将来就きたい仕事を考える時、給料・将来性・仕事内容・ワークライフバランスで考えると、つりあいの取れた職探しをすることができます。
介護職は、超高齢化社会の日本ですからしばらくの間は将来性があるでしょう。仕事内容やワークライフバランスで重要な労働時間と給与について、詳しく調べる必要があります。
この記事では、
- 介護職の平均給与(経験年数別、年代別)はどのぐらいなのか
- 介護サービス別の労働時間と給与の関係は?
- 介護施設における夜勤業務の実態について
- 介護職を考える時に重要なこととは何か
このようなことをお伝えします。
目次
介護職の経験年数別の平均給与はどのぐらい?
毎年行われている介護労働安定センターによる「介護労働実態調査」。この調査は、介護労働者の就業実態と就業意識調査を把握するために行われるものです。介護労働安定センターは介護労働者法で指定された公益財団法人ですので、信頼できる機関です。
平成29年度の調査報告でまとめられた数字をグラフ化すると、経験年数別の平均給与は次のとおりでした。

引用:公益社団法人介護労働安定センター|平成29年度介護労働実態調査
年数が増えるごとに給与が上がる統計となっています。ただこのデータの中には、日帰りのデイサービス施設や入居者が24時間365日所在する介護保険施設など、すべての介護サービスが混ざっています。サービス種類別に給与体系の特徴が分かれていますので、参考程度と考えてください。
介護職の年齢(年代)別の平均給与はどのぐらい?
同じく、介護労働安定センターの介護労働実態調査報告の数字を、グラフ化したものです。

引用:公益社団法人介護労働安定センター|平成29年度介護労働実態調査
年代が上がるにつれて給与も増えてはいるのですが、40代を超えると差はほとんどありません。60歳を超えてガクンと下がるのは、定年退職を迎えて短時間(パート)労働者に雇用形態を変更したり、夜勤回数が減ることなどの影響があるものと考えられます。
介護職の勤務時間の実態はどうなのか
介護サービスの種類や事業所によってさまざまですが、一般的に正社員(正規職員)の勤務時間は、1日8時間の20~22日/1月であるため、月間で160時間前後です。しかし、介護保険施設やグループホームなどは24時間365日利用者がいます。つまり、夜の間も職員が必要なのです。
夜勤のシフトは事業所によってさまざまですが、一般的には次のデータのように日勤と夜勤の2交代制の施設が多い統計が出ています。

引用:日本医療労働組合連合会|2017年介護施設夜勤実態調査
2交代の場合、夜勤1回の労働時間は夕方から翌日朝までの16時間前後に及びます。ですから、単に月間労働時間が160時間という求人が出ていたとしても、夜勤を行う事業所であれば、1回につき16時間前後の労働を行うことがあることを踏まえておかなければなりません。
労働時間(夜勤)と給与の関係は?
夜勤は、夜中の10時から翌朝5時までは「深夜労働割増時間帯」に仕事をしますから、割増手当(時給×1.25%)か、それに準じた夜勤手当が支給されることになります。ほとんどの施設は「夜勤手当」で、月額の基本給にプラスされて支給されます。仮に、1回の夜勤手当が5,000円で月に6回夜勤を行った場合、30,000円の夜勤手当が支給されるわけです。これは大きな差につながります。
夜勤を行う介護サービスは
- 介護老人福祉施設(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型施設(療養型)
- 介護医療院
- グループホーム
- 特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム)
- 地域密着型小規模多機能施設
などです。これらの求人を見る場合、基本給と夜勤手当が分けて書かれていないのであれば、月額給料の中に夜勤手当が含まれているかもしれません。
業務はどのようなことを行っているのか
2交代制の事業所であれば、日勤帯では
- 食事ケア
- 口腔ケア
- 入浴ケア
- 排泄ケア
- 余暇、レクリエーション
などです。利用者が就寝する夜間ではできないことを行います。夜間はトイレ誘導を控えるかわりに、日勤帯では積極的にトイレでの排泄をケアしている施設もあります。また外来者が面会に来られるのも昼間ですから、その対応も業務のうちです。
夜勤帯では
- パジャマ⇔普段着への更衣ケア
- 整容ケア
- 食事ケア
- 口腔ケア
- 排泄ケア
- 洗濯ものたたみなどの雑務
- 会議や委員会の記録など事務的な業務
があります。
夜間は、出来る限り睡眠がとれるケアが重要です。しっかり睡眠をとるためには、バランスのとれた食事や昼間と夜でメリハリのある生活がおくれるように支援することが大事です。
夜勤の場合は、休憩時間にも気をつけなければならない
夜勤業務のうち、特に気をつけて確認をしておきたいのが「休憩時間」です。法律により、8時間以上の労働をするなら1時間以上の休憩をとらなければならない、と定められています。ですから、一般的に考えれば倍の16時間労働をするわけですから、休憩も2時間とって良いのではないかと思ってしまいますが、定められているのは8時間に1時間、これだけなのです。
つまり、深夜の時間帯を含む16時間労働だとしても1時間しか休憩がとれません。しかもこの休憩、労働者に1時間一気に与える必要はなく、分割でもよいということになっています。つまり夜勤時の夕食として30分、朝食として30分しかとれなくても、法律的には問題がないのです。

また中には、待機時間・仮眠時間と呼ぶ事業所もあります。事業所によっても違いますが待機時間というのは、利用者が急変した時などは業務に入らなければなりません。これに対し休憩時間は、基本的に労働者が自由に過ごして良い時間であり、労働の拘束からは離れていなければならない時間です。
つまり「待機時間または仮眠時間が2時間あります」と求人に載っていたとしても、そのうちの何時間が休憩なのかということを確認する必要があるのです。深夜労働は、人間の自然の欲求である「睡眠欲」に逆らう労働であり、身体のつくりも夜中は寝ることで健康が保てるようにできています。ですから夜勤業務がある介護職に就くかどうかは真剣に考える必要があるのです。
しかも、介護労働安定センターの平成29年度実態調査では、実に30%を超える人たちが「休憩がとれない」と感じています。

引用:公益社団法人介護労働安定センター|平成29年度介護労働実態調査
介護職として働く時に最も考えておかなければならないこと
労働時間・夜勤時間・給与と手当も介護職を検討する時に大事な要素ですが、もっと重要なことがあります。それは「職場の人間関係」です。
介護労働安定センターの調査において、退職する理由TOP5をグラフで見てみましょう。

引用:公益社団法人介護労働安定センター|平成29年度介護労働実態調査
この統計からみても分かるとおり、退職した一番の理由は「職場の人間関係に問題があった」です。一般的に世間で騒がれているのは、介護労働者の低賃金です。だからといって「退職していく人が多いから介護人材不足になっている」というわけではないのです。しかしこれは、介護現場の人間からすると「あぁ、やっぱりな」という感じです。
介護職は対人援助。そして感情労働
対人援助とは、人間を支援するための仕事をしていることを指します。看護師もそうですし、社会福祉士などもそうですが、これだけでも大変です。モノと違って、毎日変化のある人間を支援するのは大変な仕事です。
もっと大変なのが「感情労働」であることです。例えば、プライベートで何か不愉快なことや不安・悩みがあっても、職場に行けばそれは関係ありません。利用者の前では笑顔で、何事もなく振舞い、利用者のことを心配しなければなりません。感情をコントロールする必要があるのです。
問題は、感情をコントロールできるスタッフがほとんどいないという事実です。しかも女性が多い職場ですから、仲の良いグループをつくり、気に入らないスタッフの陰口をたたき、あわよくば自分達の仲間を広げていきます。上司や事業所の管理者がきちんとリーダーシップをとれば適切に正していくことができるのですが、あいにく、介護事業所の経営者というのはそこまでの力量がある人が少ないのです。
介護職を考えるのであれば、この問題にも向き合わなければならないことを覚悟しておく必要があります。
介護職として働こうと考えているなら考慮すべきこと
- 介護職の給料は、経験年数に応じて上がっていく傾向があるが、職種によって年収はバラバラ。
- 介護サービス事業所別に、昼間の仕事だけで済んだり夜勤が必要だったりする。
- 夜勤をすれば手当がつくので、結果的に給料は上がるが重労働であり、休憩がとれないことも。
- 一番大変なのは職場の人間関係。自分だけが努力してもどうにもならないことが多いので、退職理由のトップ。
これから介護の勉強をしようかと悩んでいるのだとしたら、上記をよく考え、それでも良いかどうかを考察しましょう。
働きやすい職場環境選びがあなたを輝かせる
あなたはなぜ介護の仕事を続けているのでしょうか?
日頃から考えることが多すぎていつの間にか忘れてしまっている介護の現場で働く理由。母が祖母の介護を大変そうにしているのを見て介護職を志した人や、障害者の方が当たり前の日常を送れない現実を知って、当時の自分では何も力になれないもどかしさから介護の仕事を志した人もいるでしょう。
現在、あなたが介護の仕事を行っているのは、「人の力になりたい!」と強く思ったからではないのでしょうか?
3K(きつい、汚い、危険)と言われていることを知った上で働き続けているあなたは高齢化社会である日本の誇りです。
介護業界の主役は現場で働くあなた自身です。
あなたをキッカケに、「介護の仕事って楽しいんだよ」「介護ってかっこいいんだよ」と思ってもらえる仲間が増えることを祈っています。
まずはあなた自身が輝ける場所に行きましょう。
世の中は、熱い想いを持って介護の仕事に取り組むあなたのような人材を求めています。