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入居施設で介護の仕事をしていると、夜勤をすることもありますよね。日中帯とは違う緊張感があり、特変時や急変時には迅速な対応が必要となります。ただでさえ日中に比べて職員の人数は少ない配置になっているので、急変時の対応は時間との戦いでもあります。今回は夜勤中の実際に起きた緊急時の対応についてお伝えしていきます。

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介護不要?自力で生活をしている入居者の話

介護付き有料老人ホームに入居しているAさん(男性)は、比較的介護度が低くほとんど自力で生活していました。介護をする事はほとんどないのですが、あまり他の入居者との関わりを拒み、施設の行事やレクリエーションにはほとんど参加をしません。

Aさんの口癖は「俺は介護をされる理由が一つもないからほっといてくれ」でした。私はAさんの担当職員だったのですが、「夜もいちいち部屋に見回りに来るな」とか、「一人分介護しなくて済むから助かるだろう?」等と、自分は他の利用者とは違うと話をするのです。

大量出血!その時介護士の判断は?

「いちいち部屋に見回りに来るな」と言われても、何かあったら困るからと巡回はさせてもらっていました。寝ているところを起こさないようAさんがベッドで横になっているか、寝息は聞こえるか程度の対応です。

私が夜勤担当の日に事件は起きました。いつものようにAさんの部屋をこっそり開けてみると、ベッドに座って「ふぅ~、ふぅ~」と辛そうな呼吸をしているのです。私は急いでベッドまで駆け寄ると、左足のすね付近から大量の出血をしているのです。「どうしたんですか!!」と尋ねると、トイレから出る時にドアにすね付近を強くぶつけてしまったと言うのです。

Aさんは自分のタオルをすねに当てていましたが、タオルがどんどん赤みを帯びて全く止まる気配はありません。これは緊急対応が適当と感じた私は、同じ夜勤勤務の職員に救急搬送要請をお願いしたのです。「大げさにするな!!これくらい大丈夫だから仕事に戻れ!」と何度も大声で怒鳴られましたが、皮だけでなくすねの肉まで見えているので私は「これがいま私にとっての仕事です!」と、Aさんのすねをタオルで圧迫しながら救急車を待ちました。

私が救急車に同乗し、病院まで行きました。夜間で人手が足りないのか私もAさんの足元を抑える係として処置の場所に行き、結局10針も縫う大きな事故だったのです。

「自分だけでも」利用者からの配慮に気付いた瞬間

急変時は素早い対応が求められます。もしAさんの言うとおりにしていたら、もっと深刻な状況になっていたかもしれません。緊急対応だったにも関わらず、Aさんは入院する事もなく施設に戻る事が出来ました。

私とAさんは病院で施設の車を待っていたのですが、Aさんが突然私に言いました。「俺も迷惑かける入居者の一人になってしまったな、申し訳ない」Aさんは施設の光景をいつも見ていて、介護職員の仕事が大変だと感じていたのでした。大変な業務を少しでも楽できるよう、Aさんは「自分の事はいいから」と言っていたのです。

私はAさんの本当の気持ちに感動してしまい、少し泣きそうになってしまいましたが、すぐに笑顔で「何言っているんですか、こういう時のために僕たちがいるんですよ」と伝えると、「ありがとう」と、照れくさそうに言ってくれたAさんの言葉を今でも忘れられません。介護拒否や職員に対して「私の対応はいいから」という利用者は時々います。私はあまり職員にお手伝いをさせてくれない利用者に対して、難しい人だとばかり思っていましたが、「実は一番職員の負担や大変さを理解してくれているのかもしれない」と、気持ちを一つ成長させてくれた体験でした。

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