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「家に帰りたい」という帰宅願望に対処するには職員の知識と技術が求められます。

介護職に就いていると、認知症の症状を持つ高齢者と関わる機会もあるでしょう。症状も様々で、物忘れや作業能力の低下など、すべての人に見られる症状から、徘徊や物盗られ妄想などの二次的に現れるものまであります。

中でも対応の難しい帰宅願望のある利用者に出会った際には、どのような対応が必要でしょうか。

一歩間違えれば暴言、暴力に繋がりかねません。具体的な事例と共に、誰でも実践できる対処方法をお伝えします。

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考えられる帰宅願望の原因5つ

頭を抱える女性

帰宅願望とは「帰りたい」と思い帰る準備を始めたり、実際に帰ろうとしたりすることです。職員の中には「じっとしていて欲しい」「動かないで」と、この行動自体を面倒だと思う人もいるでしょう。利用者はなぜ「帰りたい」と思うのでしょうか。行動には理由があります。

①中核症状

認知症の症状のある人なら誰にでも起こる症状のことです。帰宅願望には中核症状の中でも見当識障害が深くかかわっています。見当識障害とは今自分がいる場所が分からなかったり、季節が分からなかったりと時間と場所の認識がうまくできない事を言います。時間や場所の認識や今自分がどうしてそこにいるのかが分からず不安になってしまいます。気が付けば知らない場所、知らない人に囲まれてる状況です。本人にとって非常にストレスを感じることではないでしょうか。結果、馴染みの人の元へ、いつもの場所へ「帰らなければ」と思うのです。

②目的がある

「子供が帰って来るから」「ご飯を作ってあげないといけないから」など、ただ家に帰りたいのではなく、目的があるのかもしれません。これまでの生活歴をたどれば、自然な感情であることが理解できるでしょう。別の欲求があるかもしれないと考えることも原因を理解する上で必要な視点です。

③夕暮れ症候群

介護職ならば一度は耳にしたことがあるかもしれません。夕暮れ時、外が薄暗くなってくると不安や焦燥感が強くなり、「帰らなければ」と帰宅願望が現れることです。認知症の症状がない人でも、夕方になるとなんだか寂しい気持ちになることがあるのではないでしょうか。「認知症だから」ということではなく、根底にある感情や感覚そのものは私たちと同じです。

④落ち着かない場所

人に囲まれた真ん中が好き、目立たない端が好き、外を眺めるのが好きだから窓際に行きたいなど、好みは人それぞれです。落ち着かない場所にいるからそわそわする、そんな感情が焦燥感や不安につながっている可能性があります。

⑤お腹がすいた

食事したことを忘れてしまい、まだ食べていないと思っていたり、小腹が 空いて口寂しかったりしているかもしれません。空腹によりイライラとしている場合、そのいら立ちが帰宅願望へつながっていることがあります。

すぐに実践できる対応策

手を取り合う

原因は分かっていても、実際に対応しようとするとどうすれば良いか分からず戸惑うこともあるでしょう。戸惑ってしどろもどろしているうちに利用者の「帰りたい」という気持ちがヒートアップしてしまい、興奮させてしまったという経験がある方もいるのではないでしょうか。具体的にどのような対応をすれば良いのでしょうか。

話を聴く

大切なのは気持ちを否定しないことです。「帰れないですよ」「もう家はないですよ」などは、たとえそれが真実であっても伝えてはなりません。気持ちを受け止めた上で話を逸らすことも有効です。興味のあることや好きなこと、得意なことなどの話を振ることで気持ちが切り替わることもあります。また、「仕事をしないといけない」と 言うのであれば、それが本人にとって誇らしいことという場合もあるので「どのようなお仕事をされているのですか?」「何時に終わるのですか?」などと聞くと自慢げに話してくださり、自然と話を逸らすことが出来ます。

  • 他利用者が話を聴く

話は 噛み合っていないけれど、なぜか会話が成り立っているという状況に出会ったことはありませんか?職員では納得できなくても、同じ立場の信頼できる仲間の言葉であれば心が落ち着くこともあるでしょう。

  • 目的が分かったら

なぜ帰りたいのか、その目的が分かった場合は帰らなくても良い理由を伝えます。「戸締りをしてないから」「ガスの元栓を切っていないから」と言われれば「戸締りはしてから来たから大丈夫」「ガスの元栓は私が確認してますよ」というように言い、安心することができれば帰らなければならない理由はなくなるかもしれません。

場所を変える

居心地が悪いと感じている可能性があります。真ん中ではなくて端がいい、窓際がいい、仲の良い利用者の近くがいいなどの理由であれば改善することができます。利用者が安心できる場所を作りましょう。

馴染みのものを置く

家でいつも飾っていた置物や写真、思い出の品など馴染みのあるものを持ってきて飾ります。いつも見慣れた馴染みのものがあることで安心感が生まれ、家にいるような落ち着く環境へ近づけることが出来ます。生け花をしていた利用者ならテーブルの近くに花を飾ったり、編み物をしていた利用者なら毛糸で作られたものを置くなどすると、「これは私が作ったのよ」と得意げに話してくださることもあります。馴染みのものは話を上手に逸らすタネにもなります。

散歩する

帰りたいと思っているのですから当然帰ろうとします。施設を出ていこうとしたとき、無理やり行動を止めようとするのは逆効果です。さらに興奮し、抵抗しようとするでしょう。暴言や暴力に発展することもあります。時間や人員に余裕があるのならば少し一緒に散歩をすると良いです。歩いているうちに感情が落ち着き、職員の言葉に耳を貸すようになります。「私はあなたの味方」「あなたが必要」と感じることができ、安心できる声掛けをします。また、歩いているうちに本人が「歩いて帰ることはできないんだ」と自覚することがあります。「また今度近くまで行ってみましょうね」「とりあえず今は一緒に戻りませんか」などと声を掛け、本人の気持ちを汲みましょう。

小腹を満たす

おやつの時間を設けている施設もあるでしょう。しかし、帰宅願望の出やすい夕暮れ時というのは少し小腹の空く時間帯です。夕食に影響が出ない程度に飴やヨーグルト、ホットミルクなどを食べていただくとイライラが収まり落ち着きます。

妻が待っているから

後ろ姿

  • A氏  87歳  男性
  • アルツハイマー型認知症 要介護3
  • 妻と二人暮らし

A氏はデイケアに通っています。デイケアには通いだしてまだ、2か月です。認知症の方は環境が変わるととても不安になり、特に見当識障害が 出やすくなります。14時頃までは昼食を摂り落ち着いた様子で笑顔でお話してくださいます。しかし、14時以降になると「家に連れて帰って下さい。家で妻が待っているから。」と帰宅願望が出てしまいます。

原因は何か?

Aさんの場合、「家で妻が待っている」という理由があり帰宅願望が出ています。妻に会うという目的があります。目的を理解し、 Aさんが納得できる納得できる対応が必要です。

環境と会話でリラックス

場所にも配慮し、綺麗なお花が生けてある花瓶の前に移動しました。そして、耳を傾け、まず話を聞きます。認知症の利用者様でも本当に帰らないといけない用事あるかもしれません。話を聞いてA氏の気持ちを落ち着かせます。話をしていると妻の話を引き出したりし、お花を見ながら話をし、話題を帰るというテーマから他のテーマにしていつの間にか違う話になって家に帰る事を忘れてしまう時もあります。始めは強張った表情だったA氏も徐々に表情が和らいできました。認知症の方は表情もよく観察する必要があります。時に強張った表情時に目が鋭くなっていたり、にこやかになったりします。その時その時の気持ちを汲み取る事が出来ることがあります。

不安を取り除く

それでも時間がたってしまうと不安になり帰宅願望が出てしまうこともあります。介護者は妻に電話をかけるふりをします。スタッフは「奥様は今外出してらっしゃって家に帰り着くのは夕方になるそうです。家の鍵をAさんは持っていないですし、それにここのバスは16時にならないと運転手が帰ってきません。今ガソリン入れに行っているんです。それまでデイケアで夕方まで待ちましょう。」と声をかけます。すると、「じゃー仕方ないね。ここで待たせてもらおうか。」と落ち着きました。

目に見える対応

不安を取り除いたら安心していただけるように心がけます。画用紙を小さく切ってその画用紙にA駅16:15発B駅到着と記載して帰りの便の切符を発行しました。それを見せて「帰りの便の切符を買ってきました。16:15発なので16時過ぎに声をかけますのでそれまでゆっくりしていていいですよ。切符が遅くなってすいません。この切符は運転手さんに渡してくださいね。」と伝えました。するとその切符を大事そうに胸ポケットに入れて「分かりました。16時過ぎに教えてください。」と納得されたようです。

不安から安心へ

その後はいろんなスタッフが時折気にかけながら「Aさん何時の切符でしたか?見せてください。」と見せていただいたりしました。また、時には「その切符どこでもらいましたか?私も発行してもらわないと帰れないですね。」と、A氏に伺いました。するとA氏は得意げにスタッフを指差して「あの人だよ。」と教えてくださいました。切符がある事でまた、切符を忘れないように配慮することで今日は家に帰る事ができるんだなと安心していただけたようでした。

なくすのは不安

安心

帰宅願望には不安や焦燥感がつきものです。帰宅願望をなくすのではなく、不安をなくすことが大切です。まずは安心していただくことを目的に、その人の気持ちを考えることが困った時の第一歩になります。 帰宅願望は薬で解決するものではありません。職員の知識や技術で十分に対応することのできる症状です。行動の裏に隠された本当の想いを汲み取るということを忘れず、臨機応変に対応しましょう。

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