施設で毎日のように実施されるレクリエーションや余暇活動、毎回何をしていいか悩みますよね。楽しめる要素や、運動の要素、認知症のトレーニングになる要素等、様々な要素を取り入れながら、あなたも毎日試行錯誤しながら、レクリエーションや余暇活動を実施しているのではないでしょうか。

特に認知症の人に対してのレクリエーションは、一人ひとりの認知症のレベルが違う為、皆が出来る活動が少なく、どんな活動をして良いか悩んだりしますよね。

実は日ごろ取り入れている活動も少し工夫することでどんなレベルの人でも取り組める活動に、また認知症進行予防のトレーニングへと、変化させることが出来るのです。今回は認知症の人が取り組みやすくなる活動のちょっとした工夫や、レクリエーションの時に取り入れられる、認知症予防のトレーニング等をお伝えします。

始めの挨拶にトレーニングを取り入れてみる

活動を始める前はスタッフが挨拶をしますよね。「皆さんこんにちは」と挨拶をしたり、「今日の活動は塗り絵です」と活動の説明をしたりすることが多いと思います。この挨拶の数分の中にも取り入れることが出来るトレーニングが「リアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)」です。認知症になると、時間や季節などがわからなくなってしまう見当識障害という症状がでてきますよね。その症状に働きかけることができるトレーニングが、このリアリティ・オリエンテーションなのです。また施設の中は、夏は冷房、冬は暖房が効いていて快適に生活できますが、長く入所していると快適な分暑さ寒さがわからず、季節感もなくなってしまうことも多いです。そんな時にこのトレーニングで季節感を促すことができます。そして会話を進めることでまた認知症の人同士のコミュニケーションのきっかけにもなり、認知症で低下しがちなコミュニケーション能力の低下予防にもなります。取り入れ方は簡単です。挨拶の時に、今日の日付や季節天気など、認知症の人の興味を引くように会話に取り入れていくだけです。その時にただ、淡々と情報を伝えるだけでなく、認知症の人の反応を聞きながら進めていってください。それでは少し例をあげてみますね。

始めの挨拶の例

まずは挨拶と一緒に季節を感じられる話題を提供する

「皆さんこんにちは。今日も暑いですね。外は向日葵の花がきれいに咲いていますよ。皆さん向日葵は好きですか?」

など、季節を感じられるような話を取り入れてください。この時に認知症の人が「私も向日葵が好きなのよ」などと話し始めたら、話を聞いたり、そこから他の人に「○○さんはどうですか?」など話を振ったりしてコミュニケーションを促してみてください。

季節感を促した後に日付の確認をする

「では日付の確認をしますね。今日は何月何日ですか?」

この時に無理に答えを引き出そうとするとストレスになるので、軽く聞く程度で大丈夫です。もし答えてくれる人がいたら、答えを聞いてください。仮に間違えたとしても「あー!惜しいですね」などと笑顔でフォローを忘れないでください。

日付の前後にあるような行事ごとを話題にしてみる

「ではカレンダーで確認をしてみますね。今日は8月10日です。もうすぐで、お盆ですね。皆さんお盆は御馳走を食べていましたか?」

などその季節を感じることが出来る行事やイベントなどに話を持って行ってみてください。特にその地域独自の行事ごとやイベントなどは認知症の人にとっても馴染みの深い事なので見当識やコミュニケーションを促す、良いきっかけになります。このように、普段の挨拶に少し取り入れるだけで、認知症のトレーニングが出来るのがリアリティ・オリエンテーションです。

塗り絵など簡単に取り入れることができる活動を一工夫してみる

塗り絵や計算問題などコピーをして皆に配ることができる活動は、簡単に出来る認知症予防の一つとして、あなたも馴染みのある活動の一つではないでしょうか。簡単に出来るけど、取り組んでくれる人もいれば、取り組んでくれない人もいて、皆に受け入れてもらうのは難しかったりしますよね。そんな時は、皆に配るその塗り絵や計算問題などを見直してみてください。皆同じレベルの課題ではないでしょうか?ある人には簡単すぎて「こんなのは子供がするものだ」と言われたり、ある人には難しすぎて拒否されたりすることがあると思います。一人ひとりのレベルを評価してその人に合う課題を提供することが出来たら、比較的いろんな人に受け入れてもらいやすくなるでしょう。そこで塗り絵と計算問題をレベル別に分けてみます。

レベル別に塗り絵を楽しむ方法

認知症が進行してくると構成能力も低下してきます。その為、塗り絵などの線だけあるものは背景と物体がわからずにごちゃごちゃして見えて、徐々に難しくなってくるのです。ですので、その人がどのレベルの塗り絵が出来るのか評価して、その人にあった塗り絵を提供してください。また、ただ塗り絵を提供するだけでなく、季節に関係するものだったり、また「おいしそうなリンゴですね、リンゴは好きですか?」など会話に取り入れたりすることで見当識や、コミュニケーション能力の低下予防にもなります。例として図を使い、レベル別にわけてみます。

背景も細かい塗り絵。大人の塗り絵にあるような細かい模様もある

塗り絵1

背景がシンプルな塗り絵。

塗り絵2

背景のないいくつか花や果物、野菜だけのある絵。例えば果物のあつまりなど

塗り絵3

風景もなく、シンプルな絵。理解しにくいときには縁取りだけ介護者が色を塗るなどして介助をする

塗り絵4

レベル別に計算問題を楽しむ方法

計算能力も塗り絵と同様、認知症が進行してくると徐々に低下してきます。計算問題もレベルに合わせて提供することで拒否していた人も取り組みやすくなるでしょう。計算のレベルですが、認知症の人が簡単にスラスラ解けるレベルの物がベストです。また終了後に丸付けをするときには、間違った問題にも丸をつけるようにしてください。「間違えることなく出来た」と自信がつくことで、意欲が低下しがちな認知症の人の意欲低下の予防にもつながります。段階付けとしては

・二ケタの計算問題

・足し算、引き算、掛け算、割り算の混ざった計算問題

・足し算、引き算、掛け算の混ざった計算問題

・足し算だけ、掛け算だけなど混ざっていない計算問題

・繰り上がりのない足し算だけの問題

レベル別の問題を提供しているサイトもありますが、月額利用料などがあって利用するのが難しい時にはExcelを用いてレベル別に計算問題を作ることもできます。一度作っておくと長く利用できるので便利ですよ。

余暇時間をトレーニングにしてみる

食事の時間や、お風呂の時間、レクリエーションの時間など、一日の過ごし方は施設で決まっていると思いますが、「何もしない時間」が意外と何をして過ごせばいいか悩むときもありますよね。認知症になると、人とのコミュニケーション能力や意欲も低下してくるので、同じテーブルにいるのに、他の人と話すこともなく、ただ椅子に座って長い時間を過ごしていることも多いでしょう。そんな時には、会話のきっかけを提供して、コミュニケーションのトレーニングの時間にしてみるのはどうでしょうか。

例えば野菜の絵カードや野菜の写真、野菜の図鑑など思い出すきっかけになるものをテーブルの上に置いておきます。そして、介助者が一言「私、料理がへたくそなので、教えてください。味噌汁には何の野菜を入れたらいいのですか?」等と言うと「大根が美味しいよね」など少しずつ会話が生まれます。話に入ってこられない人には介助者が「○○さんは何の味噌汁が好きですか」「大根の味噌汁は好きですか」など話を振ってみましょう。会話だけでも良いのですが、そこに絵カードなど見ることが出来るものがあると、認知症の人も思い出しやすくなり、会話がしやすくなります。会話のネタは馴染みのあるものだったらなんでも良いです。動物だったり、昔の道具や写真だったり、車の写真だったり、海の近い地域では魚なども良いでしょう。少し会話のきっかけになる物と、会話を提供して、「何もしない時間」をコミュニケーションのトレーニングの時間にしてみてください。

さて、今回は普段の活動に取り入れられる認知症のトレーニングについてお伝えしましたがいかがでしょう。認知症進行予防のトレーニングと難しく考えがちですが、少し考え方や取り入れ方を変えてみるだけで、日ごろの活動を認知症のトレーニングにすることができるのです。特に始めの挨拶などは準備する道具もないのですぐに取り入れやすいトレーニングではないでしょうか。実施するにあたり一番大切なことは、認知症の人のレベルをしっかりと把握しておくことです。皆同じケアではなく一人ひとりにあったケアをするのと同じように、トレーニングやレクリエーション、会話の振り方なども一人ひとりのレベルをみながら取り組むようにしてみてください。

まとめ

普段の活動を工夫して認知症の進行予防を図るために

  • 挨拶にリアリティ・オリエンテーションを取り入れてみる
  • 季節感やコミュニケーションを促してみる
  • 一人ひとりのレベルを把握しておく
  • 塗り絵や計算問題など皆同じものにせず、レベルに合わせて提供する
  • 塗り絵の時にも声掛けは忘れずに行う
  • 計算問題は間違っていても丸をする
  • 何もしない時間も有効活用できる

普段からあなたが取り入れている活動を少し工夫するだけで、認知症のトレーニングを行うことが出来ます。せっかくレクリエーションなどを行うのであれば、少しでも効果があった方が良いですよね。簡単に始めることが出来るトレーニング、ぜひ施設の活動に取り入れてみてくださいね。