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認知症の人を介護している中で対応に困る症状がいくつかありますよね。
特に、徘徊、不穏、暴言暴力、などは介護困難に陥りやすく、在宅での介護が難しくなり、施設などに入所するケースも少なくはありません。

実はこの症状は「周辺症状」と呼ばれ、症状が強くでる人もいれば、あまり症状が出ない人もいます。
反対に「中核症状」と呼ばれる記憶障害や見当識障害はほとんどの認知症の人に症状が出ます。

「中核症状」と「周辺症状」の違いや特徴などを知っておくことで、介護困難になりやすい症状への対応などもわかりやすくなってくるでしょう。
そこで今回は認知症の「中核症状」と「周辺症状」について詳しくお伝えします。

 

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まずは脳の働きを理解しよう

多くの認知症の疾患は脳に何かしらの異常がおこり認知症になります。
そして脳にはたくさんの働きをつかさどる分野があります。
例えば「筋肉を動かすところ」に障害がおこると、手足を動かすことが難しくなりますし、「聞いた言葉を理解するところ」に障害がおこると、言葉は聞こえるのに相手が何を言っているのか理解するのが難しくなります。このように、脳に障害がおこるとその障害された分野の症状が強く現れます。

 

「中核症状」はなぜおこるの?

闇

上記で脳に何かしらの異常がおこり認知症になると述べましたが、認知症によって障害される脳の分野の症状が、中核症状として現れます。
記憶障害、見当識障害、理解力の低下、集中力の低下など脳の働きそのものの障害により現れる症状だったのです。

 

「中核症状」の種類とその症状

では具体的に中核症状の症状や対応方法についてお伝えします。

記憶障害の症状と対応方法

認知症で最もよくみられる症状です。物忘れや、ついさっきの出来事を思い出せなかったり、人を忘れてしまったりします。
認知症の人の物忘れの特徴は出来事全てを忘れてしまうことです。例えば、昨日の夜ご飯は何を食べたか思い出せないことはよくあることですが、認知症の人の場合は食べたこと自体を忘れてしまうのです。

対応方法

まずは本人を否定しないことです。そして「何度も同じことを言わないで」と怒るのもいけません。否定されたり、怒られたりすると認知症の人は不安になったり、「この人は私に嘘をついている」と思ったりします。そしてその不安は周辺症状の原因にもなります。

「ご飯を食べてない」と何度も訴える場合には、「今準備するので少し待っていてくださいね」など優しく声をかけ、お茶などをすすめたり、別な話題の話などしたりして気分転換をはかってみてください。
また「病院は何時から?」と、何度も同じことを尋ねる場合は、「病院は10時からです」などと書いた紙を認知症の人の見えるところに置くなどして、安心できる環境を作ってみてください。

見当識障害の症状と対応方法

見当識障害では、場所や時間、季節、人、自分の置かれた状況がわからなくなってしまいます。例えば、歩きなれた道がわからなくなり、迷子になってしまうこともありますし、トイレの場所がわからなくなってトイレ以外の場所で失禁してしまうこともあります。また季節がわからなくなると、真夏にたくさんの服を着て出かけたり、時間がわからなくなると、夜中なのに出かけたりすることがあります。

対応方法

記憶障害のときと同様、まずは間違えても怒らないようにしましょう。トイレの場所がわからないときにはトイレの入り口に目につくように、「トイレ」と書いた紙を貼ってみるのも良いでしょう。
また、「桜が咲いているから、もう春ですね」「お昼ご飯は12時に準備をしますね」など、時間や季節がわかるような言葉を入れながら話しかけ、時間や季節を促してみましょう。

理解力・判断力の障害の症状と対応方法

理解することに時間がかかるようになったり、同時にいくつかのことを言われたりすると混乱してしまいます。
またいつもと違う出来事や新しい出来事が起こると混乱したり、洗濯機や炊飯器、自動販売機など機械の使い方に時間がかかったり、わからなくなったりします。

対応方法

何か指示をするときは、一度にたくさんのことを言わずに、一つずつ伝えるようにしましょう。また、ゆっくりと伝えることで理解もしやすくなります。
あいまいな表現も理解が難しくなるので、「寒くない格好をしてください」と伝えるのではなく「長ズボンと上着を着てきてください」など具体的に伝えるようにしてください。

実行機能障害の症状と対応方法

一つ一つの動作はできても、一連の動作を順序よく効率よくおこなうことが難しくなります。例えば、料理はこの実行機能を使う活動の一つですが、「4人分のカレーを18時までに作り終わる」と決めたら、計画を立て、その通りに実行していきますよね。
しかし、実行機能障害では、計画通りに実行することが難しくなるので、材料の準備や時間配分、次に何をすればいいかなどわからなくなり、「10人分のカレーを失敗した」なんてことになってしまうのです。

対応方法

指示をするときは動作を一つ一つ区切って指示をしましょう。例えば「ご飯の後は歯を磨いてきてください」と言わずに「ご飯を食べてくださいね」「洗面所に行きましょう」「歯を磨いてください」「口をゆすいでください」のように、一つ一つの動作を指示することで理解しやすくなります。

 

「周辺症状」はなぜおこるの?

中核症状がおこることで、不安に感じたり、介護者に怒られたり、身体症状があったりなどの要因が加わり「周辺症状」がおこります。
例えば、記憶障害で「ご飯を食べてない」と訴える認知症の人に「何度も同じこと言わせないで、さっき食べたでしょ」と怒って対応してしまうと、認知症の人は「ここはご飯も食べさせてくれない」と感じて「帰る場所を探してうろうろ」するかもしれません。
そしてその「帰る場所を探してうろうろ」する言動は介護者にとっては「不穏」または「徘徊」とみられてしまうのです。

 

「周辺症状」の種類とその症状

周辺症状には、徘徊、帰宅願望、介護拒否、不穏、暴言暴力、妄想、不潔行為、抑うつ、不安など種類があります。そして環境や本人の性格など個人差があるため症状の現れ方もさまざまです。
今回は介護をしている中でも特に問題となりやすい周辺症状の特徴と対応方法をいくつか紹介します。

徘徊の症状と対応方法

徘徊は目的なく歩き回っているように見えますが、本人には目的があって歩き回っていることが多いです。
しかし、認知症のためその目的を上手に説明できなかったり、歩き回っているうちにその目的を忘れてしまったりするため、介護者には目的なく歩き回っているように見えます。

見当識障害で自分の居場所や目的の場所がわからなくなったり、記憶障害で何か物や人を探しているうちに、何を探しているのか忘れたりして歩き回っていることもあります。
また、何か出来事や周囲の環境が刺激になり気分が高揚して歩き回ることや、何か失敗したり怒られたことで不安になったり心配になったりして歩き回ることもあります。

対応方法

まずはじっくりと話を聞いてなぜ徘徊がおこっているのか探りましょう。家に帰るためなど目的がある場合には、その気持ちに共感しながら「家にはご飯がないから、ここでご飯を食べてから帰りましょう」などと声掛けをして、いったん気持ちを別のことに向けさせましょう。
はっきりした目的が訴えられない場合は、身体症状の確認をしてみましょう。前回の排泄から時間がたっている場合など、トイレを探して歩き回っていることもあるので、トイレに誘導してみましょう。

不穏の症状と対応方法

不穏は落ち着きがなくそわそわしたり、部屋の中を歩き回ったりする症状があります。
徘徊同様、見当識障害で居場所がわからなくなり落ち着かないときもあれば、記憶障害で何かを探して落ち着かないときもあります。また、気分が高揚して落ち着かなくなったり、不安や心配ごとで落ち着かなくなったりします。

対応方法

まずは話を聞いてその原因を探りましょう。目的がわからない場合は、身体症状や、周りの環境、職員の声掛けや態度はどうだったか探ってみましょう。

詳しくはこちらをご覧ください⇒不穏の原因を知るにはここをチェック!言葉にできない利用者の声を汲み取る熟練の技

物とられ妄想の症状と対応方法

認知症で初期からみられやすい症状の一つです。本人は妄想を現実だと強く思い込んでいるため、否定をしても納得することはありません。
記憶障害により、通帳や財布など大事なものをどこにしまったかわからなくなることで、物とられ妄想がおこります。
物とられ妄想はお世話をしている娘や嫁、またはヘルパーや介護を長く担当している職員など身近な人に疑いが向きやすのも特徴です。

対応方法

まずは否定も肯定もせずじっくりと話をきいてください。探して出てきそうなときは「一緒に探してみませんか」と声掛けをしてから、認知症の人と一緒に探してみてください。そして見つかったら「良かったですね」と肯定的な声掛けをしてください。
もしここで「ほら、盗まれていなかったでしょ」なんて否定的な声掛けをしてしまうと、認知症の人は不安になり新たな周辺症状の原因になることがありますので注意してください。

探しても見つからない物のときには話を聞いた後、気持ちが別のことにむくように徐々に認知症の人の好きな話題へと話を振っていきましょう。

暴言暴力の症状と対応方法

認知症により感情をつかさどる脳の分野が障害されたり、理性を保つ分野が障害されて暴言や暴力行為が出ることもあれば、言いたいことがうまく言えなかったり、怒られたり不安なできごとや、自尊心を傷つけられるできごとがあると暴言暴力となって現れることもあります。

対応方法

入浴や着替えなど何か介護をする場合には不安にならないように、一つ一つ声掛けを行ってから介護をするようにしましょう。
また行動を全て制限するのではなく、できる行動は認知症の人にしてもらい、失敗しないようにフォローできる体制を作りましょう。

そしてもし失敗しても怒らないでください。もし暴言暴力がみられているときには、まずは話を聞いて落ち着いてもらいましょう。その際背中や腕などに軽く触れボディタッチをおこなうと安心感が得られやすいです。
それでも落ち着かないときには、何を言っても更に興奮させてしまうこともあるので、いったんその場から離れて、認知症の人に危険な行動がないか近くから見守りを行いましょう。

また、体調不良をうまく訴えることができずにイライラして暴言暴力が現れる場合もあるので、落ち着いたら熱はないか、便秘は続いていないかなど体調のチェックをしてみましょう

症状の診断

 

さて、今回は認知症の中核症状と周辺症状の関係性や対応方法についてお伝えしましたがいかがだったでしょう。
介護の中でも問題となりやすい周辺症状がなぜ現れるのか原因や理由を知ることで、周辺症状が現れたときの対応方法などがわかりやすくなったのではないでしょうか。

周辺症状は個人差があり、穏やかで何も問題がない人もいれば短気で介護が難しく感じる認知症の人もいますよね。そして、同じ対応方法をしたからといって、全ての人の症状が治まるわけでもないのが、認知症を介護する中での難しいところではないでしょうか。

今回紹介した対応方法は一部であり、認知症の人、一人ひとりにあった対応方法が他にあるかもしれません。今回の紹介した対応方法を参考に、ぜひあなたなりの対応方法を見つけてみてくださいね。

 

まとめ

周辺症状を軽減して認知症の人も介護者も穏やかに過ごすために

  • 中核症状は脳の障害された分野の症状が現れる
  • 中核症状はほとんどの認知症の人に現れる症状である
  • 周辺症状は強く症状が現れる人もいれば、あまり症状が現れない人もいる
  • 中核症状に周りの環境や身体症状、本人の正確などが加わり周辺症状が現れる
  • 周辺症状が現れたときにはまずは話をきいて、原因を探ってみよう

周辺症状の原因がわからないと、認知症の人にとっても介護者にとっても不安な時間が長く続きますよね。何か症状が現れたときには、中核症状や周りの環境、介護者の接し方、身体症状などあらゆる方向から原因を探ってみてください。

原因をさがして何回も試行錯誤しているうちに、原因や対応方法が少しずつ見つかってくるでしょう。でも、もしすぐに原因が見つからなくてもあなた自身を責めないでくださいね。

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