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「この人に殺される!助けて!」と叫ばれたり、手助けをしたつもりが興奮して噛みつかれたり、認知症の症状があると暴言・暴力に悩まされることがあります。介護職であっても、突然の暴言・暴力には恐怖や不安を覚えます。高齢者の暴言・暴力は介助者を悩ませることから問題行動と呼ばれることもあります。利用者の気持ちを考え、汲み取ることはもちろん必要ですが、その上で、具体的にどのような対応をするべきなのでしょうか。明日から活用できる実践的な対処法をお伝えします。

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すぐに使える暴言・暴力への対処法10選

暴力

暴言を吐かれたり、暴力を振るわれたりすると怖いですよね。介護者も人間です。恐怖を感じたり、「どうしよう」と焦ったりします。落ち着かせようと思って声を掛けても聞き入れてもらえず、さらに激しくなってしまうこともあります。そういったときに、実際はどのような対応をすることが有効なのでしょうか。

1.頻繁に声をかける

認知症の症状により暴言・暴力が現れている場合、今から何をするのか、なぜここにいるのかということが分かっていない可能性があります。

何が起こるか理解できず、複数人が自分を取り囲んだら、怖いと感じるのも無理はありません。本当に怖くて、殺されるかもしれないと思うから本気で抵抗をしているのです。

頻繁に声をかけることで不安を軽減してみましょう。「今からお風呂に行きますよ」「服を着替えますからね」だけでなく「こっちの足の靴下を脱ぎますよ」「髪の毛をきれいにしていますよ」と自分の介助を実況中継してみるのも良いです。

高齢者とのコミュニケーションが続かない、話すのが苦手という人にはおすすめです。

2.できることは本人に任せる

介護職にとって全部を介助するのではなく、できるところは本人にやってもらうということは大事なことです。「ここができないんだけどお願いできますか?」「このやり方を教えてほしいんだけどお手本を見せてもらってもいいですか?」などと声をかけてみましょう。

利用者にとって自分自身が役割を持つということも大切なことです。残存機能を生かすという面からみてもできることはやってもらわなければなりません。

誰かにやられると納得いかないことでも自分ですることには納得ができるかもしれません。そうすると暴言や暴力の軽減につながります。

3.タッチングをしながら介助をする

利用者の体の一部に触れることをタッチングと言います。言葉を使わない、非言語コミュニケーションの一つです。

「触れる」という行為は幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンを増加させるため、タッチングには不安を和らげたり、安心感を与えたりする効果があります。タッチングをすることで「私に寄り添ってくれている」という感覚になります。

小さい子が泣いているときに背中をトントンとすると落ち着くのも同じことです。手を重ねたり、体をさすったりしながら「大丈夫」「どうしたの?」と声をかけると「あんた殺そうとしているんでしょ!」から「私殺されるんだわ…」と相談をするような態度に変わることがあります。

気持ちに共感をするようなタッチングを行いましょう。触れる場所も手、腕、背中など状況に応じて変えて反応を伺いましょう。

4.健康状態を確認する

「もーしんどいのに!」「えらいんだからやめて!」と言い暴力を振るう利用者がいます。いつものことだからと思うかもしれませんが、時には本当にしんどいのかもしれません。

興奮が収まったら熱を測ったり、血圧を測ったりして、健康状態に異常がないことを確認しましょう。

便秘気味で排便ができていないとイライラとしていることもあります。日々の排便状態はチェックしておくようにしましょう。

夏場には水分摂取に注意するかと思いますが、実は冬場も脱水症状には注意しなければなりません。寒さから飲み物が欲しくなくなるため、必要な水分を摂取できておらず、脱水気味になることもあります。コップ一杯のお茶を出して落ち着いてもらうと共に、水分摂取を促すのも良いでしょう。

5.味方役の職員を作る

「助けてー!警察呼んでー!」「この人に殺されそうになってるわー!」という訴えがある場合、介助をする職員の他にもう一人「どうされました?」「何があったんですか?」と利用者の味方になり声をかける第三者を用意するのも一つの方法です。

暴力を振るったり、暴言を吐いたりする程の興奮状態にある利用者は、周りが見えなくなっています。しかし、そこに第三者が入ることでハッとすることもあります。

介助をする職員はどうしても悪役のようになってしまいますが、悪役は職員が交代で行うことで精神的なストレスを最小限に介助を行うことができるでしょう。話をしているうちに落ち着く場合もありますので、暴言・暴力のある利用者の介助の場合は二人以上で行う方が良いです。

6.まずいと思ったら応援を呼ぶ

普段は一人で介助を行っているからと言って、暴言が激しくなったり、暴力を振るわれたりしたときにまで頑張って一人で介助する必要はありません。

介護職だって人間ですから暴言は傷つくし暴力は怖いですよね。「これはまずい!」と思ったら応援を呼びましょう。高齢者でも暴力は危険ですし、物を投げるといった行為があった場合大けがにつながることもあります。

責任感の強い人や努力家の人はどうしても「一人でなんとかしなくては」と抱え込んでしまします。新人職員の場合は「どうしよう、先輩には言いにくい」と思うこともあるでしょう。しかし、そんなことはありません。

誰が対応しても利用者が興奮状態になったり、暴力や暴言が見られることはあるのですから、必要な時には逃げる、助けを呼ぶことも大切なことです。

7.その場を離れる

興奮状態の時は何を言っても聞いてくれません。「大きな声を出さないで」「暴れないで」と言い、押さえつけようとすると逆効果です。より興奮状態を高めてしまう可能性があります。まずはその場を離れて距離を取りましょう。

近くにいると職員がけがをする危険性もありますので、自分の身を守るためにも一度離れることは大切です。少し離れたところからそっと見守り、落ち着いたころに再び声を掛けます。「そうなの」「大変だったね」と穏やかな口調で優しく話を聞いてあげましょう。

再び声をかける際には、先ほどの職員とは別の職員が声を掛けるのも良い方法です。同じ職員が声を掛け、利用者の落ち着くタイミングと合っていないと「また来た!」と怒りが再沸騰してしまう可能性もあります。

第三者であればその可能性は低いのでうまくいかない時には実践してみると良いでしょう。

8.静かな環境を作る

イライラとして怒っている時に周囲がうるさいと「あー!もううるさいな!」と現在の興奮状態にさらにイライラを上乗せしてしまことがあります。静かで落ち着ける環境を作りましょう。

テレビがついてる、音楽が流れているのであれば、音量を下げたり少し照明を落としたりします。また、本人が心安らぐ環境にすることが重要ですので、いつも持っている馴染みのものがあるのであればそれを渡したり、周囲に置いたりして環境を作ると良いでしょう。

本人が移動できる状態であれば居室へ誘導したり、集団からは離れて落ち着けるスペースへ誘導したりすることも一つの方法です。

興奮状態の場合、誘導しようとしても「どこへ連れて行く気なの!」「どこも行かん!」と拒否されることも考えられますので、その場合は無理強いはしないようにしましょう。

9.異性の職員が声を掛けてみる

女性利用者であれば男性職員が、男性利用者であれば女性職員が対応をしてみるのはどうでしょうか。異性介助はセクハラや過激な発言などが問題になることがあります。しかし、うまく活用することもできます。

暴言や暴力が激しくみられる利用者であっても異性の職員の言葉なら素直に聞き入れたという経験はありませんか。女性はいつまでたっても男性に美しく思われたい、男性はいくつになっても男でありたいという気持ちが心のどこかにあります。

そういった気持ちを尊重し、うまく取り入れましょう。異性の職員に笑顔で優しく話しかけられると「しょうがないな」思うものです。

10.医師に相談する

もうどうしたら良いか分からないという時には医師やケアマネジャーに相談しましょう。もしかしたら飲んでいる薬が合わないのかもしれませんし、思いもよらぬところに暴力・暴言の原因があるかもしれません。違う視点で見てもらうことができます。

ケアマネジャーであれば同じような事例とその時どうしたかという対策方法を知っていることもあります。自分やその周りの同じ環境にいる人だけでは気が付かないこともあるかもしれません。多くの人を巻き込み、様々な視点で見ることで分かることもあるでしょう。

暴言や暴力の元となっていることに目を向ける

安心

暴力や暴言は利用者からのSOSです。介助者を傷つけようと思っているのではないということを忘れてはなりません。

認知症は脳の病気です。感情や理性、社会性を保っているのも脳が正常に働いているからです。認知症になると脳が委縮することによって、脳がこの役割を果たすことができなくなります。性格がきつくなったり、暴言を言うようになったりすることも、根底には病気があるからなのです。

頑張っているのに、あなたのことを考えているのに、暴力や暴言を受けるのは辛いことです。恐怖を感じることでもあります。しかし、大切な人や信頼しているはずの人に暴力や暴言をぶつけてしまうのもまた辛いことなのです。

SOSを見つけたら暴言や暴力が生まれる原因を探りましょう。否定ばかりしていませんか?自尊心を傷つける介助をしていませんか?自分の介護を見直すきっかけにもなります。

暴言や暴力そのものを問題と思うのではなく、その根底にあるものを解決することが大切です。一人で抱え込まず、利用者に関わるスタッフ全員を巻き込んで考え、利用者も、自分のことも守りましょう。

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