離職率が高い職業として介護職はいつも上位にありますよね。実際どこの現場も離職するスタッフが多くて常に人材不足になっています。いつも求人募集している事業所も少なくはないでしょう。「今月は何人辞めるんだって」「先月入職した人もう辞めるんだって」「中々次入ってこないね」など耳にすることがあります。
介護職員の人材不足が続くと、少ないスタッフだけで役割を担っていくことになります。そうなると、スタッフの負担は相当なものとなり、精神的・肉体的疲労が重なります。この悪循環から抜け出せない介護職の現場が数多くあります。では、なぜ介護職の離職者がこんなにも多いのでしょうか。実際に聞いたAさんの話から考えてみました。
介護は人を考える気持ちが大切
Aさんはその職場に8年勤めた人でした。新人教育もしっかり行い、楽しく毎日を送っていました。勤務年数が上がるにつれ4年目で管理者として一つの事業所を任されるようになりました。初めて人の上に立つことで、経営のドライな面に直面したのです。
一番の退職に繋がった理由は上司との人間関係でした。毎週開かれる管理者会議で「内容なんてどうでもいい。とにかく数字をあげなさい。どうしてできないのか?」と言われたのです。Aさんは絶句しました。何のために介護の仕事をしているのか?立場上数字も大切だが、利用者さんを第一に考えるよう力を入れていたのに、なぜそんな事が言えるのか。
介護事業所が増えていき、徐々に利用者さんの数が少なくなっていました。介護職でも営業に行ったり、数字を求められていくようになりました。そのプレッシャーは相当な物です。幸い現場の人間関係は良好で良いスタッフに恵まれお互いに声をかけあい楽しく仕事ができていました。管理者同士でこれからどうやっていくのが最善なのか日々話ましたが、どうしても答えが出ません。利用者さんはどうでもいいといえる経営トップの言葉が忘れられなかったのです。
リスクとプレッシャーに向き合う難しさ
Aさんが介助中に利用者様が転倒してしまいました。ご家族に謝罪をしましたが、大変憤慨しており「上司をだしなさい」といわれたので事務長に報告しました。すると、「なんで私がこんなことで行かないといけないんだ!」といわれたのです。「私はあなたの上司ではない。あなたの上司は理事長だ」とまで言われました。
この件で管理者は守ってもらえないことがわかりました。もちろん転倒や事故のないように日々注意していますが、一瞬だけ目を離した時の出来事で介護職としての責任の重さとプレッシャーに耐えられなくなりました。その件が落ち着いてからAさんは退職しました。それからも徐々に管理者が退職するようになり、1人辞め、また1人辞め。
そんな中一つの事業所は管理者が退職したとたん他のスタッフもこぞって退職しました。理由は次の新しい管理者と折りが合わなかったようです。人と人が仕事するのにその大切な「人」をないがしろにした事で退職者は相次ぎました。
介護の仕事以外でストレスが溜まる
介護職員さんは利用者さんを中心に仕事をします。利用者さんと話をしているときや、利用者さんからの笑顔をもらった時は嬉しくてそれが励みになります。
人と人が一緒に仕事をするのでほほえましいこともありますが、中にはそうではないことがあります。そのバランスが難しいものです。特に人間関係には悩まされます。上司や同僚、利用者さん、その家族など様々な方との関係を築いたいかないといけません。ただでさえ、現場の仕事で心労を抱えている人にとっては相当なストレスとなります。
介護職としての大切な事と気持ちの差
- 給料が仕事内容に見合わないから気持ちが追いつかない
- 体力面、金銭面、精神面で余裕がなくなる
- 余裕がないことで、上下関係、横との繋がりなど、人間関係に限界を感じる
- リスクの重さと、プレッシャーに耐えられなくなる
今までたくさんの介護職の方にお世話になりましたが、その中で一番の退職理由は人間関係が多かったです。人と人が仕事をするからには「人」を大切にしてお互い労い感謝の気持ちを持つことこそが介護職としてのやりがいに繋がるのではないでしょうか。