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介護現場で働いていると、「不穏が強い利用者」と聞くと少しドキッとしてしまいますよね。一度不穏になってしまうとなかなか落ち着きを取り戻すことが出来ないですし、もしかしたら不穏状態を夜まで引きずってしまうかもしれません。特に認知症の利用者に起きやすい不穏ですが、ひどい状態が続くと1日中休まれないこともあるのです。今回は入院して環境変化に対応しきれず、不穏が出てしまった時の対応方法をお伝えします。

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嘘でしょ?しっかりしてた利用者が認知症に?

Aさん(女性)は介護付き有料老人ホームに入居していて、とても穏やかな人でした。行ことやレクレーション等にも進んで参加し、他の利用者との会話等をすごく好み、自分から積極的に話しかけ楽しく施設で過ごされていたのです。しかし持病が悪化してしまい入院を余儀なくされてしまいました。

始めは1週間から10日程度で戻ってこれるだろうとのことでしたが、結局病院から施設に戻ってきたのは1ヶ月半もの時間がかかってしまったのです。病院側からの書面では、「体調はすっかり回復している」とのことでしたが気になる内容が一つ。「不穏がとても強い」と書いてあるのです。Aさんが施設にいる時には自分のことは何でも行い認知症のような症状が見られることはありませんでした。私達職員は「Aさんが不穏?認知症じゃないんだから誰か違う人と間違えているんじゃない?」と、あまり気にしていなかったのです。

不安な気持ちが抑えきれない

Aさんがご家族と一緒に施設に戻ってきました。Aさんは入院前と変わらず笑顔で戻ってきたのですが、ご家族からは「一緒にいる時はいいんですけど、誰もいないとナースコールをずっと押していたようです」と、不安そうな顔で話されたのです。

入院前のAさんはコールを鳴らすことがほとんどなかったので、「やっぱり認知症になってしまったのかもしれない」と、私も少し気になるようになりました。ご家族が夕方施設から帰られると、気になっていたことが実際始まってしまったのです。Aさんの居室からナースコールが鳴ったので私は急いで居室に向かうと、「家族は今度いつ来るの?」「どうして誰もいなくなってしまうの?」「一人じゃ不安なの」と、緊急性の低いナースコールが頻回になったのです。とても対応しきれない状態になっていたため私はAさんに、「寂しいなら交流スペースに○○さん達がいますよ」と声かけたのですが、「きっと相手にしてくれないわ」と、昔ように進んでいくこともありませんでした。

落ち着いた生活を取り戻す!職員と一緒に交流の機会を増やしていく

退院してきた日は夜間帯もコールが頻回で、内容としては「寂しい」と言ったような物ばかり。緊急性がないものしか訴えて来ない為夜勤者もとても大変だったと報告がありました。このままではいけないと対応方法を検討し、どのようにAさんと接していくかを考えました。

病院に入院となると、どうしても生活の場から治療を行う場所になってしまう為、環境の変化に対応しきれなくなり精神的に「不安」が大きくなってしまいがちなのです。Aさんは居室に伺いお話をしている時はとても落ち着いていました。普段通り話が出来るため、認知症というより環境の変化に対応しきれていないことが要因なのではないか?ということがわかってきました。

本人はあまり居室からでて他者と交流するのが嫌になっていたのですが、やはり他者との交流を職員が間に入って対応していこうと決まったのです。交流スペースに一緒に行くと、退院してきたAさんを見て「おかえり」「待っていたわよ」とねぎらいの言葉をかけてくれました。最初は久しぶりの交流にAさんは戸惑ってしまい、10分程度で「部屋に戻りたい」と訴えられたのですが、日にちが経つにつれ、少しずつ昔のように話をするようになりました。

職員の対応次第で良くも悪くもなってしまう

交流を職員が促すようになってからも、ナースコールは続いていましたが、交流の対応を始めてから2週間くらい過ぎた頃には、コールはほとんどなくなり入院前のAさんに戻っていったのです。いつのまにかAさんに声掛けをしなくても、自分から交流スペースですでにお話ししている所もみかけるようになり、「自分の生活」を取り戻したのです。

我々介護職員は普段と違う行動やおかしな言動があるとすぐに「認知症かもしれない」と思ってしまうのですが、実は体調や環境が変わり一時の精神不安が前面に出ているだけの場合もあります。もしかしたらAさんのコール頻回をあきらめた対応を私たちがしていたら、本当に認知症になっていたかもしれません。入院等で長期的に環境が変わった場合には、なるべく早い段階で施設の生活を思い出させてあげる対応がとても重要なことだと感じた体験でした。

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