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介護人材不足が国家をあげての問題となり、介護保険制度の改正ごとに取り組みがなされています。とはいえ「これなら大丈夫!」と介護の道への決断を後押しするほど、有効的な手段がとられていないのも事実です。

取り組みの一つに賃金改善が挙げられます。これは「介護職員の給料は安い」というイメージが全国的に広がっているからです。しかし、本当にそうなのでしょうか。そのために、介護人材が不足しているのでしょうか。

今回は、地域、介護保険サービス、勤続年数などのさまざまな視点から平均給与分析と、離職率の関係をお伝えします。

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地域別ではやはり都心部が高い

今回取り上げるデータはすべて、公益財団法人 介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」における、最新のデータ(平成29年度調査)が基となっています。そして、分析するのは正規職員のデータです。

  • 政令指定都市(札幌市・横浜市・名古屋市・大阪市など20の市)と東京23区
  • 上記以外の市と区
  • 町、村、その他

という区分別にまとめられた平均給与データです。

地域別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

政令指定都市以外の市や区、また町や村で、一番割合が多いのは月額給与20~23万円です。くらべて、政令指定都市と23区で一番割合が多いのは18~20万なのですが、28~30万、そして40万以上もらっている割合が多いという特徴があります。

政令指定都市で働く介護労働者の人数は、他の地域と比べて非常に多くなっています。そのため、若い世代の労働力が多いという特徴があります。ですから18~20万円クラスが割合としては多いのですが、勤続年数が上がれば他地域よりも給料は高くなる、という特徴があるのです。

法人種類別では医療法人が高い

続いて、法人種類別の分析です。

  • 民間企業(有限会社や株式会社など)
  • 社協(社会福祉協議会)
  • 社会福祉法人
  • 医療法人

という主な4つの種類を取り上げます。このほかにも、NPO法人や社団法人、財団法人、地方自治体などがありますが、調査において1000以上の回答があったのが取り上げる4種類です。

法人種類別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

このグラフから読み取れるのは、民間企業や社協においては15~23万円までの割合が多くなっていますが、社会福祉法人になると15~28万円ぐらいまで幅広く散らばっています。医療法人は、他と比べると25~40万円までの割合が多くなっています。

従業員の給料は収益に直結しますので、つまりは医療法人が一番収益をあげやすいということになります。

事業所規模別では規模が大きいと給料も伴う

事業所規模は、従業員数で区別することができます。

  • 1人
  • 5人未満
  • 5~10人未満
  • 10~20人未満
  • 20~50人未満
  • 50~100人未満
  • 100人以上

事業所規模別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

5~10人未満の事業所では、15~18万円の割合がいちばん多く、10~20人未満の事業所では15~18か、20~23万円が多くなっています。

50人以上の事業所では、23万円以上もらっている人の割合が他と比べて多くなっています。つまり規模が大きい方が、高い給与帯の割合が多いということです。1人事業所も25万円以上や30万円以上に多くみられますが、1人事業所の場合には出費を払うのも自分です。テナントを借りているのか、それとも自宅で行っているのかなど、条件によって異なるため、分析しにくいといえます。

介護サービス別ではケアマネ事業所なら設備投資が少ない

介護保険制度は大別すると

  • 在宅サービス
  • 施設サービス
  • 地域密着型サービス

に分けられます。しかし別の分け方として

  • 訪問系サービス
  • 入所系サービス
  • 通所系サービス
  • 居住系サービス
  • 居宅介護支援(ケアマネ事業所)

という分け方があります。この方法で分析してみましょう。

介護サービス別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

分析すると、通所系サービスが一番低賃金になりやすいといえます。訪問系と入所系は似ていますが、23万円以上の割合が多いのは入所系です。居住系も20~23万円が一番多い割合となっています。入所系や居住系が多いのは、夜勤手当が含まれているからという理由もあります。

居宅介護支援は、いわゆるケアマネ事業所です。ケアマネ事業所は、他の施設と違って事業所の設備投資があまりかからないという特徴がありますので、その分、給与に回しやすいのです。

介護サービス種類別は夜勤手当の影響が出る

介護保険制度には

  • デイサービス(通所介護)
  • 訪問介護
  • 特養(介護老人福祉施設)
  • グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
  • 有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)

など約40種類の介護サービスがあります。すべてのサービスで比べてもあまり有効的な分析が得られないので、ここでも、回答数が1000以上あるサービスを分析してみましょう。

  • 訪問介護
  • 通所介護(デイサービス)
  • 居宅介護支援(居宅ケアマネ事業所)
  • 地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
  • グループホーム(GH)
  • 特養(介護老人福祉施設)

サービス種類別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

訪問介護や通所介護は15~20万の割合が多いのに比べ、グループホームや特養は20万以上が多くなっています。これは「夜勤手当」が含まれているからです。入居系の施設は24時間365日、入居者がいますから、必ず夜勤者が必要です。夜勤手当は、労働基準法でいう深夜労働割増分を超えなければならないため、一回の夜勤につき3,000円~10,000円などです。だいたい、正規職員で月に4~6回ほど夜勤に入るのが一般的です。

居宅介護支援(ケアマネ事業所)は、事業所の建物や設備などの初期投資費用が他のサービスよりも安く、しかも維持管理などのランニングコストも抑えることができるため、介護報酬で収益になったものをスタッフに還元する割合を多くしやすい、という特徴から給与が高めになると推測できます。もちろん、介護職員よりも専門性を発揮する分野になりますので、評価されやすいという特徴もあります。

職種別ではより専門性が重視される職種が評価される

介護事業所ではさまざまな職種のスタッフが働いています。厳密にいうと通所系と入所系では職種の違いがありますが、おおよそ次のとおりです。

  • 介護職員
  • 看護職員
  • 管理栄養士(栄養士)
  • 厨房職員
  • 事務職員
  • 生活相談員
  • 介護支援専門員(ケアマネ)
  • セラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)
  • 管理者(訪問介護事業所のサービス提供責任者)

栄養科や事務系のデータは、介護職員の給与と比べる時にあまり有効な数値となりにくいので、それらを除いたデータで分析してみます。

職種別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

訪問介護員は15~18万の割合が多いのですが、同時に20~23万台にも多くいます。サービス提供責任者もそのぐらいなので、あまり差がないことが分かります。訪問介護事業は、介護保険サービス内ではあまり収益をあげにくいという特徴が影響しているのでしょう。

どの職種も20~23万円の割合が多くなっていますが、看護職員・生活相談員・ケアマネは25万円以上の割合も多い状況です。単に介護だけをするのではなく看護職員なら医療分野、生活相談員やケアマネは利用者支援や家族・地域との連携などの専門性を発揮する職種なので、それが評価されているといえます。

セラピストは看護職員と同じ国家資格ですが、適切に配置しリハマネジメントを行えば、介護報酬において種々の加算を算定することができます。このような評価が給与にも反映されているといえます。

勤続年数では経験を積んだからといって給料は上がらない

言うまでもありませんが、勤続年数が長ければ長いほど給与は上がっていく傾向がみられます。グラフを見てみましょう。

勤続年数別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

特徴は、20~23万円台の割合がどの年数でも高いことです。勤続年数に伴い右肩上がりに給料が上がるなら、このような現象は置きません。

これは、介護の仕事の収入が介護報酬に依存していることによります。

長年勤めて経験を積み、企業の収入を上げる可能性がある業種なら、会社の利益も上がっていくでしょうから給与の上り具合も比例するでしょう。しかし介護の場合、介護報酬は国によって定められていますので、いくら経験を積んだからといってどんどん利益を上げることにはつながりません。そのため、勤続年数に伴う給料の上り幅も少ないのです。

20年以上になると管理者やマネージャークラスに昇進することになるため、一気に30万超えの割合が高くなるのも特徴です。

年齢別では他業種に比べると給料が安い

年齢も、上にいけばいくほど給料も上がるのが常ですが、おそらく、介護の仕事は給料が安いといわれる理由がここにあると考えられます。

年齢別の平均給与

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

他業種であれば、35歳や40歳ぐらいになると30万円を超える人たちがたくさん出てくるものです。しかしデータでは、その年齢であっても20~23万円台の割合が一番多くなっています。意味するのは「将来性がない」ということです。介護の仕事をやりたくて選んだとしても、経験や年齢に伴い給料が増えていかないということは「頑張って続けても評価されにくい」という結論になるのです。

給料と離職率の関係性はなかった!?

勤続年数や年齢・経験に比例して給料が上がりにくい特徴があるのが介護の仕事だ、ということがわかりました。介護人材が不足しているのは、やはり給料の問題なのでしょうか。そうではありません。

他の介護事業所に転職する、つまり介護業から介護業へ転職する理由の上位には給料の問題も確かに入っていますが、介護業界内にとどまっているのなら人材不足にはなりません。完全に介護から足を洗ってしまう人が後を絶たないため、人材不足になるのです。その理由は次のとおりです。

退職した理由

引用:介護労働安定センター|平成29年度介護労働調査の統計表

トップ3の中に「給料」は出てきません。介護人材不足になるのは、職場の人間関係や事業所の理念・運営に不満があるからなのです。2番目の理由にあるとおり結婚・出産・育児を理由に介護業界を離れる人が多いのは、そんなストレスを抱える世界に産休や育休明けに戻ろうとする人が少ない、ということを示しています。

介護の仕事に就くなら目的を見失わないこと

介護の仕事に就くなら、所有している介護の資格に応じて、どのサービスなら活かすことができるのかを考えることができます。介護福祉士を所有しているなら、訪問介護では事業所の管理者になることもできるため、ゆくゆくは給料アップが見込めます。他の事業所でも、介護福祉士手当を支給してくれたり昇進しやすくなったりします。

資格はあまり考慮しないなら、ワークライフバランスを考えることができます。通所系なら夜勤がなく、日曜日や祝日に休むことができるかもしれないため、プライベートの時間を重視することができます。その分、給料もあまり高望みはできません。

入所系なら夜勤手当も出るため、給料もそれなりにもらえるようになりますが、とはいえ、土日祝日、GW・盆・暮れ・正月関係なくがっつりシフトに組み込まれるため、異業種の友達となかなか休みが合わないかもしれません。

人間関係が思わしくないことは、覚悟しておく必要があります。だとしたら少しでも給料が高い方が良い、というのであれば

  • 医療法人が経営
  • 法人の従業員規模が100人超え
  • 保有資格や経験によって昇進しやすい人事体制が備わっている

という基準で就職先を選ぶとよいでしょう。

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