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認知症の為に不穏になってしまう利用者の対応は難しいですよね。対処法について話し合いを何度も重ね、ようやくたどり着いた対処方法が結局間違っていると、介護職員としては結構落ち込んでしまいます。逆にたどり着いた対処法がうまくいき、不穏が落ちついた利用者を見ると自分の事に喜びを感じられるでしょう。今回は認知症による不穏の対処法として、趣味活動を取り入れた時のお話になります。

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ご近所トラブル!被害妄想で引きこもりがちに

サービス付き高齢者向け住宅に入居しているBさん(女性)は認知症があり、「隣の部屋の女の人が私の悪口ばかり言う」と度々不穏になってしまう人でした。認知症としての記憶障害は強くないのである程度話しをすれば理解できるレベルなのですが、いざ被害妄想が出てしまうとまったく話が通じなくなってしまう症状が見られます。認知症で被害妄想がある人は居室から出る事を拒んでしまい、職員が部屋に入る事も嫌がるようになってしまいます。理由としては隣の女の人が、「あなたの所にばっかり職員がいくわね」と嫌味を言われる事だと言うのです。

優遇している事はないし、時間で他の入居者にも声を掛けている事はその都度伝えますが聞く耳は持たず。「ほら、また見られるから!」と、最後は押し出すように部屋から出されてしまうのです。

もちろんお隣がBさんの悪口を言っている事実はありませんし、角部屋なので隣の部屋は一つしかないのですが男性が入居しています。行事やレクレーション、機能訓練等も「隣の女の人がいるから、」と、参加を拒否して部屋に閉じこもりがちになっている状況が何か月も続いているのでした。

趣味を生かして笑顔で生活できるように!

私はどうにかBさんの閉じこもりを解消しなければますます認知症や不穏が強くなってしまうのではないかと思い、Bさんの生活歴の情報を見直していると、「習字や生け花が得意」と書いてありました。ご家族が面会に来た時にも話を聞き、「毎週欠かさず通っていた」と話されたので、昔使用していた道具が家にあれば持ってきてほしいと伝え、後日持って来て頂いたのです。

道具は揃いましたが、どうしたら書いてくれるのか考えました。声の掛け方を一つ間違えてしまえば、「やりたくない」と言われてしまうと思ったからです。

最初から習字の行事に参加してもらうような声掛けはやめ、行事内容等を大きな紙に書いてもらうよう話しました。Bさんも部屋で書くならと承諾して頂き、「カラオケ大会!」と書いてもらう事が出来ました。Bさんが書いた紙を行事を行うフロアに張り出すと、他の入居者は達筆な字に対して「素晴らしい!」「上手だねぇ、誰が書いたんだい?」と絶賛。

Bさんにも皆が上手だと言っていた事を伝えると、照れくさそうに「そうかしらねぇ」と笑顔が見られるようになりました。私は定期的に行事のタイトルや、内容などをBさんに書いてもらうようにしました。Bさんも部屋で昔のように習字に熱中するようになり、「隣の女の人」の事については一切話さなくなったのです。

自分を取り戻す為のきっかけが大事

Bさんは少しずつ行事にも参加するようになっていました。私は新しい行事内容として習字を取り入れ、Bさんを誘うようにしてみたところ、拒否なく参加してくれたのです。行事のタイトルを書いてもらう事を初めてお願いしてから数か月。Bさんは施設で行う行事のほとんどに参加するようになり、他者とも談笑している姿を見て自分の事のようにうれしかったことを覚えています。

きっとBさんは昔からずっと行ってきた習字という趣味を通して、自分の生きがいや喜びを取り戻したのです。「居場所」を取り戻すことが出来たBさんは自然と自信もついていったのでしょう、妄想を訴える事がほとんどなくなりました。きっかけは何でも良いのです。入居者の人が自信をもって施設で生活をする事が出来れば、不穏は減少することを学んだ体験でした。

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