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介護の現場では「Aさんはいま、不穏だから気を付けて見守りしてね」とスタッフ同士で情報共有することがあります。では改めて「不穏」と何なのでしょうか?

認知症による「不穏」なのか、他の病気からくる「せん妄」ということも考えられます。認知症の方の不穏とせん妄を見分けるのは難しいことですが、対処の仕方は変わってくるんです。

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認知症だけじゃない、不穏状態

不穏とは字の通り穏やかではない状態です。

認知機能に障害があると不安になり、周囲に対する警戒心が強まって、少しのことで怒り出したり、興奮して大声を出したり、暴れたりする状態をいいます。認知症だからみんな不穏になるというわけでもないです。逆に認知症でないから不穏にならないわけでもありません。

認知症だから不穏になるよねと結びつけられません。その状態の前後をしっかり観察する必要があります。

不穏状態にどうやって対応するか

急に目の前で暴れたり大声を出されたらビックリしますね。そんな時こそ介護者は冷静にならなければなりません。決して同じような感情にならないことです。

何に対して暴れているのか?何に対して大声をだしているのか?分析をします。言動をしっかり見ていてください。その言動の中で転倒のリスクがあったり、他の方に危害を加えたりしていないか注意が必要です。

不穏になっても、落ち着いて対処法を探す

以前、A氏アルツハイマー型認知症の方が、急に大声を上げて「こらー!こら!」と怒りの感情を表したのです。スタッフは「どうしましたか?」やや斜め前から、座っておられたので自分もしゃがんで同じ目線で声をかけました。声をかける目線や角度も大切です。真正面から声をかけると威圧感を感じる人もいます。もちろん後ろから声をかけるなどは一番良くありません。表情も大切です。同じ怒りの表情ではなく穏やかな表情で声をかけます。その後は話を聞きました。その時は話を聞いている間に話がそれて落ち着きました。

また、別の利用者は脳梗塞後遺症で四肢麻痺(足手ともに体が固まり麻痺して少ししかうごかない)で認知症の診断はありませんでした。オムツ交換の時に泣いてしまう方がいました。そこで、歌うことが好きなことから、歌を歌いながら介助をしてみました。すると泣くどころか、にこやかに一緒に歌ってくださいました。歌っているうちにオムツ交換も終わりました。オムツ交換が終わったら「またね」とまで言ってくれたのです。不穏になった時にその方が不穏にならない方法を探します。何が好きか何をしたら喜んでいただけるのか日々観察することが必要です。

認知症と区別がつきにくい「せん妄」って?

せん妄はある種の意識・認知機能障害を呈する状態で診断名です。

せん妄の症状としては見当識障害(時間や季節、場所などの理解が出来ないこと)、記憶障害、注意力障害に障害があったり、時間によって覚醒度にムラがあることが挙げられます。「認知症=せん妄」ではありません。

せん妄の症状は認知症の症状とよく似ています。しかし、認知症の場合は徐々に症状が現れますがせん妄の場合は急に症状が現れるのが違いです。また、認知症は悪化しますが、せん妄の多くの場合症状は一過性のもので、原因を取り除いたり治療をすることで改善します。

過活動型せん妄

普段の活動が活動的になり、興奮や幻覚、昼夜逆転などが見られます。

低活動型せん妄

過活動型と逆で、普段の活動が低下し、会話が減ったり、無表情、無気力が挙げられます。

混合型せん妄

過活動型と低活動型が混在している状態です。

これらの原因は病気によるもの、高齢になって脱水や感染症によるもの、入院や施設入居などの環境の変化によるものなどがあります。

せん妄状態にどうやって対応するか

不穏行動と違って突発的に症状がでるのが特徴です。まずは無理に反論せず見守ることです。穏やかに声をかけ不安を取り除いて差し上げましょう。また、薬の影響も考えられるので、主治医に相談してください。

以前、レビー小体型認知症の方が1週間ほどで急に活気がなくなってしまったんです。食事中もぼーっとして声をかけても目を開けない状態になり、原因が分からず心配でした。しかし、訪問看護から主治医へ相談をしたところ、内服を変更しました。すると、ビックリするほど以前のように活気が戻ったので、介護職員みんなで喜びました。その日から食事も完食し、体重も元に戻りました。薬や環境、病気の与える影響は大きいことを実感した経験でした。

違いを見分けるには、利用者さんの様子を観察

不穏とせん妄症状が似ていることもあります。まずは突発性なのか徐々に症状があるのか見きわめて、声のかけかたや表情に注意しましょう。

  • 前後の表情や言動に注意する
  • 暴力行為などの恐れがあれば、危険のないように注意する
  • 穏やかに声をかける
  • 専門職と話して、何か影響がないか考える
  • 環境や病気などで最近変わったことがないか考える

不穏もせん妄もその都度TPOによって対応方法は異なります。答えに正解は無いかもしれません。でも、しっかり向き合って状態を良く観察し何かよい方法があるのではないか日々考えることが必要です。たくさん考えて対応して、笑顔を見せてくれたら時に介護者も一緒に笑ってくださいね。

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