デイサービスでのサービス提供に必要な通所介護計画書の書き方の基本は、なぜその情報が必要なのかを考えながら様式に沿って情報を記入していくことです。通所介護計画書は、利用者の状態や提供するサービスについての情報を職員間で共有するだけではなく、利用者家族へサービス内容を説明する役割も持っています。そのため、専門用語を使わず分かりやすい言葉を使用します。
目次
デイサービスに必要な通所介護計画書の書き方
通所介護計画書(以下計画書)は、デイサービスの生活相談員や介護職員が計画担当者として利用者一人一人に作成します。 計画担当者は、計画書に援助の目的や計画書の有効期間を記載して、ご利用者から同意欄に署名をもらいます。デイサービスの事業所によって、書類の見た目が異なる場合がありますが、記載されている内容は、共通しています。
様式に則って記入すると通所介護計画書を作成できます
計画書は、 全国で統一された様式はありません が、氏名や介護度、援助目標やサービス内容を記載します。
介護ソフトを導入している場合、計画担当者はソフト内に計画書の様式が入っていますので、表の項目にそって計画していきます。

なぜその情報が必要なのか考える
計画書には援助の目的やサービス内容が記載されますが、なぜその情報が必要なのでしょうか。
そもそも介護保険のサービスを利用するには、必ず目的が必要です。
目標は、ケアマネジャーがケアプランに記入し、その達成手段としてデイサービスを位置づけます。
計画担当者は、目標をクリアするために援助計画を設定し、サービス内容を決めます。
つまり、 計画書の内容について、利用者や家族、職員が共有できていないと、デイサービスで統一した対応が出来ず、デイサービスを利用する意味がなくなってしまいます。
通所介護計画書の役割
通所介護計画書の役割は、ケアマネジャーのケアプランにある「短期目標」達成のために、デイサービスでどのようなサービスをおこなうのか明確化することにあります。
ここからは、通所介護計画書の内容や書き方について、具体的な事例をもとに説明します。
75歳の妻と二人で暮らしているが、妻に負担をかけたくない。デイサービスで機能訓練をしながら、今後も身の回りのことは自分でおこないたい意向がある。特に排泄介助をうけることに精神的な負担があるので、自分でトイレに行って用を足せるようになりたいと思っている。
本来デイサービスとは、要支援、要介護の高齢者に対して、入浴ケアや食事提供、レクリエーションや機能訓練を日帰りで提供する事業です。Aさんは、基本サービスを受けながら、計画担当者と個別の課題を話し合い、今一番困っていることなどを中心にアセスメントをおこないました。

職員間で情報を共有する
デイサービスは、生活相談員や介護職員、看護師など複数の専門職がチームで働いています。計画書は、計画担当者が立案しますが、サービスを実施する上で、職員同士の連携は欠かせません。
Aさんの計画書にあるサービス提供上の留意点に、次のような記載があります。
可動域制限があり、他動時に痛みもあるので、介助する際には注意が必要。
職員は「他動時に痛みもあるので、介助する際には注意が必要。」と書かれているので、歩行する時や、送迎車から乗り降りする際に、注意しなければなりません。
また、「目標達成のための具体的サービス内容」にある「午前中に機能訓練の実施」には、注意事項として入浴後のため体調管理をしながらおこなうと記載されています。ですから、必ずしも利用のたびに機能訓練を実施する必要はなく、「体調がすぐれないときには、機能訓練はおこなわない」ということを、職員全員で共有しておくことが重要になります。
家族にサービス内容を理解してもらう
計画書の内容は、家族にも理解してもらう必要があります。
なぜなら、 デイサービスで実際どのようなケアがおこなわれているのか、家族には分からないからです。 計画書を作成して、ご利用者や家族とサービス内容を共有する理由は5つあります。
- デイサービスの利用目的を明確にするため
- 対応の根拠を説明し理解を得るため
- 具体的なメニューを示して、自宅で実践してもらうため
- 利用料金の根拠を示すため
- ご本人が間違った情報を伝えて、家族が誤解しないようにするため
サービスの開始時に、ご利用者へ説明することはもちろん、目的やメニューが変更になる場合には、あらためてご利用者と家族に説明をおこない、同意を得ることが大切です。
介護の質を向上させる
計画書には、「解決すべきニーズ」「目標」を記載する項目があります。ご利用者は、介護保険を利用してこうなりたい、という目的を持っています。サービス事業所は、最終的に、ご利用者とその目的を実現するために、それぞれの役割を果たします。
解決すべきニーズ | 長期目標(6ヵ月) | 短期目標(3ヵ月) |
自分でできる日常の動作を維持したい | 自分ひとりでトイレに行き、用を足して戻ることができる | 自室からトイレまで(8m)、歩いていくことができる |
この項目は、ケアプランの第2表にある項目をそのまま転記します。
つまり、 ケアマネジャーの立てたケアプランの短期目標と通所介護計画の援助目標は同じ内容になる ということです。
目標を達成するために位置づけられたサービス事業所は、ご利用者が困っていることや支援方針を検討します。
事例の場合、ケアマネジャーは、Aさんに対して、「自分でできる日常の動作を維持したい」というニーズを設定しました。そのための3ヵ月目標として「自室からトイレまで歩く」が、記載されました。
デイサービスの計画担当者は、「自室からトイレまで歩く」という短期目標を受けて、計画書に、次のサービス内容を設定しました。
サービス内容 | 具体的な対応・注意点 |
午前中に機能訓練の実施 |
(入浴後のため、健康管理をしながらおこないます) |
トイレ動作の一部介助 |
(体調により車いすを使って移動します) |
計画書で示されたサービスは、「機能訓練の実施」と「トイレ動作の一部介助」の2つです。
計画担当者にとって、記入したサービスの質を向上させるためには、「具体的な対応・注意点」の欄に、細かく実施方法を記入し、職員の対応漏れを防ぐ工夫が必要となります。また、具体的な実施方法を何回、何メートル、など数字で記載しておくと、目標が分かりやすく、職員の対応を均一化することにつながります。
また、計画書は、ご利用者や家族はもちろん、他の専門職に対して、サービス内容を示す役割があります。
つまり、ケアマネジャーは、ケアプランに掲げた方針にそってサービスがおこなわれているか、計画書で確認することができます。
通所介護計画書を書くときに気を付けるポイント
計画担当者が、計画書に慣れないうちは、どこに何を書いていいのか分からないかもしれません。しかし、計画書を書くときに、気を付けるポイントがいくつかありますので、次のポイントを参考にすれば、書きやすくなります。
利用者家族が見て理解できるように書く
ご利用者や家族が見て、理解できる計画や表現で書くように心がけましょう。
デイサービスで働いていると、専門用語で情報共有することが当たり前になってきます。
しかし、ご利用者や家族に渡す書類で使用することは、ふさわしくありません。
なぜなら 計画書は、職員やケアマネジャーのために作成するのではなく、ご利用者や家族に対して、ご利用者にとって必要なケアは何か、を理解してもらうために作成するもの だからです。
ですから、ご利用者が「計画書が専門用語で書かれているので、意味が分からない」ということは避けなければなりません。
そのためには、一度出来上がった計画書を、事業所内の職員で確認しあい、分かりにくい表現や専門用語がないか、チェックすることをお勧めします。
目標は具体的に分かりやすく設定する
目標は具体的にわかりやすく設定しないと、ご利用者はもちろん、サービス事業者までもが、「何を目指していいのか」を見失ってしまいます。そのため目標は、ご利用者自身が「これだったらできる」と思える記載であることが重要です。

計画書における設定期間は、ある程度サービスを利用して、体調や生活状況を評価する期間になりますので、おおよそ1ヵ月から3ヵ月の間で設定します。ですから、その期間で達成可能なメニューを記載することが重要です。
例えば、Aさんの場合、解決すべきニーズが「自分でできる日常の動作を維持したい」ということなので、段階的にニーズに近づけるための目標でなければなりません。
つまり、「段階的に」ということは、3ヵ月ごとに目標を設定し、長期間達成を積み重ねることで、長期目標やニーズが最終的に達成できるというイメージです。

ですから、短期目標に「一人でトイレに行ける」と記載しても、身体能力をふまえたときに、3ヵ月では不可能であれば、3ヵ月でできる「程度」のメニューに修正する必要があります。
最初の3ヵ月は「両手で壁伝いに途中で座りながら歩ける」、次の3ヵ月は「壁伝いに歩ける」、次の3ヵ月は「手すりをもって歩ける」と、身体機能や環境面を考慮しながら設定することが重要です。
また、目的を達成することは、利用者の自立意欲の向上につながります。短期の期間ごとに達成気分を得ることで、ご利用者はモチベーションを保ちながら取り組むことができます。計画担当者は、短期間で達成できる身体能力があるか、段階的な計画設定かどうか、確認しながら作成していきます。
なお、注意しないといけないのは、目標にサービス名を記載してはいけない、ということです。
例えば、「リハビリをする」といった目標は、達成したかどうか評価することができません。ケアマネジメントの考え方では、クリアしたい目標のために、手段としてリハビリを設定します。
ですから、1ヵ月ごとに「トイレに行けたか」を評価すべきところを、「リハビリをしているか」という誤った視点で評価してしまいます。その結果、ご利用者はトイレに行けるようになったにもかかわらず、いつまでもデイサービスでリハビリをし続けることになってしまいます。
専門用語を使わずに書く
計画書は、ご利用者のために作成するので、専門用語は使わずに書きます。
なぜなら専門用語は、特定の業種や職種だけで使用されるもので、略語や英語なども含まれた分かりづらいものだからです。職員同士では、情報を簡単に共有できるので、つい便利に使うことが当たり前になっています。
ところが、専門用語は、ご利用者や家族だけでなく、自分の事業所以外ですら伝わらないことがありますので、注意しなければいけません。
いくら計画書がご利用者にとって有益なものであったとしても、相手の立場に立って、誰が読んでも分かりやすく書く、という視点が抜けていれば自己満足の書類でしかありません 。
曖昧な表現は使わない
計画書は、曖昧な表現は使わずに記入することが重要です。
なぜなら、計画担当者とご利用者は、設定した援助計画について、定期的に達成状況を確認する必要があるからです。つまり、ご利用者が計画に沿って取り組んだ結果、効果があったのか、なかったのか、客観的な視点で評価をおこなうためには、曖昧な表現では、評価をおこなうことは不可能です。

たとえばAさんの場合でみると、3ヵ月間の短期目標は、『歩く』ということが設定されています。右半身に麻痺があるAさんにとって、歩くことは最優先の課題ですが、身体能力を踏まえた上で、3ヵ月の期間でどの程度歩くことができるか、という事はとても重要です。
ですから、計画担当者は、自室からトイレまで歩く、というご利用者や家族に伝わるような記載をして、3ヵ月後のゴールを分かりやすく表現しました。
そして、8mという補足が記載されていますが、これには、自宅の構造が分からない職員に対して、具体的な歩行距離を統一するため、という意図があります。それによって、利用中に平行棒歩行を2往復する、という機能訓練メニューを設定することができます。
計画書や情報を具体的に記載することによって、ご利用者はプログラムに取り組みやすくなるだけでなく、計画担当者にとっては、3ヵ月後に評価がしやすくなる利点となります。
サービスの質が安定するように書く
計画書は、目標達成のために具体的なケアやメニューを記載するので、サービスの質が安定するように書く必要があります。
デイサービスでは多職種がチームとなってご利用者にかかわるので、職種によって対応が異なるようなことがあってはいけません。
では、どのような工夫をすれば、サービスの質が安定する書き方ができるのでしょう。
利用者の情報は詳細に書く
本人及び家族の希望 | サービス提供上の留意点 |
75歳の妻と二人で暮らしているが、負担をかけたくない。デイサービスで機能訓練をしながら、今後も身の回りのことは自分でおこないたい。 | 右上下肢の麻痺がある。 可動域制限があり、他動時に痛みもあるので、介助する際には注意が必要。 |
ご利用者の情報を得る方法は、ケアプランから収集する方法と、ご利用者に面接して収集する方法があります。いずれの方法でも、デイサービスでのサービスにかかわる情報や注意事項は詳細に聞き取り、もれなく記載することが大切です。
また、「本人及び家族の希望」に、自宅での生活状況や介護者の様子を記載しておくと、在宅介護の実情が分かり、援助方針を決める時の参考になります。
「サービス提供上の留意点」の項目には、デイサービスを利用する上での基本的な注意点やサービス内容を決める上でのポイントを記入します。
サービス内容は具体的に書く
サービス内容 | 具体的な対応・注意点 |
午前中に機能訓練の実施 |
(入浴後のため、健康管理をしながらおこないます) |
トイレ動作の一部介助 |
(体調により車いすを使って移動します) |
サービス内容を設定したら、具体的な対応・注意点を記載します。
ご利用者に対応する職員は、毎回同じとは限りません。 職員によって対応が異なったり、ケアに差があったりすると、設定期間に目標達成できないだけなく、デイサービスを利用する効果がなくなってしまいます。 そのため、対応や注意点は具体的に記載しておくことで、職員による対応のばらつきを防ぐことができます。
Aさんの場合は、機能訓練について、具体的に記載してあります。計画書には、平行棒歩行を2往復する、立座りの訓練をおこなう、とメニューが記載されているので、たとえ職員が違っても、何をどの程度訓練するのか、が見てわかります。また、それによって3ヵ月後、評価の際に、訓練効果の有無を検証することができます。
通所介護計画書は誰が見ても理解できる内容を意識して書く
計画書は、ご利用者や家族、職員がそれぞれの立場で理解できるように、分かりやすく書くことが大切です。 なぜなら、計画担当者は、ご利用者に対して、目標をクリアするための対応方法を具体的に示し、意欲の向上を促す必要があるからです。一方、職員やケアマネジャーに対しては、ご利用者にどのような課題があり、なぜデイサービスを利用するのかを記載することで、事業所の役割を明確にする必要があるからです。
そして計画担当者は、出来上がった計画が予定通り進んでいるか、ご利用者、家族に確認したり、事業所で観察したりすることも忘れてはいけません。
一連の計画書の作成から実施を通して、ご利用者、家族とデイサービスがコミュニケーションをとることは、お互いの信頼関係や事業所への安心感につながります。
ですから、ご利用者一人ひとりの希望を尊重しつつ、自立支援に向けたサービスが提供できるかどうかは、その旗印となる計画書が、ご利用者、家族にとって理解できる内容であることがとても重要になります。