ケアマネージャーにとって、ケアプランの作成は必要不可欠です。ケアプラン作成の際、最も重要なことの一つに「目標設定」があります。目標がしっかりしていないと、利用者さんとスタッフで共通のゴールをイメージできないからです。
また目標設定が適切に行えていれば、それを叶えるためのサービス提供内容がある程度決まってくることも多いといえます。
この記事では、サービス計画書第2表に掲げる短期目標例について、次のようなカテゴリ別にお伝えします。
- 健康状態
- 移動や歩行
- 食事
- 生活意欲
- 排泄や入浴
カテゴリ1:健康状態
要介護状態になる理由は「病気」か「怪我」です。病気にならないためには健康管理に留意することが必須ですし、転倒などの怪我を負わないためにも日頃からの健康維持は欠かせません。ケアプランを作成するということは、既に一段階目の健康状態が侵されているということになります。この先、どんな生活をおくるにしても健康状態の管理・把握は非常に重要です。
【文例】
- 体調を整えて病状悪化を防ぐことができる
- 生活リズムを整えて体調を管理することができる
- 定期的に受診して病状をコントロールできる
- 服薬を確実に行うことができる
- 口腔内を清潔に保つことができる
カテゴリ2:移動や歩行
要介護状態となる多くの人が、自分の脚だけでは歩けなくなったりして行動範囲が狭くなります。この現象は、高齢者やその世帯を地域社会から孤立させるだけでなく、認知症の原因にもなりますし、既に認知症の場合にはBPSDを悪化させることにつながります。ですから、何かの方法で移動や歩行を続けていくことは非常に重要です。
【文例】
- 一人でも安定した歩行状態が保てる
- 歩行補助具(シルバーカー等)を用いて安定した歩行ができる
- 車椅子を自操して行きたいところへ行くことができる
- 歩行補助具(シルバーカー等)を使って買い物に行くことができる
- 自宅の庭や畑まで歩いていくことができる
カテゴリ3:食事
身体が思うように動かなくなればなるほど「食べることは最後の楽しみだ」と多くの方が言われます。ですから、口からの食事を続けることができるということは重要です。しかし加齢と共に嚥下機能は低下するため、安全な食事を摂るためのサービス提供は欠かせません。
【文例】
- 誤嚥することなく食事を摂取することができる
- 好きなものを好きな時に食べることができる
- 毎晩の晩酌を続けることができる
- 補助具を使用して自力での食事摂取ができる
- 食事介助にかかる介助者の手間を軽減することができる
- 口腔内を清潔に保って誤嚥性肺炎を予防することができる
カテゴリ4:生活意欲
例え要介護状態になったとしても、生活する意欲を保てるか保てないかで、その後の人生が大きく変わってきます。一番重要なのは「今までその方がおくってきた日常生活からかけ離れない生活がおくれること」です。実際のところ、介護保険の神髄はここにあります。
【文例】
- 一日一回、家から外に出ることができる
- 一日一回は、家族と一緒に食卓を囲むことができる
- 家族と一緒にお店に行き、好きな買い物を楽しむことができる
- 愛犬とのお散歩の日課を守ることができる
- 近所の友人との井戸端会議に参加することができる
- 老人クラブやサークル活動などを続けることができる
カテゴリ5:排泄・入浴
排泄は、人間が自尊心を保っていられる最後の砦です。自分でトイレに行くことができなくなると、往々にして「ポータブルトイレ」や「オムツ」の使用を簡単に勧める介護スタッフも多くいますが、誰しも、自分の排せつ物を他人に見られるなんて本当は死んでもイヤなはずです。それを支援するための方法や環境がないため、断腸の思いでオムツを受け入れているのだ、ということをケアマネは忘れてはなりません。
また入浴も、元気なころは就寝前など夜に入るのが当たり前だったのに、要介護状態になった途端、昼間にデイサービスなどで入らなければならなくなります。夜、お風呂に入ってからお決まりの晩酌をして眠りに就くことに幸せを感じていた人は、この段階で残りの人生を憂慮することになるのです。今後の人生に希望を持てるか否かの選択は、ケアマネのケアプランと計画実現に関わる介護サービススタッフの質に直結します。
【文例】
- 自力でトイレにて排泄することができる
- トイレやお風呂の際の移乗動作を軽減することができる
- トイレに移って排泄するための下肢筋力などをつけることができる
- お風呂の前と後、自分で更衣することができる。
- お風呂に入った時に、自分で体を洗うことができる
短期目標は難しく考えすぎない
ケアプランを作成する際に最も重要なことは
- 目標を達成した時に自分がどんな姿になっているのか
- どんな生活をおくれるようになっているのか
この2つを具体的に利用者さんに想像してもらえるかどうか、ということです。今までに挙げてきた文言は、容易に想像できるのではないでしょうか。
またケアプランは、原則として利用者さん本人に説明するものです。難しい言葉で目標を設定する必要はありません。利用者さんが「あれがしたい!」「これがしたい!」ということがあれば、それを叶えるためにクリアしなければならない問題は何かを考えてみて、クリアできた姿を短期目標にすると良いでしょう。
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