということを実感してもらうことが重要です。
大切にされていると感じてもらうためには、徹底的に相手の状況に立って考える必要があります。その時、認知症の種類別の特徴を押さえておくことが役に立ちます。レビー小体型以外の認知症の特徴は次のとおりです。
アルツハイマー型
- エピソード記憶障害(“食べたもの”ではなく“食べたこと”を忘れる)
- 失語(しゃべれなくなる)
- 失行(できていたことができなくなる)
- 失認(認識できていたことができなくなる)
- 取り繕い(その場しのぎの作り話をする)
脳血管性(脳疾患を繰り返すことによる)
- 脳の損傷部位や程度によって異なるので、しっかりしている面とそうではない面がある
- 感情失禁(涙もろくなる、怒りやすくなるなど)
- 自発性の低下(自分から動こうとしなくなる)
- 脳梗塞などを起こすごとに症状が進行する
前頭側頭葉型(ピック病)
- 社会的行動や人格の異常(お店で欲しいものがあると、支払いをしていないのに持ってくるなど)
- 常同行動(いつも同じ行動をする。同じものを毎日食べ続けるなど)
- 特定の物に執着する(肌身離さず持っていたい。割れた食器の欠片など、一般的に考えると無意味なものであっても)
このような特徴を覚えておけば、それぞれの症状が出た時に「これは病気のせいなのだ」と認識できます。すると、持っていってしまった物を強引に返してもらおうと手から放そうとしたり、他の利用者さんがいる前で否定するようなことを言ったりするのを避けられます。
自尊心を傷つけない介護というのは特定の介護方法なのではなく、その時の利用者さんに何が起こっているのか、病気の特性と利用者さんの気持ちを理解し、恥ずかし思いをさせないようにする介護なのです。
認知症の方だからこそ自尊心を傷つけない介護を
判っているだけでも数種類ある認知症は、脳の病気の一つです。ですから、自分の気持ち次第でなんとかできる病気ではないのです。
レビー小体型認知症のように運動障害が生じる認知症では、アゴや舌の運動障害によってよだれを飲み込むことができず、口から流れ出てしまうこともあります。
認知症の方は豊かな感情をおもちです。よだれが流れ出てしまうのなら、自尊心を傷つけないような方法で介護を行う必要があります。
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