三大介護と言われる1つに、入浴介助がありますよね。そして、危険が伴う場面が多いのもまた入浴介助中です。実は私自身も、入浴介助中にひやっとした事がありました。そこで、改めて手順を振り返り、介助の見直しをスタッフ同士で情報共有を重ねました。
機械浴は重介護の人が多いです。なので、自分で姿勢を直すことどころか、座位姿勢の保持も困難な場合もあるということです。そのため、細やかな対応と目配りがとても重要になります。注意点や危険ポイントなども一緒に、機械浴に着目してお伝えします。
目次
物品準備だけでなく、備品チェックや環境調整も忘れずに!
スムーズかつ安全な入浴となるためには、もれのない準備が必要です。
物品の準備だけでなく、環境の準備も忘れずに行いましょう。
①物品準備
- タオル
- 着替え
- オムツやパット等の下着類
- 小物入れ(アクセサリーや時計など紛失しないように用意すると便利です)
②備品・設備のチェックは日頃から行う
日頃からチェックしておくことで、危険を未然に防げます。脱衣所や浴室の整理整頓は、転倒防止になります。備品のチェックとして、シャンプーや石けん、ボディタオル、ひげそりなど補充しておきましょう。また、ドライヤーや薬類がある場合は、利用者の手の届かない場所で保管します。脱衣所では、足拭きマットが滑ったりめくれたりしないか確認します。もし、滑ってしまうなら、下に滑り止めシートを敷いておきましょう。
設備については、浴室内外の手すりやイスなどの用具は、劣化していないか安全確認しておきましょう。劣化するものという認識を常に持って安全確認することが大切です。
③情報共有しながら環境調整をする
環境調整を室温は、脱衣所と浴室両方の温度を調整し寒暖差があまりないようにします。浴槽のお湯(約40度が適温)をタイミングをみて準備しておきます。お湯の温度は好みだけでなく疾患や体調により適温が異なるので、他のスタッフと情報共有をして調整しましょう。のぼせるのを防ぐために、換気を必ず行いましょう。
入浴者の誘導は、事前確認でスムーズに
忙しくて忘れがちになってしまう確認事項でも、漏れがないように習慣化しましょう。持病や風邪が治ったばかりではないか、リーダーや看護師に確認をとります。それにあわせて、入浴時間の制限(長湯厳禁等)や、入浴方法(半身浴のみ、シャワー浴のみなど)の変更があるか確認します。入浴前の排泄の有無を確認しておくことも、スムーズに入浴介助するために必要です。
入浴の手順〜脱衣所〜
1.座位で衣服の脱衣をする
必ず座位(座位がとれない場合は臥位や2人体制)になるように、イスに座ってもらいます。高齢者は皮膚が弱く、洋服がひっかかっただけでも表皮はく離する事があります。一番引っかかり易いのは関節部分です。例えば肘を抜く場合、自分の手で利用者の肘を包んで脱がすようにしています。こうすると、服との摩擦は介助者の手の甲のみなので、利用者の肌に負担はかけません。
2.全身状態の確認
傷やあざ等ないか確認し、必要に応じて看護師に相談します。
3.機械浴のイスに移乗
臀部や太ももの裏等をこすらないように注意しましょう。裸なのでダメージは肌に直接かかってしまうという事を忘れずに。肌が極点に弱い方は、イスにタオルを一枚敷いて対応しても良いかと思います。(私も実際行っていました。タオルがよれないように注意する必要はありますが。)
4.アームレストやフットレストの設置
手足を挟まないように注意しましょう。
5.ベルトの設定
その方の体型に合わせて締めますが、ちょっとした動きでも食い込んでしまうくらいしっかり締めてしまうと、摩擦等で皮膚を傷つけてしまいます。自分の手の平がスッと入る程度のゆとりがあるようにします。直接肌に当たる部分は、タオルを巻いて保護すると肌を痛めずより安心です。
6.浴室への移動
利用者の体勢が崩れないか注意しながら走行します。(車イスのように個人に合わせた作りではない為、小柄な方は機械浴イスが大きすぎて座位姿勢が崩れる事もあります。)
入浴の手順〜浴室〜
最も危険が伴うので、イメージしながらみてください。
①掛け湯
シャワーの温度を確かめ、足や手など、心臓から遠い部分からかけていきます。ご本人にも適温かどうか聞きましょう。(温度を確かめるのは、指先よりも皮膚の薄い前腕の内側が分かりやすいです。)
②洗髪・洗体
洗体は、皮膚をこすりすぎないように注意します。見えない所の洗浄では、指間や拘縮部分、乳房の下等皮膚が常に接触している部分は垢がたまりやすいので忘れずに洗い、洗浄も丁寧に行いましょう。臀部や陰部の洗浄立位をとるかイスの上で洗浄するか確認しましょう。
立位で洗浄する時は、足元や手すり、容赦の手足に泡がついていないか、チェアーのストッパーがかかっているか確認しましょう。また、介助者の手足の泡もしっかりと流しましょう。立位をとった後、安定するまで待った方が安心です。もし、立位のとれない時は、1人が完全に抱えて立位の状態を保持して行うか、イス上で、片側に体を傾けて臀部から大腿まで浮かせてもらい洗浄する、などの方法があります。いずれも介助者2人は必要となりますし、転倒転落に十分注意する必要があります。
③浴槽に入る
操作を行う前に、再度ベルトや姿勢の確認をします。機械操作中に姿勢や手足の位置(イスの外側に出ていないか等)常に注意します。お湯につかると浮力が発生するため、ここでも姿勢の確認をします。必ず手すりにつかまってもらうよう声掛けをします。
小柄で浮いてしまって姿勢が保てない方は、湯量を少なくしたり、バスタオルを丸めて体幹の両脇に挟むなどの工夫ができます。ただし、湯量を少なくした場合は、肩に湯をかけて冷えていないか常に見守りましょう。
④お湯につかる
お湯につかっている間、観察しているだけでなく声掛けや会話等しながら、利用者の疲労度をみます。体力に個人差があるため、短い時間でも疲れてしまう人もいるからです。疾患等により長湯出来ない方は、しっかりと時間の管理をします。他の方の介助や会話に夢中になるなんて事のないように注意しましょう。
⑤浴槽から出る
浮力のせいで姿勢が崩れやすくなっているので、注意が必要です。機械浴では、機械操作入る時と同様、姿勢や手足の位置を確認しながら操作します。湯冷めしないように、かけ湯をしてすぐに水分を拭きましょう。拭く際も皮膚を擦らないよう押さえるようにして行います。
何の為の入浴?清潔保持だけではない、心にも体にも大切な時間
私は介護士として働いている時、お風呂の介助が好きでした。私は裸ではありませんが、「裸の付き合い」という言葉の通り、飾らない自分になれるホッとできる時間です。利用者さんもリラックスして、深い話をしたり、恋愛の話で盛り上がったりしたこともあります。一対一で向き合える時間が貴重だったので、短い時間の中で色々な話をしたのを覚えています。
そうすると、お互いの理解が深まり関係が築かれていき、あらゆる場面でより介護がしやすくなるのです。それはもちろん、「この人になら世話してもらっても良いかな」と思ってもらえることもあります。どういった人なのかを知ると、どうしたら喜んでもらえるか、どんなことは嫌いかという気付きに繋がるのです。特に、認知症や機能障害等でコミュニケーションが上手くとれないような方に対応する時に役立ちます。
機械浴を利用されるのは重介護の人が多いです。お湯加減や洗体の時の力加減など、関係が深くなると「ちょうど良い」が見つけやすくなります。他にも排泄や食事等他の多くの場面での気付きも増えるでしょう。「真剣」も良いですが、怖い顔で黙々と介助を行うのはもったいない気がします。多くのアンテナを張り巡らせながらも、心も体も気持ちよくなる入浴タイムとなるよう笑顔で介助に入れるよう、応援しています!