Pocket
LINEで送る

介護の仕事は、方法を間違えると必ず腰を痛めてしまいます。何しろ、利用者さんの身体は軽い体重の人でも30kg以上あります。その重さを一人で、ベッドから車椅子へ移乗したりするのですから、腰や膝を痛めてしまうのもうなづけます。

しかし「ボディメカニクス」を活かせば介護も楽になり、腰痛を防ぐことができます。介護する側が楽だと利用者さんも楽ですし、介護の質の向上へとつながります。

この記事ではボディメカニクスとは何か、それを活かした介護方法とは具体的にどうすれば良いのかをお伝えします。

スポンサーリンク






ボディメカニクスとは何か

ボディメカニクスとは、人間の骨や関節・筋肉を力学の観点から上手に使う技術のことです。私達の体は、骨・関節・筋肉をバランスよく動かすことによって、複雑な動きをとることを可能にしています。日頃は何気なく使っている身体ですが、重たいものを動かしたり運んだりする時には、ボディメカニクスを意識して用いないと、すぐに身体を壊してしまいます。

次のイラストをご覧ください。

中腰での重負荷

引用:ボディメカニクスのお話|B・A・Cスタジオ

介護の仕事では、真ん中の図のように中腰の状態での介助動作が頻繁にあります。一番左端で腰椎にかかる重さと比較すると、真ん中の図では実に3.5倍の負荷がかかるというのです。仮に20kgの荷物を持ち上げようとする場合、中腰で持つなら3.5倍の70kgという負担が腰にかかるということになります。腰を壊すのも当たり前です。ちなみに、一番右端の姿勢の場合には約120kgの負担が腰にかかりますので、ボディメカニクスを活かした介護を行うことは本当に大切です。

ボディメカニクスを活かすポイント

介助動作でボディメカニクスを活かすポイントと実際の姿勢を、ベッドから車椅子へ移乗する動作を基にお伝えします。

1、安定した姿勢をとる

介護の仕事は、落とせば骨折など怪我をしてしまう人間を相手にします。極力、安定した姿勢をとるように、介助動作の前に脚の幅を広げます。

支持基底面

引用:ボディメカニクスを理解しよう~今日から使える8つの原理|みんなの介護

2、重心を低くする

安定した姿勢をとれば力を入れて動作を行う時でも安定性が増しますが、そのためには膝を曲げて重心を低くすることが重要です。

重心低く

引用:ボディメカニクスを理解しよう~今日から使える8つの原理|みんなの介護

3、重心を近づける

介助する対象者との重心を近づけることにより、力が伝わりやすく、最小限の力で最大の効果を得ることができます。移乗の際には、利用者さんにできる限り近づきます。

重心を近づける

引用:技術を磨く~ボディメカニクス研修|医療法人 健友会 本間病院

4、腰をひねらない

ぎっくり腰の大きな要因として、重たい物を中腰で持ち上げようとする動作と、勢いよく腰をひねる動作があります。

車椅子などへの移乗時、移乗させる側の方へあらかじめ足先を向けておくことで回避できます。

ひねらない

引用:ボディメカニクスを理解しよう~今日から使える8つの原理|みんなの介護

この姿勢をとってから、次の「平行移動」へと移ります。

5、平行移動

中腰状態で一番負荷がかかる動作が「持ち上げる」ことです。ボディメカニクスを活かす介護では、そもそも中腰状態を回避するのですが、だからといって利用者さんを持ち上げる介助を行ってしまえば、行わない時よりも確実に腰に負担がかかります。

一番望ましいのが利用者さんと身体を密着させた状態で、自分が後ろに下がりながら、利用者さんにおじぎをしてもらうようにして一緒に立ち上がる動作なのですが、足底を床につくことができない半身麻痺の方の場合には不可能です。

その時の原則が「平行移動」です。

平行移動

引用:持ち上げない「ノーリフトケア」で介護する方・される方も笑顔に|かんでんライフサポート株式会社

写真では、ベッドと車椅子の間にスライドボードを置き、持ち上げるのではなく「滑らせて」平行移動を行っています。福祉用具を上手に活用するのも、ボディメカニクスを活かす介護では重要です。

車椅子への移乗はこれらの動作で完結しますが、ベッド上での体位変換や起き上がりの際にも重要なボディメカニクス活用シーンがあります。

6、摩擦抵抗を少なくする

ベッド上で利用者さんの身体を動かす体位変換などの際に、中腰が多くなります。ベッドの高さを、自分が中腰にならない高さに調節したり、ベッドの上に膝をつかせてもらうことである程度は回避できますが、それでもベッド上で利用者さんの身体を動かすことには変わりありません。

動かす際に生じるシーツと利用者さんの身体の摩擦抵抗を少なくすることで、力を最小限に抑え腰への負担を軽減させます。摩擦抵抗を少なくするためには、シーツと身体の接地面積を少なくすることです。

抵抗少なく

引用:ボディメカニクスを知ろう~腰への負担が軽くなる介助のテクニック~|介護のお仕事研究所

ベッド上で身体を上へ移動させる時には枕を外しますが、その際にも、首の根本に介助者が手を入れて頭を上げるだけでも摩擦抵抗を軽減できます。

7、てこの原理を使う

寝ている状態からベッドへ端座位を介助する時、仰向けから真横を向かせる時などは「てこの原理」を活用します。利用者さんの身体の中で「支点」となる箇所をつくり、支点を基準にして身体を移動させるのです。

テコの原理

てこ

てこ2

引用:ボディメカニクス|介護応援ネット

ボディメカニクスを活用した介護術を身に着ける

介護の仕事では、どうしても中腰になる姿勢があります。利用者さんの身体を支えたり、時には持ち上げなければならないこともあるでしょう。どんな介助を行うにしても、ボディメカニクスを活用することはできます。そのために、この記事で揚げた7つの原則を頭に入れておきましょう。

 働きやすい職場環境選びがあなたを輝かせる

あなたはなぜ介護の仕事を続けているのでしょうか?

日頃から考えることが多すぎていつの間にか忘れてしまっている介護の現場で働く理由。母が祖母の介護を大変そうにしているのを見て介護職を志した人や、障害者の方が当たり前の日常を送れない現実を知って、当時の自分では何も力になれないもどかしさから介護の仕事を志した人もいるでしょう。

現在、あなたが介護の仕事を行っているのは、「人の力になりたい!」と強く思ったからではないのでしょうか?

3K(きつい、汚い、危険)と言われていることを知った上で働き続けているあなたは高齢化社会である日本の誇りです。

介護業界の主役は現場で働くあなた自身です。

あなたをキッカケに、「介護の仕事って楽しいんだよ」「介護ってかっこいいんだよ」と思ってもらえる仲間が増えることを祈っています。

まずはあなた自身が輝ける場所に行きましょう。

世の中は、熱い想いを持って介護の仕事に取り組むあなたのような人材を求めています。

カイゴジョブ

Pocket
LINEで送る