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介護職として働いていると利用者さんとの関わりが近い分、おもしろい場面に遭遇できます。私たちが常識だと解釈して決めつけているモノの見方と認知症のある人の常識にとらわれないインスピレーション的なモノの見方。

同じ人間であってもそれぞれの価値観が異なり、思わず吹き出してしまいそうになることもあります。ときには私たちのピリピリした雰囲気を和ませてくれることだってあります。
今回は、エピソードを交えながら思わず利用者さんと笑った話をお伝えします。

「もう長くはないから…」が口癖、90歳のおばあちゃん

Aさんは90歳(女性)。アルツハイマー型認知症のため、5年前に老人ホームへ入居されました。口を開けば「わしはもう長くはないでこうしてほしい」が口癖。毎日介護ステーションの前に来て演技をします。

あるときは「もう長くはないから寿司が食べたい…」、他の日は「もう長くはないから息子に電話をしてほしい…」など毎日いろいろなことを注文して早5年。いろいろな口実に笑いが絶えません。面会に来る息子さんは、「元気なら呼ぶな」と口では言いながら週1回は面会に来てくれます。

弱ったときに知る本当の気持ち

私たちを楽しませてくれるAさんですが、冬に風邪を引いたときでした。
咳き込むAさんの背中を交代でさすります。熱の確認や氷枕の交換など時間ごとに声をかけながら行います。38度の熱に90歳のAさんもぐったりしており、口癖も聞かれません。2~3日は熱が出たり下がったりの繰り返しの中、ようやく4日目に熱も下がり、すっきりした顔のAさん。食欲も戻り、以前と同じぐらい食事も食べられるようになりました。

元気になったAさんから「自分は長くは生きられんと思っていたが、病気になったら死にたくないと思った。100まで生きるようにがんばるで助けてな!」の一言に家族も職員も大笑い。

長生きしたいと言ったAさんですが、風邪が治ればすべて忘れてしまい、今日も元気に介護ステーションの前に来て「わしはもう長くはないで…」は継続中です。

言葉は生き物

十人十色というように、老人ホームにはいろいろな利用者さんが入居しており、またいろいろな職員が働いています。明るい顔をしていても暗い顔をしていても1日は同じです。介護職として責任もあります。

理想と現実があり、自分は利用者さんに対して良いと思って行ったことが良くないことだってあります。老人ホームの利用者さんも私たち介護職員も同じ人間です。いつも良いときばかりではありません。

食事を食べた後、すぐに食事を食べてないと言ってくる利用者さんもいます。「今食べたところだからありません」と事実を伝えるだけでは、「食べてないのに」と相手が怒るのは当たり前です。食事を食べてないと言われたら、例えば、好きな料理を聞いて「また一緒に作りましょうか」と声をかけてみたり、「私もそんな美味しい料理なら食べてみたいなあ」と話題に入ってみてはどうでしょうか。

言葉に込められた思いに寄り添って

訴えに対して答えを伝えるのではなく、聞き役に徹してみてください。質問に対して正しい答えを求められているのではなく、自分の思いを知ってほしいと思っての言葉であることを理解しましょう。

介護職は利用者さんにとって一番身近でおもしろい職業だと私は感じています。『笑う門には福来る』ということわざがあるように、関わりの中から大いに笑って、利用者さんに向き合える介護職を目指しましょう。

世間の言葉に隠されてしまいがちですが、現場だから気付けることが数多くあるのです。もっと多くの人に、介護現場のリアルな話を知ってほしいと感じます。

参考介護職の体験談まとめ

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