家にいて突然「家に帰りたい」と言われたら戸惑いますよね。「家にいるのに何を言っているの」と強い口調で言い返しそうになる気持ちはよくわかります。
一方で認知症高齢者は周りにいじわるをしようと思って「家に帰りたい」と言っているわけではありません。「家に帰りたい」認知症高齢者と訴えに悩む家族。声を荒げても解決できない問題です。
本記事では、認知症高齢者の気持ち、悩む家族の気持ちを汲みながら認知症の帰宅願望について考えていきましょう。
目次
「帰宅願望」の強い認知症高齢者への接し方
認知症状が引き金になって起きる「帰宅願望」ですが、接し方によって本人の精神状態が左右されます。安心できる接し方は以下のことがあげられます。
1.傾聴と受容
なぜ帰りたいと言っているのかをゆっくり聞きましょう。帰りたい気持ちはそのときによって異なりますが、話を聞いて寄り添うことで不安軽減につながります。思いを受け止めて安心できる関係を築いていきましょう。
2.怒らない
家にいながら帰りたいと言われると「どこに帰りたいのか」「家にいるでしょ」と介護者として怒りたくなる気持ちもわかります。しかし頭ごなしに怒ると、怒られたことだけが強く印象に残り、帰宅願望悪化の恐れがあります。怒りたい気持ちを抑えて接しましょう。
3.拘束しない
帰宅願望が強く、突然、家から出て行ってしまうことがあります。突然起こる行動につき添いきれないこともあるでしょう。しかし行動を制限したり、物理的に鍵をかけたりして出ていかないようにすると、抑制されたことに対してさらに帰宅願望が増すことがあるため、注意が必要です。
家にいるのに帰宅願望になってしまう人の気持ち
「家」は認知症があるないにかかわらず、誰もが安心できる場所です。その安心できる場所である「家」にいるのになぜ「帰りたい」と言うでしょうか?
「帰りたい」と言っている「家」にすでにいるのですから、何度も言われると介護をしている家族のほうが困惑することでしょう。
例えば、認知症のAさんの家族は毎日、本人からの訴えに振り回されています。
Aさんは昼間デイサービスを利用して夕方、自宅へ帰ります。介護者である娘さんが夕食の用意をしていると毎日「もう家に帰るね」と言って脱いだ上着を羽織ってまた外に出ようとします。娘さんは夕食作りどころではなくなり、「お母さんの家はここだから行かないで」「今、帰ってきたところでしょ」と引き留めます。毎日、同じことの繰り返しに娘さんは疲れたと言います。
ここで大切なことは、娘さんは「帰る」と言うお母さんを怒ってはいませんが、「家だ」と言うだけでお母さんが納得できる言葉を返していないところです。お母さんだって闇雲に「家に帰りたい」言っているわけではありません。言葉に隠された理由を考えることが必要です。
「帰りたい」気持ちの原因は?
原因は人によって異なりますが、認知症状から引き起こされているところが大きいです。
不安な気持ちやストレスの表れ
認知症状の一つである記憶力低下や見当識障害が原因としてあげられます。記憶力の低下では印象が強く残っている家の記憶だけが残り、住みやすく変えた現在の家を認識できないことや見当識障害によって家自体がわからなくなってしまうことがあります。記憶の中に残っている自宅が現在の自宅と異なることによるストレス、場所が認識できないことを「家に帰りたい」という言葉が不安の表れと言えるでしょう。
夕暮れ症候群によるもの
生活の中で夕方と言うと、「子どもが帰ってくる」「夕飯の用意をしなければいけない」「就業時間が終わって家路につく」など人が動くことが多い時間でもあるため、認知症高齢者にとって自分も何かやらなければと思わせる時間となりえます。
それぞれが役割を持っている時間の中で自分には何もないということは喪失感が大きく、自分も何かやらなければという気持ちが「帰宅願望」になって表れていると言えるでしょう。
「帰宅願望」と上手につき合う方法
認知症高齢者と特別視するのではなく、同じ家族として見守りながら以下のことに気をつけましょう。
- 病気によって引き起こされる症状であることを理解
- 不安な気持ちを受容
- 傾聴し、安心できる居場所を作る
- 否定や行動を制限しない
安心は言葉だけでは伝えにくい部分があります。自宅が安心できる場所になれるように環境を整えていきたいですね。
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