介護保険サービスを利用するためには市町村に申請し、要介護認定を受ける必要があります。認定調査では、市町村の職員が本人やその介護者に聞き取り調査を行います。しかし、事前に準備をしておかないと、実際の状態よりも低い介護度に認定されてしまうことがあります。聞き取り調査の時に限って、本人がしっかり受け答えできていたということもよくある話です。正確な判定がされないと、実際の状態に合った介護サービスを受けることができず、介護者の負担が増えてしまうということに繋がりかねません。認定調査で正しい状況を伝えられるために、どのような準備をしておけば良いのでしょうか。受け答えのコツや判断基準をお伝えします。
認定調査受け答えのコツ

質問内容を確認しておく
認定調査で質問される内容は決まっています。事前にどのようなことが質問されるのかを確認し、受け答えを考えておきましょう。
その場で答えようとすると、すぐには状況を思い出せなかったり、できていないことをとっさにできていると答えてしまったりすることがあります。
同じ周辺症状でも、昼間だけ現れるのか、夜間だけ現れるのかということでも日常生活自立度が変わります。一般的には夜間より昼間に症状が出る方が日常生活自立度は低くなりますので、その症状がいつ出るかをよく観察して、うまく調査員に伝えるのも認定を受けやすくするコツです。
日頃からメモを取っておく
日頃から「トイレに行くときはズボンの上げ下ろしに介助が必要」「布団から起き上がるときは支えがないと自力では起き上がれない」など、細かなことをメモに取っておきましょう。
質問された時にとっさに思い出して答えようとすると、あいまいな回答になったり、うまく状況を伝えられなかったりします。また、後から思い出して「あ!これを言っておけばよかった」と後悔することもあります。
徘徊や妄想など、当日の様子だけでは伝わらないことも細かくメモに残しておきましょう。
普段の会話の様子を伝える
いつもは息子のことをお父さんと言ったり、自分の年齢が分からなくなったりするのに、面会時には背筋をピンと伸ばしてしっかり受け答えをすることがあります。
そのことにより、実際の状態よりも低い介護認定が出て、家族は納得できないというのはよくある話です。このようなトラブルを避けるため、普段の様子を正確に伝えましょう。
話の繰り返しがあったり、つじつまの合わないことを言ったりするのであれば、そのことを職員にこっそり伝えましょう。
既往歴をメモしておく
要介護認定の判定には、主治医の診断書が必要になります。しかし、主治医の診断書にはこれまでの病歴やケガなどの既往歴が全て書かれているわけではありません。
それほど大きな病気ではないけれど、介護をする上で気になっていることや困っていることがあればそれも伝えましょう。
今困っていることを伝える
本人からの視点での困りごとと、介助者の視点からの困りごとをまとめておきましょう。
普段何に困っているのかということが明確に分かると、普段の生活ぶりが見えてきます。
調査員は面会時の短い時間でどのような状態なのか、環境はどうか、困りごとは何かなど把握しなければなりません。
正確に細かく伝えるほど、正しい判定が出る可能性が高まりますので、普段の生活で困っていることを事前に考えておきましょう。
要介護認定の判断基準

要介護認定は聞き取り調査の結果をもとに、コンピュータによる一次審査と学識経験者による二次審査が行われます。要介護認定は要支援1から2と、要介護1から5の7段階に分かれています。
要支援1 | 立ち上がりや日常生活のほとんどの動作は一人で行うことができる。 しかし一部介助が必要な状態。 |
要支援2 | 椅子からの立ち上がりや歩行に少し不安がある状態。 また将来的に要介護状態になることが考えられる。 |
要介護1 | 要支援2と同じく、日常生活動作に不安がある状態。 また認知機能の低下や理解力の低下がみられる。 |
要介護2 | 起き上がりや歩行の他、入浴や排せつ、などに介助が必要となっている状態。 |
要介護3 | 日常生活全般に介助が必要な状態。 認知機能の低下が見られ、時間や日付が分からなくなる。 |
要介護4 | 介助なしで生活していくことが難しい状態。 話が噛み合わなかったり、意思疎通ができなかったりする。 |
要介護5 | 介助なしで生きていくことができず、寝たきり状態。認知機能の著しい低下。 |
訪問調査員が面会日当日に見聞きした様子が主な判断材料になります。「なんとかやれています」といった曖昧な答え方はせず、何分かかるのか、どの程度介助しているかなどなるべく具体的に伝えるようにしましょう。
ありのままを伝えられるようにする

要介護認定を正しく受けるためには、普段介護をしている人の意見が非常に重要です。調査員は当日の様子を第一に捉えてしまいます。しかし、大切なのはありのままの現状を知ってもらうことです。適正な介護サービスを受けるために、普段から様子や言動をメモしておいて、本当の姿を伝えられるようにしましょう。