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介護施設において重要な支援の一つに着脱の介助があります。衣服が汚れた場合や朝や夜の着替え、入浴前後など着替えなければいけないシチュエーションが多数あります。そういった生活に欠かせない部分である着脱の介助を拒否された場合はどういった言葉がけが必要でしょうか?

そもそも、拒否をしている理由は何なのでしょうか?原因を考えなければお互いにストレスです。きちんと、着脱介助の拒否の原因を解明させ、支援を行う人も受ける人もスッキリした気持ちで着脱介助が行えるような環境を整えましょう。

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自立支援の方向性

全ての介助をスタッフが行ってしまえば、介助を行うのも楽ですし介助を受けるのも楽です。しかし、支援の目的はそうではありません。きちんとやれることは自分でやってもらわなければなりません。

なぜなら、ADLがどんどん低下していってしまうからです。ADLとは日常生活動作のことで、食事や排泄、もちろん着脱も含まれますが日常における生活を営むための行動を指します。ご存じの人も多いのではないでしょうか。生活動作を自分自身で行うことを怠ってしまうと、どんどん生活の質や自分の能力が落ちていきます。認知症を患っている人にとって、症状を悪化させるなどとても悪影響を及ぼします。

では、どのように自立支援を目指せばいいのでしょうか。拒否の理由も考えながら実際の工夫を考えてみます。

拒否の理由

そもそも着脱介助の拒否の理由とは何でしょうか?その人の性格や生活背景、現在の状態などを考えればさまざまな理由で拒否につながります。現場でよくあるシチュエーション別に考えていきます。

1.同じ服ばかり着ようとする

事例として、同じ衣類ばかりを着用しようとする人について考えていきます。

なぜ同じ服にこだわりがあるのでしょうか?その服を気に入っているから、着心地が良いから、着やすいから、などさまざまな理由が考えられますね。どんな理由であれ、その人にとっても周りにとっても衛生的な問題が発生します。

しかし、常に同じ状態であることは人に安心感を与える場合もあります。同じ服を数枚準備するのも手段ですが、変化のある生活も楽しんでほしいです。

具体的なカ所の汚れを説明して着替えてもらうのがいいですね。「お袖元が汚れていますので洗わせていただいてもよろしいですか?」などの声かけを行いましょう。また、中には汚れを気にしない人もいるでしょう。そういった人の場合にはボタンが取れている、ほころんでいるなどの声かけがいいかもしれません。「すてきなお洋服なので長く着ていただきたい」という気持ちを込めて丁寧な声かけを行いましょう。

それでも拒否をされる場合は時間を置いて声かけをしましょう。継続した声かけは混乱の原因です。

2.介助の加減

いくら残存機能を引き出すと言ってもスタッフの支援の時間も限られています。

本人主体という点で着目し、着替えは手伝わせてもらえるのか、また一人で着替えたいと思っているのかの意思確認は必ずしてください。もし、後者であった場合には時間は限られていますが目一杯、付き添う事も大切な支援です。

しかし、何度も言いますが限られた時間の中での支援ですので、ある程度の時間を見て「お体が冷えますので、少しですがお手伝いさせていただいてもよろしいでしょうか?」などの言葉をかけてください。ボタンをかけるということや、背中のよれを整えるなど、具体的にどの部分をお手伝いするかを伝えると、分かりやすくて安心できますね。

では、全介助を頼まれた場合はどのように残存機能を引き出すのでしょうか?最初の部分をお手伝いして「ボタンをつけていただけませんか?」「背中の部分がしわになっているので伸ばしますか?」など声かけを行い、自分で着替えてもらうように誘導するのも一つです。

3.寒さによる拒否

夏も終わり、どんどん体が冷える季節になりました。人にもよりますが、高齢者は寒さには敏感で冬を苦手に思う人も多い傾向にあります。服を着替えるのが億劫なのは利用者の人だけではありません。そういった拒否に対応するには、どうすれば良いでしょうか?

まず部屋を温め、その旨を伝えます。一緒に暖房のスイッチを入れることも効果的です。部屋が温かいという情報は、利用者の寒さに対する不安を取り除く効果があります。部屋の温度が高い状態で拒否をされたら、今着ている服よりも厚手の服を用意したことを伝えると納得してもらえる可能性が高くなります。

寒さに対応しているので大丈夫だという旨を伝えると安心してこちらの言葉に応じてくれます。

4.すぐに脱衣してしまう人

他の事例に、すぐに服を脱いでしまう人もいます。

理由もなく脱いでいるのでしょうか?暑くて脱いでいるのでしょうか、汗をかいてしまって脱いでいるのでしょうか、着心地が悪いのでしょうか、それともその人の生活背景から考えられる行動なのでしょうか。

理由は多様に考えられますね。

原因を突き止めるには、様子を観察することが大切です。様子観察によって見えてくるその人の行動パターンを理解し、しっかりアセスメントをすることが重要です。

どうしても服を着てもらわなければいけない場面以外では、無理に着衣を促すと混乱の原因です。部屋を暖めるなど、環境を整えることを優先させた方が解決する場合もありますので、臨機応変に対応してください。

公の場で、脱衣してしまう場合は肩からかけられる薄手のカーディガンなどで対応しましょう。「肩が冷えると風邪をひいてしまわれますので、肩だけでも温めていただけますか?」などの声かけを試してみてください。

5.介助中に怒りを買ってしまった場合

まず、大前提として本人の主張をきちんと傾聴できていますか?無理やりの介助になっていませんか?

無言で衣服を整えることも相手に不快感を与えます。また、指摘ばかりでも怒りを買ってしまうでしょう。高齢者施設で勤めているスタッフの相手は年上の人です。きちんと尊敬を示しましょう。その上で「〇〇さん、ボタンが掛け違えているみたいですが、ご自分で整えられますか?」など言葉がけを丁寧に行いましょう。鏡などを利用して実際に見て確認してもらう事も効果的です。

自分で整えるのが難しそうな場合は、相手を敬いつつ声かけをして手伝っても良いかの許可を得ましょう。

声かけをする際は「ボタンをつけるのが固そうに見えるので、よろしければお手伝いさせていただいてもよろしいでしょうか?」など、衣類の不備を指摘するような言葉が相手にとっても快く受け取ってもらえます。

もし、怒り出されてしまった場合はきちんと失礼をわびることも必要です。

尊敬と丁寧な言葉がけ

きちんと尊敬を示し、介助をしてもいいかの許可を得ることはとても大切です。繰り返しますが、無断で介助を行うことは目上の人に対してとても失礼な行為です。

また、相手の意向に沿うことも求められます。スタッフという立場である以上は、その人の生活の一部として寄り添うことが大切です。乱雑な言葉がけも控えるようにしてください。分かりやすく、端的な言葉を丁寧な口調で話すことで、相手の混乱も防ぐことができます。

拒否の原因を探ることは、より良い支援を行うために必要です。様子観察、アセスメントを定期的に行うことで、その人の現在の状況を把握し、どのような問題を抱えているのかを明確にできます。問題を取り除くことにより、こちらの言葉に耳を傾け応じてもらえます。

まずは丁寧に接することを心がけてください。思いは相手にもきちんと伝わります。言葉や態度に表すことで相手に伝わりやすくなります。

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