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介護施設での事故は絶対に起きないと言い切れませんよね。そうならないように、常に事故発生に対しては常に気を張っていますが、利用者の行動を制限しすぎると身体拘束になり問題になってしまうし、何も対応しないと事故が多発してしまうというジレンマに陥ってしまいます。

事故発生件数のデータによると、平均して施設における事故が多いのが次の三つになります。

  1. 転倒、転落
  2. 誤飲
  3. 誤薬

高齢者になると少しの事故から大変な大怪我につながる事もあるので注意が必要です。

これから私が経験した実体験を元に発生した経緯とそれに対する対応方法をお伝えします。

引用:鹿児島市介護サービス提供時の発生事故の報告より

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転倒・転落は骨折などのリスク大!

介護を少しでも経験された方なら分かられるかと思いますが、一番多いのがこの転倒・転落事故で全体の6割近くにのぼりいろいろなシチュエーションで発生しています。まずは実例をご覧ください。

ケース1:危ない転倒!老人カーが進まない!

90歳代女性Aさんは夕食後老人カー歩行で自室へ戻る途中、しりもちをつき転倒。すぐに車椅子に乗り病院受診しました。どこも骨折はなかったがそれ以後、歩くことへの恐怖心にて寝たきりになる。

原因として老人カーの動きが悪くなかなか進みづらかった。また数日前に熱を出され病み上がりであり歩行状態も安定していなかった。

横に付き添って欲しいとの希望があったが日ごろ依存心が強かったため、いつものことと判断し自分で歩いていくように伝えたことが挙げられました。対策として状態把握と老人カー点検が義務付けられた。

ケース2:伝え歩きでキケン!見守り不足が招いた事故

90歳代女性Bさんは、昼食後に共同室テーブルを伝え歩きして足がすべり転倒。本人にどこに行きたかったか問うも、要領を得ない返答が帰ってくる。病院受診を行い右大腿部頚部骨折にてそのまま入院退所となった。

原因として下肢筋力・認知力低下があり自分の能力に過信をしていた。また、常に見守りが必要だったがたまたま担当職員が一人しかおらず食器を洗っており背後で行ったことで見守りが不十分だった。

対策として見守り職員を二人に配置し食器はそのまま洗わずに他のユニット職員が食器洗いを行うことになった。

ケース3:足がすべって転倒!ぬれた地面の危険性

80歳代女性Cさんは入浴後に脱衣場に向かおうとして転倒。付き添い介助をしていた女性職員は支えきれずに共に倒れる。すぐに車椅子に乗り状態把握し特に異常ないものの職員とともに病院受診し二人とも打撲の診断。

原因としてDさんはいつも長湯で湯あたりしたのではないか?Cさんは大柄な体格のため、小柄な女性職員では支えきれなかったのではないか?入浴剤がぬるぬるするタイプで足裏が滑ったのではないか?との指摘があがり対策として長湯しないよう声かけ及び誘導時は職員二人で脇を支える、入浴剤の選定をもう一度行うことになった。

ケース4:ベッドからの転落!本人把握の重要性

80歳代男性Dさんは深夜自室ベッドより転落。大きい音に気づいた職員二人で抱え上げベッドに移す。本人様は「トイレに行きたかった」と言われる。その場では特に問題なく様子をみていたが朝方になり急に頭痛を訴えそのまま病院受診、外相による頭蓋内出血にて緊急入院となった。

原因として病院から直接入所してきたが、病院からもらった情報と実際の本人の状態が一致せずADLの把握が上手く出来ませんでした。

また入所して数日しか経っておらず本人さんの排泄パターンがつかめていなかったこと。電動ベッドの高さを一番下にせずセンサーマットを設置していなかったが挙げられた。

対応策として新規入所者の場合ナースステーションの目の前の部屋にし見守りを行うようになった。センサーマットの設置となる。

魔の時間の存在、事故多発のウトウトする時間帯に注意!

まず転倒・転落事故について説明しましたが、事故発生データを読み解く上で事故が多発しやすい時間帯が分かってきます。それは早朝5時~9時までと夜間19時~22時の間です。高齢者の方は早起きですので早朝からトイレに行ったりテレビを見たりなどゴソゴソ動くことがあります。

しかし覚醒状態が悪く寝たぼけた状態で行動しそのまま事故に繋がります。夜間も同じく眠りにつくかつかないかのウトウトした状態でふと「エアコンの電源消したかな?」「もう一度トイレに行かなくていいかな?」と思いだし十分に覚醒していない状態で動き事故が発生しています。

職員交代の時間で注意が薄くなりがち

職員交代の時間も危険です。早出者が朝7時にくると夜勤者は「もう少しで夜勤が終わりだ!」とつい気がゆるみがちです。

また夜勤が終わり日勤職員への申送りをしている時に周りへの注意が薄くなってしまい急に「ドスン!」と音が鳴って初めて気が付くパターンがあります。

職員の見守り体制の人数不足

また上記の時間帯は少ない人数で対応せざるを得ません。私が以前いた施設では80名を看護師1名介護士2名で夜9時~翌朝7時まで対応していました。

その中で休憩を取るので時間帯によっては職員2人で体位変換やオムツ交換などを行っており、ナースコールが鳴ってもすぐに駆けつける事が出来なかったり、部屋に入り込むことによって離れた場所の異変に気づかず朝になり「あれ?こんなところに内出血あったっけ?」と首をひねることもあります。

あるある誤飲・誤嚥編

コップから溢れる

次に誤飲・誤嚥事故ですが、こちらは施設や自宅でも比較的起きやすい事故と言えるでしょう。ここでもケースごとに説明をしていきたいと思います。

ケース1:枕の中身を食べて窒息死

認知症のある80歳代男性Aさんですが枕の中身にあったそばがらを食べて喉に詰まらせているのを夜間巡回中の職員が発見。すぐに救急車を呼び対応するも死亡。

Aさんが自宅で使用していたそばがら枕を家族さんが職員に黙って交換したことが原因でした。対策として荷物を持って来た時は家族さん立会いのもとにチェックする。面会の終わったところの部屋へは一度確認するようになった。

ケース2:机にある鉢植えの土を食べる

認知症のある90歳代女性Bさんが机にあった植木鉢の土を食べている所を職員が発見。すぐに吐き出させ病院受診を行い経過観察の指示がありました。

家族さんが母の日にと送ってきたカーネーションを綺麗ですねと本人さんの前に置いたまま職員が席を外したのが発端でした。今後テーブルの上に植木鉢等配置しないことになった。

ケース3:餅を詰まらせ死亡

70歳代女性Cさんは自宅でテーブルの上にあった餅を詰まらせる。その時家族は初詣に行っており1人で留守番をしていた。家族が家に帰ってくると冷たくなった本人を発見。すぐに救急車を呼ぶも死亡される。

ケース4:自分の歯を飲み込む

80歳代女性Dさんの口腔ケアをしていると歯が2本と歯茎自体が無くなっている事に気が付く。すぐに内視鏡にて検査及び除去を実施し内壁等ケガすることなく回収される。対策として毎週日曜に全員の歯のチェックを行う及び歯科衛生士の2週間に1度の訪問が決定。

ケース5:食事中に意識を無くしそのまま誤嚥

90歳代女性Eさんは昼食を食べている最中に意識を無くしそのまま口の中にあるものを溜めこんでしまいました。職員が箸を動かさないEさんに声をかけ発覚。入れ歯・食物の取り出し救急車で搬送され意識を取り戻したが誤嚥性肺炎で入院しました。

対策は血圧低下など意識障害の既往のある方に対する見守りの強化でした。

嚥下機能低下による肺炎のリスク

誤飲・誤嚥の事故についてざっと説明してきましたが、誤飲は何となく食べてはいけない物を食べたんだろうなと予測はつきますが、じゃあ誤嚥ってなんのことだろうと思われませんか?

普段何気なく食事をしている私達ですが、それは気管と食道の間に弁があり無自覚のうちに動く事によって気管に食事が通らないようになっています。私たちが食べ物や飲み物を飲み込むときに「ゴックン」としますよね?その飲み込むときの時間は0.5秒といわれています。

しかし、老齢や脳梗塞などの病気により弁の動きが悪くなり気管から肺の方へ食物や唾液がいくことにより細菌が繁殖し肺炎となるのです。これを誤嚥性肺炎といいます。

誤嚥性肺炎の特徴としては「食欲があまりない」「熱があまり出ない」「のどがごろごろ鳴る」など挙げられ自覚症状に乏しく誤嚥性肺炎にかかっていることに気が付かず放置していることもあります。予防するには発声練習や舌の運動、口の中を清潔に保つことが重要です。

環境の整備が大事、危険なものを避ける

枕の中身を食べて窒息死したAさんですが、家族は本人のために、よかれと思いもってきた枕により不幸な事故が起こりました。また机にあった物を食べることで健康を害する危険性があり、ほとんどの場合が認知症を患っていました。

本人の周りにある物は、危険を与えそうなものを避け、家族の持ち込んだ物に本人を害するものがないかチェックする必要があります。

服薬管理の健康に対するリスク

服薬の事故は、施設や病院が事故件数として多く見られます。これは私の体感なのですが、転倒・転落事故よりもこちらのほうが多く発生しているように感じます。しかし服薬事故については表面化しづらいところがあります。まずは実例をご覧ください。

ケース1:薬の渡し間違い

昼食後Aさんより「まだお薬飲んでないけど?」と申告があり、確認すると隣席のBさんに職員が間違えて内服を行った。利尿剤だったためそのまま経過観察する。内服介助した職員は入社2か月の新人であった。再度薬の重要性と名前を呼びながらの内服介助を行うことにした。

ケース2:インシュリン単位ミスの打ち間違い

糖尿病のCさんにインシュリンを打った看護師が本来なら昼に8単位打たなければいけないところを朝の6単位と間違えて打ってしまったことに夜気がつく。医師に報告し様子観察の指示あり。インシュリン注射本体に、いつどの単位を打つのかビニールテープで張ることで対応した。

ケース3:薬の飲ませ忘れ

薬箱を確認するとDさんに朝の内服をしていないことに昼に気がつく。本人は特に気分不良の訴えなく医師に報告、様子観察の指示あり。服薬介助を行った職員が夜勤明けだったため、判断力が低下していたと思われる。今後は夜勤者以外が内服介助をすることになった。

職員の経験不足と慢心と疲労

薬の渡し間違いについて仕事に就いて日が浅くまだ利用者の名前を覚えていないために起きた事故であり、インシュリンの単位違いは経験年数10年以上のベテランであり「いつものこと」と慢心したことが原因と考えられます。薬の飲ませ忘れについては夜勤明けであり、疲労が蓄積された状態で注意力も低下したため起きた事故といえるでしょう。

本人に影響が出ずらい

利尿剤の飲み間違いですが、腹水や浮腫が強いなどあれば別ですが特に状態が安定している場合は普段よりおしっこが多少少なくなるだけなのでそこまで影響がありません。

また高齢者の皆さんは薬を5種類以上長年飲んでいることもあり蓄積された薬の成分がが身体に残っている為に状態に変化が出ません。加え本人もいったいどんな薬を飲んでいるか把握しておらず家族も知らないケースもあり出された薬はとりあえず飲むということで引き起こされる事故もあります。

事故は絶対ゼロにはらない!

介護事故とそれに対する原因・対策について説明してきましたが、必ず言えるのは事故は絶対ゼロになることはありません。

転落の危険があるのにベッドの高さを一番下にしていない、老人カーが整備不良に動かない等のハード面と業務に追われることによる心の余裕のなさや仕事に対する慣れ、新人教育の不足によるヒューマンエラーが幾重にも重なり合う事で事故は起きるので、原因を1つずつ解決していけば限りなくゼロに近づけることはできます。

事故を起こしてしまえば本人・家族はともかく職員にも多大なダメージを与えることにつながりかねません。事故防止対策委員会の設置や標語の掲示、職員同士の意識統一、小さな事故をそのままにせず周知徹底し危険をすぐに察知できるようにしましょう。私を含め一緒にスキルを高めていきましょう!

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