自宅で親を介護している人は大変です。介護保険サービスを利用して少しは解放される時間があるとしても、何かあれば受診など対応しなければなりませんし、結局のところ完全に解放される時はないからです。「介護疲れ」から、イライラしてしまうことは当たり前なのです。
こんなことを言ってはいけないかもしれませんが、介護福祉士であるわたしも、正直いって仕事だから介護ができています。自宅で親を介護する立場になったらどうなるか、想像するだけでも恐ろしくなります。
ただ考え方や工夫次第で、少しはイライラしない方法があります。
この記事では、利用者さんにイライラしてしまう時の5つの対処法とは何かお伝えします。
目次
そもそもなぜ、イライラしてしまうのか
介護が必要な人は、思う様に自分の身体を動かすことができません。また認知症の方は、身体は元気に動いても、周りに迷惑をかけたり突拍子もない行動に出たりすることがあります。つまり「介護者の思う様に動いてくれない」のです。
子どもを育てる時には「“こころ”の動きを待つように」といわれます。介護が必要な高齢者の場合「“からだ”の動きを待つ」必要があるのですが、介護者の思う様に動いてくれず、言うことも聞いてくれないために「イライラしてしまう」ことが一般的です。
1.自分でできることはやってもらう
介護をしていると、親が自分でできそうなことでも「待つのが面倒くさい」とやってしまうことはありませんか。確かに、その時は時間短縮になるかもしれません。しかし長い目で見た時にこの行為は、親が自分でできることを奪ってしまい、身体機能の低下を加速させることになります。
最初は「そのぐらいわたしがやるからね」と快くできていたことも、疲れがたまってくると「なんでそのぐらい自分でできないの!」とイライラしてしまいがちです。ですから、自分でできることは奪わないようにして身体機能を維持してもらいましょう。
2.過度の期待はしない
介護が必要な状態になった段階で、その後のことをある程度覚悟しておくことができます。基本的に、本人がよほど精力的にリハビリなどを行わない限り、状態が改善していくことは少ないといえます。ですから「いつかは回復するかも」という期待はあまり抱かない方が良いでしょう。
もちろん、本人の気持ちを下げてはいけないので親には絶対にいってはいけません。もしも誰かに話したいのであれば、口が堅い家族や友人にとどめておきましょう。
3.時間にゆとりをもつ
時間がない中で介護しようとしても、絶対にうまくいきません。自分だけでなく、相手をイライラさせることにもなりますし、転倒などにつながることもあります。介護も「事前準備」が大切です。この点で、福祉用具を適切に活用することは大きなメリットになります。福祉用具専門店に相談してみましょう。
また、もしも自分が時間かかるようなことをしなければならない時には、介護サービスを利用している時など時間に余裕がある時に行いましょう。
4.「所詮は他人」と割り切る
勘違いしないでいただきたいのは、親なのに赤の他人と思え、といっているのではありません。親の介護がなぜ難しいのかというと、自分が育てられた過程で理不尽に思えていたことなどがフラッシュバックし、まるで敵(かたき)のように思えてしまうことがあるからです。
わたしが子どもの時にはあんな風に言っていたのに、今のみじめな状態でそんなことが言えるのか!と考えてしまうようになると、余計にイライラが募ってしまいます。ですから「親といえども所詮は自分ではない“他人”なんだ」と割り切ることが重要です。
5.なんといっても上手にストレス発散
ストレスは、すべてのイライラの根底にあります。自宅で親を介護していれば、ストレスがたまらない訳がありません。だからこそ、介護保険サービスを利用して自分の時間を作り、ストレスを発散させていくことが必要です。
「介護」=「我慢」ではありません。親を介護しているからこそ、自分らしく過ごせる時間を大切にするのです。親も子どもに、自分のことを我慢してまで介護して欲しいとは思っていないはずです。
イライラしない介護術とは技術や知識ではない
介護福祉士は、介護の専門家です。しかし、イライラしないで介護を行うことは専門家ではなくてもできます。自宅で親を介護するのは本当に大変なことですが、親・介護に対してバランスのとれた見方をしながらたまったストレスを発散できれば、グッと楽になるはずです。
介護される側も大変なんだ!という想いも忘れないようにしましょう。本当なら、子どもはもちろん、誰にもそんな迷惑はかけたくないはずです。特に認知症介護は「受けている介護を映し出す鏡」だといわれます。介護する側の精神状態が、介護される側の認知症状に直結しているのです。上手にイライラを押さえ、冷静に、穏やかに対応すれば、認知症状を悪化させずに済みます。まさに「プラスの相乗効果」を生み出すのです。