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認知症の介護は介護職員でも難しいですよね。その原因の一つに「周辺症状」があります。食事拒否や入浴拒否、徘徊や不穏等、どのように対処すればいいかわからないと感じたことはありませんか?中でも落ち着きがなくなったり、ソワソワしたり、部屋の中を歩きまわったりする「不穏」は日々の介護の中でもよく対処することが多いのではないでしょうか。同じ対処をしても不穏が治まる人もいれば、治まらない人もいたりして対処の方法に悩んだりしますよね。

不穏がおこる原因は一人ひとり違い、その対処方法も様々ですが、そのメカニズムを知っているだけでも、不穏に対しての対処方法がわかりやすくなります。そこで今回は不穏がおこる原因や対処法を原因別にお伝えします。

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「不穏」はなぜおこるの?

不穏が起こる図
まずは不穏がおこるメカニズムです。これは不穏だけでなくその他の周辺症状にも当てはまります。「認知症」という病気が、中核症状である「記憶障害や判断力の障害」をひきおこします。そこに身体症状や周りの環境、介護者の接し方や本人の性格などの要因が加わることで、「不穏」などの周辺症状につながります。このように聞いても少しわかりにくいですよね。それではあなた自身に当てはめて考えてみましょう。まずは下記の事を想像してみてください。

認知症の人の気持ちを想像してみよう

  1. 記憶障害
    あなたは目覚めると、知らない場所に寝ていました。周りを見渡しても見覚えのある物は何もありません。
  2. 介護者の接し方
    「ここはどこだろう?」と考えていると、知らない怖そうな人が来て「ご飯の時間です。食堂に行きますよ」と声をかけてきました。
  3. まわりの環境
    席に座り周りを見渡すと向こうでおじいさんが「助けてくれー」と叫んでいました。
  4. 身体症状
    なんだか怖くなってきました。(本人の性格)さっきからなんだかお腹も痛いような気がします。

さてあなたはどうしますか?知らない場所に怖そうな人がいるので、怖くなって大声で叫ぶかもしれません。お腹が痛いのでとりあえずトイレを探してウロウロするかもしれませんし、怖いところに連れてこられたと思って泣きわめくかもしれません。

この行動が「不穏」などの周辺症状といわれるものなのです。この場合、記憶障害で「知らない場所」にいると思い、「知らない怖い人」や「叫ぶおじいさん」の存在で不安になり、「腹痛」で「トイレに行かないと」と行動を起こすきっかけになったと考えられます。このように考えるとなぜ「不穏」が起こるのかわかりやすくなりますよね。それでは不穏が起こった時の対処法をお伝えしていきます。

対処法1.じっくり話をきいて、安心できる雰囲気を作る

まずは認知症の人の話をじっくりと聞いてみましょう。その際は認知症の人が安心できるように優しい表情で優しく「どうしましたか」と声をかけるようにしましょう。その際背中や肩、腕などに優しくボディタッチしながら話を聞くのも安心感が得られやすいので効果的です。何か不安な事があって不穏が起きている場合など、話を聞くだけでも落ち着くときもありますし、話を聞くことで不穏の原因がわかるときもあります。

また、十分に話を聞いたら、徐々に別の話題の話をしてみましょう。その際は認知症の人の好きな話題(例えば家族の話や仕事の話など)が効果的です。好きな話題を楽しく話すことで、不安な事を忘れて不穏が落ち着くときもあります。

対処法2.身体症状に異変はないか確認してみる

話を聞いても落ち着かない場合は多々あります。そのような時には身体症状に変化はないか以下の事を確認してみましょう。

  • 便秘が続いていないか
  • 便がでる時間帯ではないか
  • 熱発や風邪症状などはないか
  • 食欲などはあるか
  • 水分摂取ができているか

認知症の人は身体に異変があっても上手く言葉にできないために、不穏などの症状となって現れることがあります。便が出そうでソワソワしている場合はトイレに誘導してみたり、便秘が何日も続いている場合は看護師に相談したりしてみましょう。何かの病気などの可能性はないか、熱発や風邪症状がないか、食欲はあるかの確認をしてみましょう。また、水分摂取が出来ていなくて不穏が現れる事もあります。日頃の水分摂取が出来ているかもう一度確認し、水分摂取が出来ていない場合はお茶などを勧めましょう。

対処法3.周りの環境を確認してみる

不穏の症状が現れた時は周りの環境を確認してみましょう。大音量で音楽やテレビの音が流れていて騒がしくありませんか?職員が忙しそうに歩き回っていませんか?部屋の温度が暑すぎたり、寒すぎたりしていませんか?周りが騒がしいと認知症の人は不安になったり、不快感を上手く訴えることが出来なかったりするので、不穏の症状が現れてしまいます。音や温度を調節するなどして、認知症の人が過ごしやすい環境を作ってみましょう。

また、職員が忙しそうにセカセカと歩き回っていないか、もう一度見直してみましょう。

対処法4.職員の声掛けや態度はどうだったか確認してみる

認知症の人に声をかける時ぶっきらぼうに声掛けをしていませんか?笑顔で接することができていますか?忙しさのあまり顔が引きつっていたり、イライラしたりしていませんか?認知症の人は職員の態度に敏感です。職員が忙しくしていると、認知症の人まで不安になってしまい不穏になってしまいます。思い当たる時には、今一度声掛けや態度を見直してみましょう。

介護の仕事は毎日忙しく、大変ですよね。イライラしてしまうこともあると思います。そのような時には、一度バックヤードで一口甘いものを飲食したり、鏡に向かって笑顔を作ってみたり、1分でもいいので気持ちをリセットしてみてください。また職員同士でも、顔が引きつっていたり、忙しそうにしていたりした時には「リセットしておいで」とお互い声を掛け合えたらいいですね。

対処法5.認知症の人の過ごし方を確認してみる

何もせず、ぼーっと過ごしていると認知症の人は自分の居場所がわからなくなり、「自分はここにいてもいいのだろうか」「家に帰らないといけない」と不穏になることがあります。そのような時には認知症の人の過ごし方を見直してみましょう。好きなテレビを見てもらったり、雑誌や本を読んでもらったり、塗り絵や将棋など好きな活動を楽しんでもらったり、何か取り組める活動を提供してみましょう。

何か集中できるものがあると「自分はここにいても大丈夫なんだ」と感じられ、不穏も少なくなるでしょう。またお世話好きな人には何かお仕事などを頼むことも効果的です。タオルたたみや台拭きなど簡単な作業をお願いしてみましょう。お願いをされることで認知症の人は「まだ自分を必要としてくれる人がいる」「自分も人の役に立つことができる」と感じられ、自分の居場所だと感じやすくなります。

どのような対処をしても、どんなに話を聞いても落ち着かない時もあります。その際は、不穏になった時間や経緯を詳しく記録に残すようにしてください。記録に残すことで、不穏になる時間帯や原因が何かわかるかもしれません。そして一番大事な事ですが、様々な対処をして落ち着かない時でも、あなた自身を責めないようにしてくださいね。

不穏を軽減して穏やかに過ごしてもらうには

  • 認知症の人の話を聞いて原因は何か探ってみる
  • 優しい表情で、スキンシップを取り入れる
  • 便秘や発熱、風邪症状など身体に異常はないか確認する
  • 音や温度は適切か、周りの環境を確認する
  • 職員の忙しさが顔や態度に出ていないか確認する
  • 集中して取り組めたり楽しんで取り組めたりする活動を提供する

不穏の原因は一人ひとり違って不穏症状が現れると、なかなか落ち着かなくてどのように対処すればいいか、いつ落ち着いてくれるのだろうかと不安になってしまいますよね。あきらめずに細かく観察してみてくださいね。また不穏に対応する職員はストレスを感じやすいです。不穏の時間が長い時には職員同士声掛けをしながら、ストレスとならないように対処してくださいね。

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